就活開始時期はどのように変遷してきたか?「6月開始」は更に恐ろしいという話
12月1日。一昨年までは、この日が就活の「採用広報解禁日」だった。
しかしたった2年で、2回も「就活の時期」が変わってしまった。
現在様々なメディアで、「選考が6月開始になり何が変わるのか」、「8月開始は何がいけなかったのか」などの議論がされている。
この記事では、少し視点を変えて、「これまで就活の時期はどのように変化してきたか」を確認してみたいと思う。
1996年以前は「就職協定」の時代
まず前提知識として、1996年以前には「就職協定」という物があった。
企業と大学の間で、一定の時期まで企業から卒業見込み者に対するアプローチは行わないという取り決めを行っていたというものだ。
1973年に制定され、1996年に廃止された。
インターネット上に「就活のナビサイト」が登場したのもちょうど就職協定廃止の時期であり、これを境に就活が今の形に近くなっている。
近年の就活開始時期
近年における就活開始時期としては「ナビサイトのグランドオープン(≒採用広報解禁日)」と「選考開始時期」の2つのポイントがある。
簡単にまとめると、下記のような時期に設定されている。
2017卒: 2016年03月グランドオープン?(未発表)/2016年6月選考スタート
2016卒: 2015年03月グランドオープン/2015年8月選考スタート
2015卒: 2013年12月グランドオープン/2014年4月選考スタート
2014卒: 2012年12月グランドオープン/2013年4月選考スタート
2013卒: 2011年12月グランドオープン/2012年4月選考スタート
2012卒: 2010年10月グランドオープン/2011年4月選考スタート
2011卒: 2009年10月グランドオープン/2010年4月選考スタート
2010卒: 2008年10月グランドオープン/2009年4月選考スタート
2009卒: 2007年10月グランドオープン/2008年4月選考スタート
2008卒: 2006年10月グランドオープン/2007年4月選考スタート
2007卒: 2005年10月グランドオープン/2006年4月選考スタート
2006卒: 2004年10月グランドオープン/2005年4月選考スタート
なお、大手就活サイトはグランドオープンの前に「プレサイト」としてインターン情報などを掲載している時期があり、例年 大学3年次の6月から公開されている。
また、時期に関係なく年中公開されている就活情報サイトも多数存在しており、それらのサイトには「グランドオープン」という概念はない。
採用広報解禁時期について
ナビサイトのグランドオープンに影響を与えるため、特に学生への影響が大きいのが広報解禁時期である。
現実には「インターン版サイト」の存在や、経済団体とのしがらみの無い就活サイトが存在する上、採用を行う企業が自社サイトやソーシャルメディア上で実質上の採用広報を行っていることもあり、これは実質的に就活の準備(もしくは実質的な選考)となっている。
しかし、学生の感覚として「リクナビ・マイナビなどがグランドオープンしたら就活スタート」と考えている学生は多いと言えるだろう。
ここ数年ほど顕著に「インターン時期から活動開始する学生」と「グランドオープンまで活動しない学生」の二極化が進んでいる。
グランドオープンと同時に大手就活サイトがサーバ落ちするのも、風物詩となりつつある。
2006卒〜2009卒の頃は「大体10月スタート」になってはいたが、リクナビとマイナビでグランドオープン日が異なるなど、大手サイトの間でもタイミングは揃えていない事が多かった。(一例として、2009卒はマイナビ10月1日、リクナビ10月11日とマイナビが少し早くオープン)
それが2010卒から足並みを揃えて「10月1日」になり、その後2012年卒までは目立った変化が無い。2013卒から12月スタートに変わり、2016卒(昨年度)は年をまたいで翌3月に後ろ倒しとなっている。
選考開始時期について
選考開始時期については、2015卒以前は基本的に「4月スタート」となっていた。ただしこれはあくまで紳士協定のようなもので、実際には4月1日以前に採用試験をしている企業も多かった。
実際の選考開始は年度・地域によってまちまちである。首都圏に絞ってみても、4月末頃には多くの学生が就活を終えている年もあれば、ゴールデンウィークを過ぎてもまだ終わっていない学生が多いような年もある。どちらかと言えば「8月スタート」になる以前から既に後ろ倒し傾向にあった。
2016卒については「8月スタート」になったものの、これも順守していない企業が多数存在していたことは言うまでもない。
しかし採用広報解禁がズレた事から、今までのように4月に選考を行おうとしてもその時点では学生に対して企業の情報は行き渡っていない。
就活時期が変わることの影響
2011年に就活サイトのグランドオープンが10月から12月に変わったタイミングでも、様々な影響があった。
その時は、広報期間が短くなることで学生の企業理解が足りなくなるという事や、知名度の低い企業が母集団形勢に苦しむという事が主な問題点だった。
解禁日に振り回される、中小企業の採用事情
昨年に関しては採用広報だけでなく選考の解禁日まで変わり、更なる混乱を招いてしまった。
「まだ大手の選考が始まっていないので、中小企業は見ていない」「大手に落ちてから中小企業を見る」というスタンスの学生も多く、大手企業の選考が後ろ倒しになればなるほど、中小企業の採用活動はさらに後ろ倒しになってしまっている。
大手企業よりも早いスケジュールで採用活動をした結果、内定辞退が増えてしまった企業も多いという。
反対に、学生側から見ても就活を終了することを企業から要求される事が多くなり、「オワハラ」という言葉まで産んでしまった。
更なる混乱が予想される「6月解禁」
そして、6月解禁になるという来年は更に恐ろしい。
何が恐ろしいのかというと、「採用広報解禁日は変わらず3月」になる見込みだというのだ。
先ほどの採用広報解禁日・選考解禁日のまとめを見ていただくとわかるように、「採用広報解禁から選考解禁まで」が3ヶ月以下となるのは来年が初めてという事になる。
当然ながら、前述したような学生側の準備期間不足、企業側の広報期間不足が懸念点となるだろう。
「広報解禁日は変わらず3月」という部分が見直され、杞憂に終わる事を願いたい。