イランでトランプ米大統領らの逮捕状が出されるなか、シリアでは「イランの民兵」を狙った攻撃が続く
イランの検察当局は6月29日、イラン・イスラーム革命防衛隊ゴドス軍団のガーセム・ソレイマーニー司令官の殺害に関わったとして、ドナルド・トランプ米大統領を含む36人の逮捕状をとったと発表した。
イランと米国の対立が再び先鋭化する兆しが現れ始めている中東ではあるが、シリアでもその余震にも似た動きが見られるようになっている。
「イランの民兵」を狙った爆撃だ。
「イランの民兵」を狙った攻撃
「イランの民兵」とは、イラン・イスラーム革命防衛隊の精鋭部隊であるゴドス軍団、同隊の支援を受けるイラク人民動員隊、アフガン人民兵からなるファーティミーユーン旅団、に代表されるいわゆる「イランの民兵」、レバノンのヒズブッラーといった組織の総称(ないしは蔑称)。
爆撃を行っていると思われるのはイスラエルだ。
国営のシリア・アラブ通信(SANA)によると、6月22日にハマー県のハマー市上空にドローン複数機が飛来し、ラタキア県に展開するシリア軍航空部隊がこれを迎撃した。
反体制系のEldorarによると、飛来したドローンはイスラエル軍所属機と思われる。
また6月23日には、ヒムス県タドムル市の東方および北東方面から敵飛翔体が複数飛来、ダイル・ザウル県クバージブ村一帯とヒムス県スフナ市一帯にあるシリア軍の拠点複数カ所にミサイル攻撃を行う一方、スワイダー県サルハド市近郊の拠点も攻撃を受けた。
英国を拠点とする反体制系NGOのシリア人権監視団によると、攻撃を行ったのはイスラエル軍戦闘機。
ヒムス県スフナ市とダイル・ザウル県ダイル・ザウル市を結ぶ街道沿線に配置されている「イランの民兵」の拠点複数カ所を攻撃し、軍事拠点1カ所を破壊、同拠点に駐留していた民兵5員が死亡、多数が負傷した。
また、スワイダー県に対する攻撃では、「イランの民兵」も駐留するサフン丘地区のシリア軍通信レーダー拠点1カ所が被弾し、シリア軍防空部隊の隊員2人が死亡したという。
ダイル・ザウル県南東部に集中する攻撃
先週末になると、攻撃はダイル・ザウル県南東部ユーフラテス川西岸のイラク国境に面するブーカマール市一帯に集中した。
シリア人権監視団によると、6月27日、所属不明の航空機が同地一帯に展開するシリア軍と「イランの民兵」の拠点を攻撃し、シリア人4人と「イランの民兵」2人が死亡した。
6月28日にも、ブーカマール市一帯上空に所属不明の航空機複数機が飛来、「イランの民兵」の拠点に対してミサイル攻撃を行い、シリア人1人と「イランの民兵」9人が死亡した。
この爆撃に関して、パン・アラブ日刊紙『シャルクルアウサト(シャルク・アウサト)』は、ソレイマーニー氏の後任としてイラン・イスラーム革命防衛隊ゴドス軍団司令官となったエスマーイール・ガーアーニーがブーカマール市を訪問したのを狙った動きだと伝えた。
米国内での支持率低下や暴露本出版により、トランプ政権がレイムダック化を始めるなか、イランがどのような動きに出るのかがにわかに注目される。
(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)