奨学金延滞率ランキング・国公立編~私大・総合ランキングと異なる実態とは
延滞率ランキング、大きな反響
今年4月、日本学生支援機構は大学別の奨学金延滞率を発表しました。
そこで、5月16日にこのYahoo!個人記事にて、
奨学金延滞率ランキング~影響するのは、やっぱり就職だった?を掲載。
大きな反響があり、おかげさまで多くの読者に読んでいただきました。
その際いただいたご意見が、
「聞いたこともない大学ばかり。国公立などに絞った方がいいのでは」
というものでした。
リクエストを受けまして、今回は国公立大学のみでランキングを作成しました。
総合ランキングでは、
「定員割れ」
「高学費」
「大学所在地の賃金状況」
「低賃金リスクの学部・学科」
の4点をクロスさせ、その関連性を調べました。
今回の国公立ランキングでは、「留年・院進学」と「低賃金リスク」の2点をクロスさせることにしました。
国公立大学の中では国際・外国語系学部は留年率が高いことで有名です。それから、理工系学部だと大学院進学がデフォルトとなっているところが大半。医学部・歯学部・薬学部は6年制です。いずれも、学費は国公立大学ということで私大ほどでないにしても、期間が長い分だけ総額はかかります。
低賃金リスクは前回と同じなので省略。
ランキングは延滞率の高い順に国公立161校をまとめています。
※延滞率は分母が2013年度末までの5年間の返還義務が生じた貸与修了者、分子は3か月以上の延滞者の割合。
3%越えは2校、実質ゼロ校という結果に
ランキングを作成した結果、大学平均の1.3%を上回ったのは161校中、16校のみ。
3%越えは名桜大学、福知山公立大学の2校のみとなりました。
しかも、この2校は元は私立大学であり、途中で公立大となっています(名桜大学は2010年、福知山公立大学は2017年)。
延滞率ランキングが私立大時代の就職実績等が反映されます。つまり、実質的には私立大と同じであり、公立大化以降の教育成果が反映されている、と見るのは早計でしょう。
実質1・2位は留年・低賃金リスクを反映しているが…
1・2位が私立大からの転換組となると、実質的な1位は国際教養大学、2位は東京芸術大学です。
国際教養大学はグローバル教育で有名であり、それもあって留年率が48.5%ときわめて高い大学です。
東京藝術大学はフリーランス志向の高い芸術学部、音楽学部を擁します。
やはり関連性は高い…とは言い切れません。
と言いますのも、どちらも似た特性の他大学はそれほど高くないからです。
グローバル系だと、東京外国語大学が0.9%、神戸市外国語大学が0.6%、大阪大学(外国語学部)が0.5%など。
芸術系だと、沖縄県立芸術大学が1.5%、金沢美術工芸大学・長岡造形大学が0.9%、静岡文化芸術大学が0.4%など。
そもそも国際教養大学、東京芸術大学とも3%を割っています。ということを考えれば、私立大ほど留年や低賃金リスクが影響しているとは言い切れません。
理工系、6年制学部でも影響なし
大学院進学者の多い理工系学部、医学部・歯学部・薬学部・獣医学部の6年制学部など、就学期間の長さも延滞率に影響あるのでは、と考えました。
が、国公立大学だけ見た場合、その関連が強いとはとても言えないでしょう。
国公立大生は優秀だから延滞もしない?
国公立大学は延滞率1%未満の大学が124校。このうち、福山市立大学、和歌山県立医科大学など13校は0%。
この極端なデータから推測されるのは、
・学費負担がそれほど高くない
・私立大学に比べて優秀な学生が多い分、就職できている
・そもそも奨学金の延滞はごく少数の話?
などです。
3番目については、私立大学の有名校も含めて検討しないとわかりません。
私立大学ランキングを作成の上、改めて検討してみたいと思います。(石渡嶺司)
追記
2017年8月1日 16時9分
表中の大学について「神奈川県立保健医療大学」とありますが、正しくは「神奈川県立保健福祉大学」であり、訂正します。