【福山市】奈良時代の木簡や炭焼きの道具などが語る山野の暮らし。山野民俗資料館の見どころを紹介
福山市山野町にある通称「山野民俗資料館」(正式名称は「福山市山野民俗資料収蔵庫」)。
ここには、山野の重要な産業であった炭作りや農業、漁業の道具などをはじめ、人々の暮らしを伝える資料がおよそ1,000点収蔵されています。
山野の人々の息遣いが聞こえてくるような、興味深い資料の一部を紹介しましょう。
建物自体が貴重!県東部で現存する最古の和風役場
実は、資料館の建物そのものが資料です。明治期に山野村役場として建設されたこの建物は、現存する和風の役場では県東部最古!国の登録有形文化財(建造物)に登録されています。昭和52年(1977年)まで実際に役場として使われていました。
山野を知る最古の資料
資料館の目玉は、奈良時代の木簡です。木簡とは荷物につけた荷札の役割をするもので、山野から奈良へと駆り出された労働者に米を送っていたことがわかります。
山野にある木簡はレプリカですが、本物は奈良文化財研究所に保管されています。
資料から見る山野の産業
山野の人々は海抜300mから500mの山あいで畑を耕し、カイコを飼い、炭を焼いて暮らしていました。山野を流れる小田川には、今も鮎釣りを楽しむ人が訪れます。
資料館には養蚕のための道具が展示されていました。かつてはどの家にも「カイコ部屋」があったそうです。
綿の栽培も行われていました。資料館を管理する山野民俗資料保存会の皆さんは、これらの道具がどのように使われていたのかを学び体験するため、綿を育て糸を紡いでいるそうです。
小田川の豊かさを示す、さまざまな漁具も残っています。
山野の産業の特徴のひとつに、炭焼きがありました。
土の硬い山野では木々の成長が遅いため年輪の間隔が狭い、密な木質となります。その木で炭を焼くと非常に質の良いものができました。昭和30年代まで炭を焼いていましたが、灯油やガスが普及して生産が減っていきました。
農具も多数収蔵されています。
人々の暮らし
人々の暮らしにまつわる資料も残っています。
昭和61年(1986年)に土の中から見つかった大量の備蓄銭。このお金の持ち主は、どのような思いで蓄えていたのでしょうか。
福山藩の水野家が、山野町の岩屋権現に奉納した武具も大切に保管されています。実戦に用いられたのは、このような素朴な武具だったのでしょう。
郷土芸能
神に奉納する神楽や神儀(じんぎ)は、人々の楽しみでもありました。
高尾(こうおん)神儀を継承した山野神儀や原谷神儀は十数年前に途絶えてしまい、今に残るのは七谷松尾谷神儀のみとなりました。
2024年10月20日(日)に水車の里「こっとん村」で開かれる「第21回 水車と語りん祭」では、この貴重な七谷松尾谷神儀が披露される予定です。
山野民俗資料館の見学について
山野民俗資料館の見学には、予約がおすすめです。
予約は、隣接する山野交流館(電話 084-974-2851)へ連絡してください。
交流館が開いている時間帯に声をかければ、予約なしでも対応可能な場合があります。
奈良時代から昭和期までの山野の暮らしが見えてくる山野民俗資料館へ足を運んでみませんか。
山野民俗資料館
場所 :福山市山野町山野3782
開館日:山野交流館(084-974-2851)にて受付
平日 8:30~17:00(ただし12:00~13:00は閉館)
土曜 8:30~12:00
休館日:日曜・祝祭日・年末年始
入館料:無料