「ステマは違法じゃないから大丈夫」が通用しない時代に注意すべきこと
今週、ステマ行為に対して消費者庁が初の措置命令を出したことが、業界で注目されています。
実際に措置命令を受けた商品が、無名なバストアップサプリであることから、一般のニュースではそれほど大きくは取り上げられていないようですが、ながらく日本で続いていた「ステマは違法ではないから大丈夫」という誤解に対して、大きな一石が投じられたニュースだと言えるでしょう。
参考:インスタ「ステマ」で初の措置命令 バストアップサプリ、効果なし―消費者庁
このニュースはいわゆる広告業界だけではなく、一般の方にも関係ある話ですので詳細をご紹介しておきたいと思います。
海外では違法なステマ、日本では?
ステマ騒動というと、2012年の食べログにおける組織的なステマ書き込み事件に端を発し、多くの芸能人のステマが問題になったペニーオークション詐欺事件や、メディアによるノンクレジット広告というステマ記事が慣習化していた問題など、この10年近くたびたびメディアでも注目されてきました。
消費者を欺くようなステマ行為を、すでに米国や欧州では明確に法律で規制しており、米当局がインフルエンサーやメディアサイトにステマ行為に対する警告を出しています。
参考:米当局、偽レビューやステマの取り締まりを強化…アマゾンやウォルマートなど700社に警告
一方で、日本ではステマ自体を違法とする法規制が存在しないため、いまだに「ステマは違法じゃないから大丈夫」とインフルエンサーや芸能人にステマ行為を依頼する事業者が後をたたず、水面下で問題が継続していたのが現状でした。
しかし、今回消費者庁が明確にステマ行為に対しても、景品表示法の優良誤認の観点で再発防止を求める措置命令を出したことは大きな動きと言えるでしょう。
消費者庁の初の措置命令が持つ意味
これまで、ディズニーのアナと雪の女王2の際や、吉本興業の芸人による京都市観光促進、そして最近のフジテレビのアナウンサーなど、様々なステマ騒動がメディアで注目されてきましたが、消費者庁が明確に何らかの新しい方針を示すことはありませんでした。
多くのケースがシンプルに#PRのような関係性の明示の必要性の認識不足であったり、代理店側の指導不足であったりというケースが多い上に、前述したようにあくまでステマ行為は日本では法規制の対象ではなく、消費者庁としても何らかのアクションを取る対象ではなかったからです。
また、メディアで注目されるステマ騒動は、ディズニーのような大企業や著名人のものだけ。
無名の健康食品や美容品のステマ、そして無名の自称インフルエンサーによるステマは、メディアとしてもニュースバリューに劣るため、放置された結果、今回のような水面下でステマを続ける事業者や自称インフルエンサーが後をたたなかったわけです。
しかし、今回の消費者庁の措置命令のプレスリリースをみると、組織的にインスタに似たような投稿をしていた画像のキャプチャをこれでもかと並べて貼ってあり、消費者庁の本気度が伝わってくる内容になっています。
参考:株式会社アクガレージ及びアシスト株式会社に対する景品表示法に基づく措置命令について(注:PDFが開きます)
今後、効果の怪しい美容品や健康食品をステマで訴求している事業者は、今回のリリースのメッセージを受け止めてやり方を改めないと、同様に消費者庁から措置命令を受けることが明確になったと言えるでしょう。
個人のSNS投稿も措置命令の対象に?
なお、今回の措置命令の対象はあくまでステマを依頼した会社側になりますが、ステマを依頼されるインフルエンサーや芸能人が措置命令を受けない保証は当然ありません。
プレスリリースでは黒字に塗りつぶされていますが、明らかにインスタグラムのアカウント名が明記されているのが分かるリリースになっており、悪質なステマ行為を続けているアカウントがあれば、それらが措置命令の対象になる未来は当然ありえるでしょう。
これにより、自分達が行っているSNS投稿がはたしてステマにあたらないのかどうか、不安になっている芸能人の方も少なくないようです。
参考:「仕事で絡んだギャルの子たちも…」EXITも不安を覚える“ステマ問題”、著名人に求められるのは「ファンを裏切らないSNS投稿」
これまでは、無名なインフルエンサーであれば、多少ステマ行為をしていたことを指摘されたところで、「ステマは違法じゃないから大丈夫」とうそぶいてそのまま継続していたかも知れません。
ただ、これからは、景品表示法に触れている商品のステマを続けていると、今回のように措置命令が出た際に、友人や身の回りの人から「違法行為に加担していた人」とみられるリスクが出てきたことになるのです。
友人やファンの信頼を失うことこそが最大のリスク
もちろん、ステマ投稿を行うリスクは、消費者庁からの措置命令だけではありません。
これまでにも、ステマ騒動に関わってしまった著名人は、様々な形で社会的制裁を受ける結果になってしまいました。
その中には確信犯の人もいたかも知れませんが、多くはステマに関する知識がなく、依頼された投稿を深く考えずにそのまま実施していたケースが多いようです。
しかし、そのために仕事が異動になってしまった人もいれば、ペニオク詐欺でステマ投稿をしてしまったほしのあきさんのように、芸能界を事実上引退に追い込まれたケースもあるのです。
参考:事実上引退状態!8年ぶりの登場も「騙された人は絶対に許さない」
「ステマ」とは単に「宣伝する」ことではなく、「広告なのに広告であることを隠して自分で買ったかのようにウソをついて宣伝する」ことです。
このステマという行為が、「ウソをつく」という誰にも分かる行為だからこそ、その制裁も大きいということが言えるかも知れません。
もちろん、普通のSNSユーザーであれば、お金をもらってSNS投稿をしたり、商品をもらって宣伝して欲しいと、頼まれることはほとんどないと思います。
そういう意味では、ほとんどの人にはステマに巻き込まれるリスクはありませんし、広告であれば広告であることを、無償で商品をもらったのであればそのことを、ちゃんと開示していればステマにはならないのです。
ただ、今でもフォロワー数が多い方や、投稿がバズったりした方には、ダイレクトメッセージでステマ投稿の依頼が来ることが少なくないようです。
不安な方は、マンガで分かる「ステマ防止マニュアル」なるものも公開されてますので、こちらを参考にするのが良いでしょう。
参考:3分でわかるステマ防止マニュアルsupported byWOMJ
ステマで小銭を稼ぐために、友人やファンの信頼を失うのは本当にもったいない行為と言えます。
是非、皆さんも「ステマは違法じゃないから大丈夫」という甘い誘いには、くれぐれもご注意下さい。