イスラエルの攻撃を逃れてレバノンから避難するシリア難民とレバノン人を支援するシリアのNGO
イスラエル軍によるレバノンへの攻撃が9月23日に激化してから、3週間が経った。
レバノン保健省が10月10日に発表したところによると、186,400人(38,700世帯)が戦火を逃れようとして避難民(IDPs)となる一方、隣国シリアにも多くの人々が避難を続けている。
国営のシリア・アラブ通信(SANA)が10月13日に伝えたところによると、これまでに396,164人がレバノンからシリアに避難しているという。
内訳は、シリア人が281,142人、レバノン人が115,022人である。
シリア人のなかに、2011年以降のシリア内戦で難民となった人々が多く含まれていることは、レバノンと接するシリア政府支配地に避難した彼らのうち、19,502人(10月14日現在)がクルド民族主義組織の民主統一党(PYD)が主導する自治政体の北・東シリア地域民主自治局の支配下にあるシリア北部に、2,096人(10月11日現在)がアレッポ市シャイフ・マクスード地区とアシュラフィーヤ地区に、そして約2,700人がトルコ占領下のシリア北部に移動したことからもうかがい知ることができる。
シリア政府と北・東シリア自治局は、レバノンから避難したシリア人とレバノン人を積極的に受け入れている(一方、国際テロ組織のシャーム解放機構が実効支配するシリア北西部は避難民を受け入れていない)。しかし、13年にわたる紛争と欧米諸国の経済制裁によってガバナンスが低下していることを考慮すると、避難民が増加すれば、その収容能力は限界に達し、避難民が必要としている医療、食料、保健、メンタルケアなどを十分に提供できなくなることは避けられない。
こうしたなかで、NGOが積極的に避難民への支援を行っている。
社会問題労働省は10月14日、フェイスブックで、各県の関係部局を通じて、レバノンから避難したシリア人やレバノン人への支援活動を続けていると発表、連携するNGOを紹介した。
それによると、子どもの村協会(SOS)、ビトジャンマアナー(私たちを結び付けよう)協会といったNGOが、ダマスカス県の社会問題労働局とともに、ダマスカス郊外県のジュダイダト・ヤーブース国境通行所を通じてシリアに入国したシリア人、レバノン人に対して、水やナツメヤシを配給するなどの緊急対応活動を開始した。
また、タルトゥース県では、タルトゥース(アリーダ)国境通行所を経由してシリアに入国し、タルトゥース市のブルー・ベイ・リゾート、カルナク家族リゾート、バアス前衛キャンプに設置されたセンターに収容されたシリア人とレバノン人に対して、バトゥール協会、賢い女性協会、家族計画協会、アニース・サアーダ天使協会、バーニヤース慈善社会サービス協会が、子どものためのリクリエーション、メンタル・ケアなどを提供している。
さらに、シリア社会開発協会がダマスカス県とイドリブ県の社会問題労働局の監督のもと、イドリブ県のハーン・シャイフーン市のセンターや、ハワー村、タッフ村で、避難したシリア人やレバノン人に教育支援を行っている。
一方、北・東シリア地域民主自治局の支配地では、ハサカ県フール町の議会と欧州のNGO組織であるクルド赤新月社が、レバノンからの帰還者を支援するための募金活動を開始したという。
こうした動きのほか、ロシア、イラン、ベネズエラといった国も、避難民のための支援物資を提供している。
シリア政府であれ、ロシアであれ、イランであれ、日本を含む西側諸国においては、人権に対する意識が低い、あるいは皆無であると見られがちだ。シリア難民の帰還については、シリアの軍や治安当局による逮捕、拷問、殺害に晒されるため、帰国させるべきではないという極論さえ平然と吹聴されている。
しかし、欧米諸国がシリアに避難したシリア人やレバノン人を支援する意思さえ示さないのとは対照的に、その政敵である国々、そしてそこで真摯に活動を続けるシリアのNGOの活動は、至極人道的に見える。