【逃げ上手の若君】4人の声優が明かす魂の舞台ウラ!作品に何を想いアニメへ命を吹き込むのか?(後編)
※本記事はアニメ“逃げ上手の若君”、声優インタビューの後編となります。
【雫(しずく)役】矢野妃菜喜さん
【矢野妃菜喜(やの・ひなき)】
子役やアイドル活動を経て、多彩な演技力で多くのファンを魅了する声優にして歌手。兵庫県出身。ソニー・ミュージックアーティスツ所属。特技はダンス。趣味は美少女の写真集め。
Q 今年の4月、結川さんと鎌倉まつりへ参加されましたが、観光で訪れる感覚とは違いましたか?
A そうですね。甲冑も着させていただいて、まずはそれだけでも、身が引き締まる思いになりました。また鶴岡八幡宮では儀式に使うような裏側へも案内していただきまして、それが本当に綺麗で風情のある場所だったんです。歴史や伝統の深みのようなものを、全身で感じました。
中学の頃は修学旅行で大仏を見に行ったり、大人になってからも食べ歩きが楽しいというイメージで好きな場所でしたが、私自身がこの地を舞台とする作品に出演することもあって、旅行とは別ものでしたね。
Q 雫は子どもでありながら、ものごとを俯瞰して見ています。矢野さんも周りから、よく「肝が据わっている」と評されると聞きますが、ご自身と重なる部分も感じますか?
A 子役時代からたくさんの経験をさせていただいて来たこともあり、あまり動じないという面では、たしかに共通するかも知れません。ただ雫は巫女として神がかっている部分があり、一方で、言いだすことはけっこう“変”なので。
最初に台本をみたときは、いったい何を考えている子なのだろうと、思いました(笑)
不思議すぎて、役に入るときには苦労したのも正直なところです。やはり諏訪大社の子として、ふつうの子とはまったく違う環境で育ったからこそという背景を感じます。
Q 矢野さんはご自身の役以外で、だれか気になる登場人物はいますか?
はい、物語が少し進むと“風間玄蕃(かざま・げんば)”というキャラが登場するのですが。突拍子もない性格に加えて、彼を演じる悠木碧(ゆうき・あおい)さんが、またすごくて。
アフレコでは台本に書いてないようなセリフまで、アドリブでぽんぽん出すんです。
それも、私の引き出しには無いようなことを、次から次へと。なんというか尊敬の気持ちと同時に、とにかく一緒に演じていると面白くて。ぜひ、そんな掛け合いの部分も楽しみに見ていただけたら、うれしいですね。
【弧次郎(こじろう)役】日野まりさん
【日野まり】
確かな演技力で作品を支える、実力派声優。アニメ・ゲーム・ナレーション映画の吹き替えなど、幅ひろいフィールドで活躍中。北海道出身。シグマ・セブン所属 。特技はピアノ。趣味は乾燥機の中をながめること。
Q 日野さんが演じる弧次郎にとって、北条時行とはどんな主君ですか?
A 収録のはじめからずっと感じているのは、なんてうつくしくて、まぶしい人なのだろうということですね。ふつうの人間は、とんでもない困難にぶつかると、どこか擦れて汚れてしまったり、くじけてしまったりするものです。
でも“若”はあんなにも過酷な運命にあって、ずっと心がむき出しのまま、綺麗なんです。私は個人的に、現実の知人にもそういう方がいるのですが、そういう人ってやっぱり慕われますよね。
そして「この人を助けたい、守りたい」という人が、どんどん集まって来るんです。ある意味で選ばれし者というか、とてつもない才能だと思います。
Q キャストが決まる前、一読者として原作の漫画を読んだとき、本作にどのような印象を抱きましたか?
A そうですね、人気作品なのでいずれアニメ化もありえるとは感じていましたが、一方で「これをアニメに出来る?」とも思っていました。コミカルな部分もありつつ、そうかと思えば妙なリアルさもあり、アニメになったところが想像できない作品だなと。
それだけに、いま声優として参加させていただいていると、1話ごとに「あ、アニメだとこういう表現になるんだ」と新鮮な感動があり、たいへんお得感を感じています(笑)
Q 役づくりのために、何かとくべつに取り組んだことなどはありますか?
A はい。じつは弧次郎の役づくりは私の中では難産で、しっくりくるまで時間がかかりました。そうとう悩んである方に相談したところ「あなたは自分で経験していないことは、お芝居にできないタイプですね」と言われたのです。
たしかに…と思いましたが、でも弧次郎って乱世の、血しぶきのあがる戦場に突撃していくわけじゃないですか。私はいま平和な時代に暮らしていますから、どうしようかと思いまして。
それで、せめて自分を追い込んでみようと考え、私はサウナが大の苦手なのですが、足を運ぶことにしたんです。いちおう最低12分は入るように言われたのですが、もう灼熱地獄のようで、苦しくて。正直3分で限界がきました。
でも、 弧次郎はもっと大変なんだと自分に言い聞かせ、なんとか12分やり通しました。サウナ好きの方にとっては、それでスッキリ快調なのだと思いますが、私は本当に辛かったです(笑)。でも、そんな体験もぜひ、演技に活かされていれば良いなと思っています。
【亜也子(あやこ)役】鈴代紗弓さん
【鈴代紗弓(すずしろ・さゆみ) 】
持ち前の明るさと瑞々しい感性で、その表現力のみならず現実の人柄も愛される、アニメファン注目の声優。神奈川県出身。アーツビジョン所属。特技はダンス。趣味は音楽鑑賞や写真撮影。
Q 鈴代さんはキャストが決まる以前から、亜也子のキャラクターが大好きだったと聞きました。どのような部分に惹かれますか?
A はい、 亜也子は本当にのびのびと天真爛漫に生きていて、私は現実でもそういう、見ていて気持ちのいい人が大好きなので。オーディションの時も演じていて、心の底から楽しかったです。
「結果はどうあれ、もう何の悔いもない」と感じるほどで、これまでの経験で、そこまでのことはなかなか無かったので、本当に思い出に残るオーディションでした。
Q 時行が率いる逃若党(ちょうじゃとう)の中で、亜也子はどのような存在だと感じますか?
A 亜也子は成長する時行を側で見守りつつ、物理的には弧次郎とともに最前線で戦います。野生的で、敵に岩を投げつけたりしますし、もとの元気な性格も合わさって、いわゆる“アホの子”や“脳筋”なイメージに見られることも多いキャラなのですが。
でも、じつは周りをちゃんと見ていて、人の気持ちに寄り添える子でもあるんです。計算ではなく「これをやったら、若様はうれしいかな」ということが、思いつきで出来る才能というのでしょうか。
そしてけっこう、逃若党の中ではフツウな面も持っている子だと思います。他のメンバーはけっこう「そこ突っ込んで行くの!」みたいに、つきぬけた行動をしたりもするので、そんな時に彼女が居てくれるだけで何となく安心できる、そんな存在とも言えるかもしれません。
亜也子も、非道な敵に対しては怒りがパンッ!と出て、向かって行くこともありますが、ふだんはとても人情深さもあって、本当にいい子なんです。
Q 鈴代さんは歴史ものの出演は初めてと伺っていますが、どのように感じていらっしゃいますか?
A じつは私、もともと歴史の勉強がとっても苦手で、暗記もできずに赤点を取っていたくらいなんです。でも本作は思いきり歴史ものですから、はじめて知ったときは、どこか身構えてしまう気持ちもありました
でも原作を読んだとき、どの登場人物も濃くて、キャラクターが立っていました。もし過去の私が読んだとしても、これは楽しめる作品だなと思いましたね。
それでこの機会に、よく図書館に置いてあるような“日本の歴史”コミックを全巻買って、読むことにしたのです。そうしたら「あれ、日本史っておもしろいな」と思えまして。
まさにダブルの意味で“逃げ若”は、歴史へのイメージを変えてくれた作品ですね。だからこそ、歴史と聞くだけで敷居が高く感じてしまう方にこそ、ぜひアニメを見ていただきたい想いです。
編集後記
筆者としてはインタビューの前、キャストの皆さんの“作品への解釈”に興味があり、そのお話もたいへん深かったのですが、何より声優として役に対する熱意と真剣な想いに胸を打たれました。
その4名が命を吹き込み、また今回は紹介しきれなかった、多数のキャラクターも登場するTVアニメ『逃げ上手の若君』。いったい、どのように表現されて行くのか、1ファンとしても今から楽しみで仕方がありません。
なおTV アニメ『逃げ上手の若君』は7 月 6 日(土)23時30分より、TOKYO MX・BS11 ほか、全国 30 局にて放送開始となりました。
ぜひ今回のインタビューで伺った、声優の皆さんの情熱も思い出しつつ、ご覧いただけましたら幸いです。
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