引退迫るJR北海道のキハ143形気動車 「レッドトレイン」と呼ばれた51系客車だった過去
JR北海道、室蘭本線の苫小牧―東室蘭―室蘭間で活躍しているキハ143形気動車の引退が2023年5月19日に迫っている。キハ143形の普通列車は1日1本だけ札幌駅から東室蘭行の普通列車として乗車することができ、この様子は2023年4月30日付記事(引退迫るJR北海道のキハ143形気動車! GW中に乗っておきたい札幌発東室蘭行乗車レポート)でも触れたとおりだ。
キハ143形を含むキハ141系気動車は1990年、札幌都市圏の拡大に伴って、沿線の都市化と宅地化が急速に進行した札沼線(学園都市線)の輸送力増強を図るために、余剰となっていた51系客車のオハフ51形から改造され登場した。今回はこうしたキハ141系の歴史について振り返ってみたい。
「レッドトレイン」と呼ばれた51系客車
キハ141系の種車となった51系客車が登場したのは国鉄時代の1978年のことだ。それまで北海道内各地の旅客輸送には1920年代から1960年代にかけて製造された鋼製客車が多数使用されていたことから、これらの老朽化した鋼製客車を置き換える目的で1982年までの5年間に渡ってオハ51形62両と車掌室を備えたオハフ51形68両が製造された。車体塗装は、それまでの客車の塗装が茶色や青色一色だったのに対して、赤色に変更されイメージも一新された。
1987年の国鉄分割民営化後、51系客車は札幌圏では主に小樽―旭川間などの普通列車として運用されてきた。しかし、車両自体に動力を持たずに機関車けん引による運行を基本とする客車列車では運用の効率が悪いと、旅客列車の電車化や気動車化が急速に進行し、北海道の51系客車は製造開始から10年余りで徐々に淘汰が始まり1994年には完全に引退することになった。
51系客車は車齢が比較的若かったことから、1990年からオハフ51形に運転台やエンジンなどを取り付ける改造工事を実施し、キハ141系として気動車化。札沼線(学園都市線)の輸送力増強のため札幌―北海道医療大学前間に導入され新たな活躍を見せることになる。1995年までに総勢44両が気動車化された。
札沼線(学園都市線)にキハ141系を投入
キハ141系が投入された札沼線の札幌―北海道医療大学間では年々列車本数も増加。1999年には新琴似駅まで高架化され、2000年には八軒―あいの里教育大間の複線化完成。キハ40系と共用の運用が組まれ、朝夕のラッシュ時には都会の複線高架区間を6両編成の気動車列車が走行する姿がみられた。
その後、2012年になり北海道医療大学駅までの電化が完成。6月1日の電化開業ではおよそ7割の列車が電車化され3割は気動車のまま運行されていたが、10月27日には残り3割の列車も電車化され、札幌―北海道医療大学間の気動車列車が淘汰された。これに伴って、それまで活躍してきたキハ141系とキハ40系は役目を終え、大半の車両はミャンマーへ譲渡されることになった。
一方で、キハ141系のうち1994年から1995年にかけて導入された性能強化型のキハ143形は、2両1ユニットのワンマン車両に再改造の上で、千歳線・室蘭本線に転用することとなる。
札沼線(学園都市線)電化に伴い千歳線・室蘭本線へ
2012年、千歳線・室蘭本線に転用後のキハ143形は、札幌―東室蘭間1往復に加え、苫小牧―東室蘭―室蘭間の普通列車に充当され、それまで同線で運行されてきた711系電車を置き換え、電化された札沼線へ転用された。また、それまでの711系電車では車掌が乗務していたが、キハ143形の投入により同区間の普通列車での車掌乗務が廃止されワンマン化を達成している。
しかし、キハ143形の種車となったオハフ51形客車は、2020年代になると製造からすでに40年以上が経過し老朽化も進行していたことから、2023年5月19日の運行をもって札幌―苫小牧―東室蘭―室蘭間での運行を終了し、翌5月20日からは新型車両となる737系電車が導入されることとなった。
737系電車の投入でキハ143形は引退、気になる今後は
737系電車の導入により、最高運転速度がキハ143形の110km/hから120km/hに引き上げられることになり、苫小牧―室蘭間の所要時間が平均で9分、最大で17分短縮される。
JR北海道の発表によるとキハ143形の千歳線・室蘭本線からの撤退後は別の用途を検討するとされており、続報が期待される。
(了)