【河内長野市】データを見ると消滅可能性自治体ではなかった!1000年続く明るい未来への市職員研修とは
私が3年前に河内長野に移住する前、河内長野は「南河内」に含まれると思っていました。ところが河内長野のことを調べていくうちに、「奥河内」という言葉があることを知り、そのような経緯から、「奥河内から情報発信」というネーミングを思いつきました。
では、奥河内とはどういう意味なのでしょう。河内長野市観光ポータルサイト(外部リンク)によると次のように定義しています。
また広義の意味では、河内長野市全域と千早赤阪村全域、それに富田林市や和泉市の一部を含めることもあるとのこと。
奥河内そのものについては理解しましたが、ではいったい誰が「奥河内」というネーミングの名付け親なのでしょうか。以前ネットで「奥河内は奥三河のパクリ」という書き込みを見たことがありますが、そういうわけではありません。
奥河内の名前を付けたのは、意外にも河内長野市役所の職員によるブランディング活動のひとつだったのです。それは2009(平成21)年に行われた、活性化プロジェクトチームの提案書「奥河内・湧くワク構想」がきっかけとのこと。
提案書によると南河内の「南」は単純に南側という意味しかなく、「奥」という自然豊か、神秘的で積極的なコンセプトを考えました。そして「河内」という本来なら歴史や文化が深いのに、昭和に流行ったおっさんの歌の影響で「ガラの悪さ」というデメリットが付けられてしまいました。その悪い印象を変えようと考えた市のイメージ戦略だったのです。
確かに私も引っ越し前での河内のイメージはあまり良くなかったのは事実でした。もちろん今は違います。ちなみに河内の名前の由来は、地域の北境に近畿を代表する河(淀川)が流れており、その河の内(南)側という意味があるとのこと。
そして令和の時代になり、再びブランディングの研修が行われています。私は河内長野市からブランディング研修の情報を入手しました。ただし現在のブランディング研修は「奥河内」のネーミングを考えた当時とは違う内容です。
今回は、市の職員のうち、入職10年未満の人を対象とした研修でとのこと。背景として河内長野の施策は成果を出しているのに、外部からの印象が高齢化や人口減少、消滅可能自治体といったネガティブな印象ばかり強いことへの危機感がありました。そこでまずは若手職員から意識を変えようという試みが始まったのです。
そして市の担当者からブランディング研修会が行なわれるという情報を得たので、私は取材を依頼し、特別に研修の様子を拝見させていただきました。
場所は市役所の最上階である8階会議室です。初めて行きました。
こちらが8階の会議室ですが、遠くの山々が見えてとても素晴らしい景色ですね。
ちょうど参加する職員の皆さんが入っていくところです。
参加者は市のあらゆる部署から参加し、8つの班に分かれています。公務員といえばどうしても縦割り行政の印象が強く、横のつながりがないから融通が利かないといったイメージがあります。しかし、少なくとも河内長野市については、研修内容を見ても横のつながりを感じました。
研修は午後1時からということで、お昼休みを終えた職員がぞくぞくと会議室に集まってきました。
女性職員の数が多いのが印象的でした。
時間になりましたので研修が始まりました。谷ノ上浩久総合政策部理事の挨拶から始まります。
次に三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社の沼田壮人主任研究員から河内長野市の現状についての報告が行われました。
このときに驚いたのは、人口減少と高齢化の印象ばかり先行する河内長野市の現状です。出生数は2021年以降に増加に転じているのです。
背景には河内長野市に入ってくる人が、河内長野市から出ていく人よりも多いことがあるそうです。子どもだけなら7年連続で転入数が超過しているとのこと。
理由として空き家が埋まりやすいということがあるそうです。河内長野の場合、空き家が出るとすぐに次に入る人が決まる確率が高いそうです。その背景には河内長野は自然豊かな場所で、庭付きの大きな家が手に入るからとのこと。
そして世帯数は変わらないのに人口が減るという現象もあります。それは親の世代が残って子世代が出ていくからというのもあるそうです。そして親の世代がいなくなり空き家になると、すぐに次の入居者が決まるというのですから驚きました。
さらに、沼田主任研究員からは意外な報告がありました。市全体でみるのではなく地域ごとに見るべきであるといいます。具体的には人口が増えている地域と現状のままの地域、減少している地域があります。特に駅から少し離れている印象のある荘園町で、若いファミリー層の人口が増えているそうです。
ちなみに南花台は現状では人口が増えている段階までは来ていないとのこと。ただしサッカースタジアムができるなどにより、南花台がこれからますます熱くなりそうで将来的には荘園町のようになる可能性が高そうです。
報告が終わり、次は参加者が河内長野市の現状に関する感想を入力する時間です。具体的にはITを駆使した方法です。スマホより職員だけが入れるサイトに入ってそこで感想を入力して送信する方法です。河内長野市はIT化が進んでいるというのは住んでいてよく感じますが、このようなところでも利用されているんですね。
参加者が一斉にスマホ入力をしています。
匿名での入力が許されているので、本音で語れるのが良いですね。
スマホで入力し送信するので、すぐに感想が共有できます。
河内長野の印象が変わってプラス思考になったという感想がある反面、河内長野は子育てがしやすい町のはずなのに、出生率が意外に低いことに驚いているというのがありました。
実は隣の大阪狭山市と比べると出生率が低いという統計が出たからですが、これには裏があるそうで、大阪狭山市は積極的に住宅を建設しているのに対して河内長野は空き家待ちの状態であり、入りたくても入れない人がいる可能性があるとのことでした。
次にブランディングについての説明です。市の職員に河内長野市の「宝=ブランディング」を探して、ブランディング理念を決めて市政をマネジメントすることを目指しています。2年後の2026(令和8)年度からの「第6次河内長野市総合計画」(外部リンク)での指針を目指すとのこと。
具体的なブランディング事業についての説明です。まず今回のように市の職員が行う①インナーブランディングを行い、次に住んでいる市民向けの②市内のシビックブランディング、市外の人が住んでみたいと考える③アウターブランディングという順番に進めていくことを考えています。
そしてブランド理念として「かわらない約束」、「ながく大切にするらしさ」、「つながる未来」から2要素ずつ合計6の要素を決めました。
ひとつずつの要素について、担当している職員から具体的な説明がありました。最初の安心は、物理的な安心(災害に強い、犯罪率が低い、広い家が持てる)に加えて、身近な自然や人とのつながりなど精神的な安心の意味もあるとのこと。この両方を満たしたうえで、子育て世代や高齢者世代の不安解消を目指します。
2つ目は自然です。ここには「緑」としての自然に加え、「自然体」という側面、育てる側面も考えているとのこと。但し所属する部署によっては職員の意思が入りにくい可能性も指摘されています。
自然の緑視率の高さや穏やかな気風、ありのまま、お互いが支えあえる関係が育まれていることを挙げています。そして町全体が呼吸をしてゆっくりと育てていきながら成長していくイメージを築き上げようと考えています。
3つ目のつながりは、市民と市役所、市民同士、地域と地域、といった横のつながりと、高齢者と子供の縦のつながりがあり、いずれも人と人のつながりです。それに加え人と自然のつながり、交通網を通じた物理的なつながり、さらには時間軸でのつながり(過去、現在、未来)があると考えます。
穏やかでここちよく、平和的なつながりが存在することを河内長野の強みであると考えています。特に今年市制70周年を迎えた河内長野市は「つながる河内長野」をとても大切なコンセプトにしていますね。
4つ目は継承です。1000年続く安心、つながりを基に1000年先の未来というのです。これは言われるまで私も見落としていました。「1000年の町」といえば普通は都が1000年あった京都を思い出すからです。
ところが都ではありませんが、1000年続いた「手堅い幸せ」の住宅都市という意味で河内長野が該当します。1000年前といえばちょうど今年の大河ドラマ「光る君へ」の時代ですが、高向遺跡の結果などから当時からすでに町として栄えていたことが実証されています。
中世の町など3つの日本遺産の構成要素でもある河内長野は、普段着の住宅都市として1000年続いてきた、だから同じように1000年後の未来にもつなげていこうという考え方です。そういえば1000年の華やかな都・京都にて、1000年の普段の住宅都市・河内長野の展覧会が2年前に行われていましたね。
5つ目は愛着です。河内長野への愛着は好きと同じであること同じ意味合いだということ。安心を感じて戻ってきてほしい、好きだから住んでいる、好きだから伝えたいなど、職員がプライドを持って仕事をしていることも大切という説明です。
そういえば私などいつの間にかYahoo!記事を通じて「河内長野の回し者」のようになっていますが、これも愛着のひとつなのかもしれません。
6番目、最後は変化し続けるです。町の停滞や衰退ではなく発展しつづけるという想いを市の職員が持たなければならない。サービスの提供をいかに工夫するか、そのことで市民から感謝をしていただける体制作りをしていこうということです。
さらに社会情勢の変化に対応し、よりよく変化しながら交通アクセス向上や住みやすさの最適解を提供するために、探究と進化を続け変わり続けることの大切さについて話がありました。
研修参加者には次のシートがあります。これは職員のプライベートと仕事について、今発表があった6つの要素を当てはめて考えるというもの。円グラフでそれぞれの要素が今の自分にどのくらいの比率を占めているのかを自分で考えるわけです。
シートの裏には事前に記入した複数の人の事例があります。事例があると書きやすいですね。
そして実際に記入した人の事例についての報告がありました。
仕事だけではなく、プライベートについても考えて発表することは、普段顔を合わせない他の部署の人の性格や趣味などがわかるので、新たな交流のきっかけになるのかなと思いました。
いよいよ実際に参加者が記入をします。10分程度の時間で記入を行った後、会議室の島ごとのグループ内で発表をしあうというもの。
ということで一斉に記入が始まりました。すでに事前に記入を終えた職員は、巡回しながらアドバイスを送っています。
ここまではどちらかというと固かった雰囲気の職員の皆さんでしたが、ようやく顔の表情が和やかになってきました。
研修は堅苦しくなく、楽しみながら真剣にやろうという内容なので、リラックスしながら各々が記入していきます。
楽しみながら真剣に取り組むという内容など、素人目からすると公務員とは真逆的なクリエイティブな分野の人たちっぽいですが、河内長野市はこういう研修を行っているわけですね。服装もガチガチのスーツというより、私服っぽいカジュアルな格好の職員が多いのが印象的でした。
皆さん真剣に取り組んでいます。
早くできた人から発表を行っています。
発表に対してみんな真剣な表情で聞き入っています。
とはいえ、やはりプライベートな面の話にもつながるので、見事に交流の輪が進んでいるような気がしました。
私もいろんな島を回りながら様子を撮影しましたが、ひとつ面白い会話を耳にしました。
それは飲みに行くときは電車に乗って難波に行くというのです。河内長野市内で飲むのではなく大阪市内まで出るということ。どうしてなのか気になったので質問してみました。
すると、友達と集まろうとすると河内長野に住んでいない人が多いので、やはり集まりやすい大阪市内になるとのこと。「なるほど」と頷けましたし、その気になれば駅から乗り換えなしで30分で難波に行けますね。
そういう意味を考えると、働く場所としての河内長野も魅力的なのかなと思いました。
いろんな部署から集まってひとつの研修を受けながら、最初に職員同士がつながって一丸となって業務に邁進し、それが市民や市外の人にも広げていこうというブランディング研修。
河内長野に住んでいる者としては心強いと思いました。
最後に、現在の市の状態や職員の状態をどう変えていこうかということがまとめられ、研修が終わりました。
そして、見えない目標だと苦しいから理念やビジョンを持つことの大切さで締めくくられました。これは河内長野市役所だけでなく、あらゆる仕事やライフワーク趣味などにおいても大事なことですね。
研修が終わった帰りに選挙のポスター掲示場を見つけました。情報によれば現在の島田市長が次の選挙に出ないとの報道発表がありました。したがって8月以降に新しい市長になることは、ほぼ確実です。
新しい市長は、もちろん市のために頑張られると考えられます。しかし市長がひとりで頑張っても市の職員がついていかないと上手くいきません。ブランディング研修を通じて、意識が高く志のある市の職員が新しい市長とタッグを組んで市を良くしようと頑張れば、河内長野はもっと良くなる。住民のひとりとしてそのようになってほしいと思いました。
河内長野市役所
住所:大阪府河内長野市原町1丁目1-1
アクセス:南海・近鉄河内長野駅からバス 河内長野市役所前バス停下車すぐ
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