結局マスクは必要なのか:パニック買いの心理と新型コロナとの戦い方
■アメリカ、国民にマスク着用を推奨!?
<米、国民にマスク着用を推奨 トランプ氏発表4/4(土) 時事通信Y!>
トランプ大統領は、「米政府の新たな方針として、国民に対し外出時のマスク着用を推奨する」と発表しました。
記事の見出しと、トランプ大統領のこの言葉だけを読むと、「全員マスクをつけろ!」と大統領が言っているように感じます。
でも、記事の中身を読むと、こうも書いてあります。
「米疾病対策センター(CDC)が人々に対し何らかの方法で顔を覆うよう要請」
「医療用マスクについては医療従事者が利用できるように入手を控えるよう促した」
そして、記事はトランプ大統領の次の言葉で閉められています。
「する必要はないし、私はしないことにした。ただ、一部の人々がしたいなら、問題ない」
見出しだけを読んだ印象とは、ちょっと違いますね。
■マスクはなぜ足りない、なぜ買えない、なぜ必要なところにいかない?
たしかにマスクの消費量は増えています。でも、生産量も増やしています。それでも、あいかわらず、店頭ではマスクを見ません。
病院や福祉施設など、本当にマスクが必要なところも、マスク不足で仕事に支障が出るほどです。
職員のみなさんは、コロナだけではない危険にさらされています。
マスクが足りないのは、奪い合っているからだと思います。人々の異常な大量買い、際限のないパニック買いが収まらない限り、どんなにマスクを増産しても、マスク不足は続きます。
店頭に出たとたんに、行列を作っていた人がすぐに買っていきます。あっという間に品切れです。行列することができる時間と体力とお金のある人々が、マスクを手に入れています。
各店舗の入荷時間に合わせて、何軒もの店を回る人もいます。家にはすでに大量の買いだめしたマスクがあるのに。
世間では、いつも同じ人が朝から店の前に並んでいるという声もあります。
心理学の研究によれば、人は一度大量買いを始めると、次の機会もまた大量に買いたくなります。大量に買わないと、もう安心できなくなっているのです。
マスクの大量買いをする動機の多くは、家族愛なのですが、しかしパニック買いはもはや社会的迷惑行為です。
■世界中でパニック買い、奪い合い
世界の街のあちこちで、同じような奪い合い、パニック的な大量買いが起きています。それは、もう個人レベルを超えて、国際間の競争にすらなっています。
<世界のマスク市場が「無法化」、米の買い占めに各国が懸念も:4/4(土) ロイターY!>
「米国はマスクの世界最大生産国である中国に市場価格を大幅に上回る値段を払っている。既に契約を結んだ欧州の国から契約を奪い取ることもあるという」
「米国人は飛行場の滑走路で現金を出し、われわれの提示額の3倍、4倍を支払う」
まるで法律やマナーを無視した西部劇のような状態、仁義なき戦いです。
アメリカは「あり余るまで買い続ける」と言っていると報道されています。
どの国も、自分たちの国を守るために必死です。
■パニック行動とは
災害心理学の研究によると、パニック行動は、全員が絶対に死ぬとわかっているときや、全員が助かるときには起きません。助かる方法はあるが、助かる人は一部であり、助かるのは早い者勝ちだと人々が感じた時、パニック行動が生まれます。
タイタニック号には、2,200人の人が乗っていましたが、救命ボートは978人分しかありませんでした。さらにパニックの中で、定員の半分しか乗れなかった救命ボートもあり、結局1,513人もの人が亡くなりました。
人の死には避けらない死もあります。しかし、本当は避けらたのに、パニックによって亡くなる人が出るのは、とても残念です。
人はまた、数が足りない、手に入れにくいと思えば思うほど、そのものにたいする魅力度が増すことも、心理学的にわかっています。
マスクが足りないと思うほど、マスクを早くたくさん手に入れたい、いくらでも家に置いておきたいと強く思ってしまうのです。
このように思い行動する人は悪人ではないのですが、結果的に、分け合えば足りるものが奪い合うことで足りなくなり、本当に必要な人や弱者が泣くことになるのです。
■症状のない人もマスクは必要か
WHOも厚労省も、公式見解では、症状が出ている人や看護する人を除いて、マスクの必要はないとしています。
最近の報道でも、同様です。
<「病人と看護者以外にマスク推奨せず」 WHO専門家が改めて見解:3/31(火)CNN.Y!>
これまでも、マスクによる感染症予防効果は少ないとか、使い方次第ではかえて感染の危険性が高まるなどの研究や、専門家の話が紹介されてきました。
信じないという人もいましたが。
<WHOの言葉を信じないのはなぜ?:「新型コロナ感染予防にマスク着用不要」:私たちとヤフコメ民と情報>
ところが最近になって、やっぱりマスクによる感染予防効果があるとする研究も報道されています。テレビに出ている医師の中にも、マスクをした方が良いと語る人も以前からいました。
やっぱり症状がなくても、国民全員、人類全員、マスクをするべきなのでしょうか。
不安な時、人は最新の情報に飛びつきます。しかし本当に必要なのは、最新の情報ではなく、確かな情報です。
新聞を見ていると、数年おきに、ガンの特効薬ができた、画期的な治療法ができたという記事が出ます。病気の人なら飛びつきたくなる情報です。
しかし、何年たってもその薬や治療法が世に広がることはないというのは、よくある話です。
まだネズミを使った基礎研究段階や、試験的なものに過ぎなかったのに、報道が大きすぎることがあるのです。
STAP細胞は、ネイチャーに載り、大きく報道されましたが、研究も応用も広がることはありませんでした。
何かの危険性を示す研究や意見も同様です。騒いだ割には何もなかったことも良くあります。
食べ物のこげている部分は発がん性があるので避けた方が良いと言われてきましたが、現在は気にしなくなりました。発がん性が0ではありませんが、とても小さいからです。
科学的に見て発がん性があるということと、日常的に避けた方が良いということとの間には、距離があるのです。
一つの最新研究、一人のユニークな専門家が、世界を変えることもあります。しかし、結局一時のブームで終わり、世界はそのままということの方が、ずっと多いでしょう。
ユニークな最新の方法も良いですが、それでも基本は定番の方法です。最新の知見が吟味され、洗練され世に広がり始めてから採用しても、十分に間に合うこことも多いのです。
■結局マスクは必要か
マスクを正しく使えば(正しく使うのは簡単ではないが)、ある程度の感染予防効果はあるのかもしれません。
しかし、症状のない普通の人でも、マスクをしないと死んでしまうとか、全員がマスクをしないと感染爆発が起きるとかいうことはないのでしょう。
マスクの効果があったとしても、やはり基本は手洗いだと、多くの専門機関や専門家が力説しています。
WHOも、言っています。
<WHO、新型コロナ抑制に広範なマスク利用の効用を示唆:4/4(土) ロイターY!>
「手作りのマスクの使用やその他の手段で口元を覆うことが感染拡大抑制の一助になる可能性がある」(ただし、手洗いや人との距離がやはり大切で、マスクを医療用に取っておくことの大切さも述べています)。
共同通信は、次のように紹介しています。
<感染拡大防止に一定の効用 マスク着用でWHO 4/4(土)共同通信Y!>
「新型コロナウイルスの感染予防目的で一般市民がマスクを着用しても効果は薄いとする一方で『患者が着用すれば、他人に感染させる可能性は低くなる』と述べ、感染拡大防止に一定の効用は見込めると、改めて指摘した」。
マスクの効果が0ではないとしたら、マスクをするのも良いでしょう。ただし、優先順位があります。
まず、病気の人、症状のある人、そして看護者です。病院や福祉施設です。このようなところからマスクを奪い取り、症状のない人がマスクを使うのは、社会全体の感染予防にとって逆効果です。
<新型コロナウイルス感染を防ぐための最も効果的なマスクの使い方:買い占めで涙を流している人のために>
次に、感染拡大をできうる限り避けたい場所です。
放送局の中には、玄関にマスクを置き、症状のない来館者にも全員マスクをつけさせているところもあります。放送局内で感染が広がり、放送ができなくなる危険性を考えると、この対応になるのでしょう。
国会も、優先順位は高いと思います。
大学では、学生全員に朝晩の検温を義務付け、玄関にチェック用紙や体温計を置き、さらに職員まで置いて、来館者の対応をしているところもあります。
大学内で、感染クラスターが派生したら大変だからです。でも、学生全員、来館者全員にマスクを義務付け、マスクのない人のためにマスクを用意しているところは少ないと思います。
もしそうしようとして、全国の大学が大量のマスクを必死になって買いあされば、マスク不足の社会的混乱に拍車をかけることになるでしょう。
マスクが以前のようにいくらでも店に並ぶようになれば、優先順位の低い人でも、気休めでも、マスクをしたい人がして、全く問題はないのですが。
■新型コロナウイルス感染予防のために
ある一人の人が感染するかしないかは、科学ではわかりません。ただ、統計的に見て感染者の爆発的増加を防ぐ方法はわかっていいます。
3つの「密」を防ぐこと、手をこまめに洗うこと、咳エチケット守り飛沫を防ぐことです。そして、必要なところにマスクを届けることです。
私たちは、それぞれのできることをします。頑張っている専門家や現場の人々を応援します。社会の迷惑になるようなことはしません。自分ではどうしようもないことは受け入れます。冷静さを失いません。
これが、私たちの新型コロナウイルスとの戦い方です。