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アメリカ最悪のシナリオ「9600万人が感染、48万人が死亡」新型コロナ治療最前線の米教授が推定

飯塚真紀子在米ジャーナリスト
集団感染が起きたワシントン州の介護施設から病院に搬送される入居者。(写真:ロイター/アフロ)

 前回の記事“「新型コロナで死亡する日本人は57万人」米著名シンクタンクが掲載する報告書の中身”では、オーストラリア国立大学の教授が分析した、新型コロナウイルスによる推定死亡者数を紹介した。その数に驚かれた方も多いことと思うが、その数に近い死亡者数を推定している博士がいる。ネブラスカ大学医療センター教授のジェームズ・ローラー博士だ。

新型コロナ治療最前線の教授

 ネブラスカ大学医療センターは、中国や「ダイアモンド・プリンセス号」で感染したアメリカ人感染者が搬送されて治療を受けている施設だ。また、新型コロナの治療薬として期待されているエボラ出血熱の治療薬「レムデシビル」の有効性と安全性を立証するための臨床試験が行われていることでも注目されている。

 新型コロナの治療と治療薬開発の中心ともいえる医療センターで重要な役割を果たしているローラー博士は感染症専門医として知られ、2017年〜2018年には、隔離されたエボラ出血熱患者の治療に当たった。今回も、搬送された新型コロナ感染者の治療に当たっている。

 博士は、また、ジョージ・W・ブッシュ政権下では国土安全保障会議のメンバーを、オバマ政権下ではアメリカ国家安全保障会議のメンバーを務めた。

アメリカ最悪のシナリオ

 感染症研究の第1人者と言えるローラー博士は、2月26日、アメリカ病院協会主催のオンラインセミナーで、“アメリカ最悪のシナリオ”を紹介していた。博士はそのセミナーで「医療のリーダーたちが知っておくべきこと:COVID-19に対する準備」と題するプレゼンテーションを行い、衝撃の数字を発表していたのだ。その数字が出ているドキュメントをビジネス・インサイダーが入手し、紹介している。

 その数字とは、アメリカで新型コロナに感染する人数は推定9600万人、死亡する人数は推定48万人。

 ちなみに、前回の記事で紹介したオーストラリア国立大学のマッキビン教授が分析したアメリカにおける推定死亡者数は、最善のシナリオで23万6000人、最悪のシナリオで106万人だ。マッキビン教授が分析のために想定した7つのシナリオの1つでは、58万9000人の死亡者数も推定されているので、ローラー博士の推定はこの数字に近いといえる。

 また、そのドキュメントによると、高齢者は新型コロナで重症化し、80歳以上の人々は死亡率が14%になるという。

 70〜79歳の死亡率は8%、60〜69歳は3.6%と推定されている。

 また、心臓に問題を抱えている人の死亡率は10%、持病を抱えていない人の死亡率は1%と推定している。ちなみに1%というのは、季節性インフルエンザの死亡率約0.1%の10倍である。そのため、スライドの最後では「季節性インフルエンザの約10倍重い疾病に対する準備をしよう」と呼びかけられている。

ローラー博士の様々な推定が記されているプレゼンテーション用のスライド。ビジネス・インサイダーが入手した。出典:Business Insider
ローラー博士の様々な推定が記されているプレゼンテーション用のスライド。ビジネス・インサイダーが入手した。出典:Business Insider

 ビジネス・インサイダーが入手したスライドによると、コミュニティ罹患率は30〜40%、入院する感染者は5%、集中治療室で治療を受ける感染者は1〜2%、人工呼吸器が必要な感染者は1%と推定されている。

病院は増える感染者対策を

 アメリカ病院協会は「オンラインセミナーは、病院側の見解ではなく、スピーチする専門家の見解を反映したものだ」と、ローラー博士の報告に対して客観的な見方をしているが、博士が報告した推定は、マッキビン教授が報告した推定に近いことは注目に値すると思う。

 ローラー博士は、病院がこれから増加する感染者に対応する準備を行って死者数を抑える必要性を感じ、推定した数字を報告したという。

 日本の病院も、検査件数の増加とともに増える感染者数に対する準備が急務だ。

在米ジャーナリスト

大分県生まれ。早稲田大学卒業。出版社にて編集記者を務めた後、渡米。ロサンゼルスを拠点に、政治、経済、社会、トレンドなどをテーマに、様々なメディアに寄稿している。ノーム・チョムスキー、ロバート・シラー、ジェームズ・ワトソン、ジャレド・ダイアモンド、エズラ・ヴォーゲル、ジム・ロジャーズなど多数の知識人にインタビュー。著書に『9・11の標的をつくった男 天才と差別ー建築家ミノル・ヤマサキの生涯』(講談社刊)、『そしてぼくは銃口を向けた」』、『銃弾の向こう側』、『ある日本人ゲイの告白』(草思社刊)、訳書に『封印された「放射能」の恐怖 フクシマ事故で何人がガンになるのか』(講談社 )がある。

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