生ごみの乾燥で70%のごみ減量も 自治体が家庭でできる対策呼びかけ
東京都三鷹市で鴨志田農園を営む、コンポストアドバイザーの鴨志田純(かもしだ・じゅん)さんは、2021年12月7日、「#生ごみを乾燥させてみませんか」というタグを使い、Twitterで、生ごみ乾燥を呼びかけた。
鴨志田さんのこの呼びかけに応えて、多くの人が生ごみ乾燥の写真を投稿した。筆者もツイートした。
生ごみを1100回乾燥させて合計286kg減
生ごみは、その重量のうち、80%以上が水分を占めている。筆者が2017年6月から、家庭用生ごみ処理機を使って生ごみを乾燥させたところ、1100回の乾燥で、286kgの生ごみ重量を減らすことができた。下のグラフで、オレンジ色のところが減らすことができた割合を示している。
600回台から、生ごみ乾燥機の機種をバージョンアップさせたので、減少率が高まっている。平均で70%近くを減らすことができた。生ごみ乾燥機の場合、電力を使うことを気にする人もいる。筆者の場合、大手電力会社との契約を止めて、100%再生可能エネルギーのハチドリ電力と契約し、自然エネルギーを使っている。切り替えはネット上で数分でできるので、とても楽だ。
北海道江別市は市民に呼びかけ 5日間で72%減
北海道江別市は、野菜くずなどを置いておくだけで水分量が減り、ごみ減量できると、市民に呼びかけた。江別市の公式サイトでは、白菜の葉を置いておいて、何%の重量を減らすことができるかをわかりやすく示している。24時間で30%減、48時間で50%減、120時間(5日間)で72%も減っている。
福島市は生ごみ処理機の使用を呼びかけ 83%減
福島市は、生ごみ処理機で乾燥させることで、生ごみ重量がぐんと減り、58gから10gへと、83%も減らせたことを公式サイトで説明している。
宮崎県新富町は産官学連携の食農循環システムを立ち上げ
宮崎県新富町は、地元の南九州大学と、パナソニックと連携したプロジェクトを始めた。パナソニックの家庭用生ごみ処理機を使い、町民が生ごみを乾燥させ、それを持ち寄って堆肥にし、それで育てた野菜などを食べて、そこから出た生ごみを乾燥させる・・・という「リサイクルループ」だ。
京都市は20年かけて82万トン→41万トンへ、ごみ量半減
昭和55年(1980年)から、京都大学と連携し、家庭からの食品ロス計量を実施している京都市は、ごみ減量・食品ロス削減の先進自治体だ。全国で50万人以上の自治体のうち、ごみの少なさで5位に位置している(1人1日あたり)。
2000年に82万トン/年だったごみ量を、2019年には41万トンまで半減した。生ごみに関しても、公式サイト「京都市の生ごみデータ」にさまざまな情報を掲載している。生ごみの燃えやすさを示したグラフが下記だ。プラスチックと比べて、生ごみがいかに燃えにくいかがわかる。
神奈川県逗子市は「生ごみマイスター制度」
神奈川県逗子市は、生ごみマイスター制度を設置している。生ごみマイスター、すなわち逗子市生ごみ指導員が、生ごみ処理容器の使用について、相談を受けて啓発を行っている。
東京都府中市は、ごみの減量にも熱心な自治体だ。人口10万人から50万人未満の区分で、全国で5位のごみ排出量(1人1日あたり)の少なさだ。
府中市の環境審議会は、ごみを減らしている全国の先進自治体の17の事例をまとめている。
全国の自治体のうち60%以上で助成金制度、多い自治体では6万円上限も
庭や畑を持っている人なら、生ごみを広げて乾燥させるのも楽だろう。筆者はマンション暮らしだが、ベジブロス(野菜だし)を作ったあとの搾りかすは、ベランダに新聞紙を広げて乾燥させている。
広げて乾かすのが難しい人には、家庭用生ごみ処理機は、スイッチを押すだけで乾燥させられるので、とても楽だ。全国の自治体のうち、60%以上で助成金制度がある。多い自治体では6万円上限というところもある。ぜひ調べてみてほしい。
主要150紙誌「食品ロス」登場回数増加、次は「生ごみ」に注目
過去30年間で、主要150紙誌に「食品ロス」という言葉が登場した回数は、2019年以降、4,000件前後を推移している(日本最大のビジネスデータベースサービス、G-Searchによる)。
食品ロスへの注目が集まってきたのはとてもいいことだ。次はぜひ「生ごみ」の乾燥や資源化にも関心を寄せてほしい。
著しく低い日本のリサイクル率を上げ、2兆円を超えるごみ処理費を削減しよう
日本のごみリサイクル率は、OECD加盟国の中でも低い。生ごみを資源化せず、ほかのごみと一緒くたに燃やしてしまっているためだ。
生ごみの乾燥や資源化が、国全体のリサイクル率を上昇させ、年間2兆円以上を費やしている一般廃棄物の処理コストを減らすことにつながるはずだ。全国で、ぜひ進めたい。
参考情報
宮崎県新富町 新富町、南九州大学、パナソニックが食品廃棄ロス削減と生ごみ減量化に向け産官学連携で合意
全国の生ごみ処理機助成金制度について調べる(goo 住宅・不動産)
「生ごみ出しません袋」「燃やすしかないごみ」年間2兆円のごみ処理減らす自治体の取り組み(井出留美、Yahoo!ニュース個人、2021/5/30)
なぜ松山はごみが少ないのか?家庭のごみを減らす全国トップレベルの秘密を探る(井出留美、Yahoo!ニュース個人、2021/12/13)
世界のごみ焼却ランキング 3位はデンマーク、2位はノルウェー、日本は?(井出留美、Yahoo!ニュース個人、2021/4/20)