スペインはW杯に行けるのか?世代交代のジレンマと「ラ・ロハ」に立ち込める暗雲。
スペイン代表が、苦しんでいる。
2022年のカタール・ワールドカップの欧州予選が各地で行われ、スペインはグループステージ第1節でギリシャと対戦して1-1と引き分けた。続く第2節ジョージア戦(2-1)、第3節コソボ戦(3-1)では苦戦を強いられている。
「ラ・ロハ」の愛称で親しまれるスペインはEURO2008から主要大会3連覇を成し遂げた。2010年の南アフリカW杯とEURO2012で世界と欧州の頂に立ち、黄金時代を謳歌していた。
シャビ・エルナンデス、アンドレス・イニエスタ、セスク・ファブレガス、ダビド・シルバ...。クアトロ・フゴーネス(4人の創造主)と呼ばれた賢者たちはスペインの中盤に君臨し、ヨーロッパの猛者を手玉に取った。
1978年のアルゼンチンW杯以降、スペインが本大会に出場しなかった過去はない。だが一方で、2014年ブラジルW杯(グループステージ敗退)、EURO2016(ベスト16敗退)、2018年ロシアW杯(ベスト16敗退)とビッグトーナメントで上位進出できずに月日が流れている。
先のジョージア戦のスタメンで、W杯優勝メンバーはセルヒオ・ブスケッツのみだった。セルヒオ・ラモスは初戦のギリシャ戦で45分プレーしてからピッチを退き、代表の公式戦で出場時間を調整していると批判を浴びた。
スペインに必要なのは世代交代だ。それは確かだろう。
先述したシャビ、イニエスタ、セスク、D・シルバに加え、イケル・カシージャス、カルレス・プジョール、ジェラール・ピケ、シャビ・アロンソ、ダビド・ビジャ、フェルナンド・トーレスらが代表から去っていった。
ルイス・エンリケ監督はギリシャ戦とジョージア戦でスタメンを7選手入れ替えた。ジョージア戦の先発メンバーの平均年齢は24歳226日だった。公式戦では2005年3月30日のセルビア戦(24歳51日)以降で最も若いスタメンだった。
「招集リストを決める時に選手の年齢は意識しない。35歳であろうと、18歳であろうと、ピッチ上で貢献してもらう」とはルイス・エンリケ監督の弁である。
「カンテラというアイデアはない。ただ、(U-21のルイス・)デ・ラ・フエンテ監督に謝りたい。多くの選手をA代表に呼んでしまっているからね。世代別代表からA代表に選手が移っていくのはスペインの伝統だと言えるかも知れない。ただ、私にとって年齢は重要ではない。すべてはパフォーマンス次第だ」
今季のチャンピオンズリーグにおいて、ベスト8に進出したスペイン勢はレアル・マドリーだけだった。
今回のスペイン代表の招集メンバーで、ベスト8以降で戦うのはS・ラモス(マドリー)、チアゴ・アルカンタラ(リヴァプール)、ロドリ・エルナンデス(マンチェスター・シティ)、フェラン・トーレス(シティ)、エリック・ガルシア(シティ)の5名のみである。
「リーガエスパニョーラが世界最高峰のリーグであることに疑いの余地はない。素晴らしいクラブがあり、偉大な選手たちがいる。なかには、他国のリーグにチャンスを求める選手もいる。だけど、それは他国リーグが優れているという意味ではない。それぞれ、自分の決断を下す。でもラ・リーガは世界でトップ3に入ると思う」
これはファビアン・ルイスの言葉だ。今回の招集メンバーの24選手中11選手(46%)が他国リーグでプレーしている。ラ・リーガの選手は54%だ。
スペインにおいても海外組は増えてきている。だがルイス・エンリケ監督はセサル・アスピリクエタ(チェルシー)、マルコス・アロンソ(チェルシー)、エクトル・ベジェリン(アーセナル)、パブロ・サラビア(パリ・サンジェルマン)、アンデル・エレーラ(パリ・サンジェルマン)、ルイス・アルベルト(ラツィオ)といった選手を呼んでいない。右サイドバックの人材難とCLレベルの選手を考慮した場合、首を傾げざるを得ない人選だ。
ジョージア戦でペドロ・ポロが出場して、ルイス・エンリケ監督の下での22人目のデビュー選手になった。またルイス・エンリケ監督はコソボ戦までに58選手を起用している。
「私は決断を下す。ジャーナリストに何と言われてもね。そのために雇われているんだ。私が11人のメンバーを固定したとして、誰が勝利を約束してくれる?いつも同じメンバーで戦えば勝てるとは限らない。それが私の考えだ」
その言葉通り、ルイス・エンリケ監督は勇敢な指揮官である。この欧州予選ではポロ、ペドリ、ブライアン・ヒルをデビューさせた。手を変え品を変え、選手たちの競争心を煽りながらチームビルディングしていく。
ただ、実験の場はもう多く残されていない。W杯予選では本大会にストレートインできる1枠をスウェーデンと争うことになる。そして、この夏にはEUROが控えているのである。