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【英会話】能力(ability)が落ちるのはこわいねぇ って言ったら、首を振られた。なんで?

英語雑学エッセイスト 徳田孝一郎英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

 20年ほど仕事で英語を話していますが、慣れないことを言おうとすると一瞬詰まったり、日本語を直訳してしまったりすることがまだまだあります。
 そんな私の失敗英語や、今も私の周りで起こっている失敗英語を多少脚色も加えて、ご披露したいと思います。今回は、読むと自然な英語を得られるお得なエッセイです。

能力が落ちるのはこわいねぇ~

 Native English Speakerの友人のRichとはもう15、6年の付き合いになります。初めて会った時は私が37歳でRichは10歳下なんで27歳。いやはや、ずいぶん長い付き合いになったものです。だいたいNative English Speakerって3、4年で本国に帰っちゃうものですからネットで連絡を取り合うことはあっても、一緒に吞んだり仕事をしたりすることは少ない。めずらしい付き合いです。

 そんなことをRichと話していたら、Richが50代になっている私に質問してきた。歳をとるのって怖い? っていうんです。どうもRich、生徒さんに歳をとるのが怖い? 訊(き)かれたらしい。
 まぁ、私はやりたいことしかやらない、やりたくないことは工夫しても愉しめなきゃやらない っていう面白がり屋の極楽トンボなんで、歳をとることも愉しんでやろうってタイプ。怖くないねぇ、と言おうとしてふと思い出す。

 私、子どもの頃だいぶニブい子だったんです。いや、今でもそうかもしれませんが、輪をかけてニブかった。たとえば、雨の日に、朝顔に水やりするぐらいニブい。その時は、母が血相変えて私のところに飛んで来て、
「こんっ馬鹿が! 雨が降りようとに、水をやる馬鹿がおるか!」(博多弁)
って言って首根っこつかまれて玄関に引きずり込まれました。
「あそこの家の男の子は少し頭がおかしかときっと言われとるよ、お父さん、どうしましょ」
と、母が父に愚痴っていたことをよく憶えています。

 その後の努力と精進と研鑽でなんとか生きてきましたが、それを思い出した。歳をとるのは怖くないけど、能力が落ちるのは怖いなぁって思う。それを英語で、

I’m not scared of aging but scared of losing the ability.

って言ったんですが、さくっとRichが首を振る。あれ、おかしい? 時制も単語の選択も完璧なはずなのに。みなさん、この英語のどこがおかしいか気づかれたでしょうか?

 問題はability にあります。
 ability というのは「能力」「技量」という意味を持つ単語ですが、実は「~する能力」「~についての」能力という使い方をするんです。話の流れで具体的に何の能力か判れば単独でもいいんですけど、ability to do, ability in(at) ~ という風に使う。
 Richいわく、私が言いたいことは能力全般が落ちていくということですから、こういう場合にはそぐわないとのこと。じゃあ、どう表現するの? と訊いたら、Richは、

I’m not scared of aging but scared of cognitive decline.

って、どう? と言ってきた。認識の減退か、なるほど能力全般が落ちていくことがあらわせる。認識の減退ってことは勘違いや言い間違い。確かに怖いですねぇ。ニブい子どもを脱するためにやった努力と精進と研鑽は死ぬまで続けることになりそうです。

 と、こんな感じで、Native English Speakerたちとの英語やカルチャーギャップのお話をご披露したいと思っております。お気に召しましたら是非ともごひいき(フォロー)くださいますようお願い申し上げます。

イラスト 大橋啓子

英語・英会話研修スクール「英語・直観力」代表

英語嫌いだったが、仕事で必要に迫られ英文法をマスターし、学芸大附属・ICU高校・早稲田高等学院・慶応高校・渋谷幕張・早稲田大学・慶応大学など有名高校・大学に多くの生徒を合格させる。その実績を買われ、英会話習得カリキュラムを作成するために英会話スクールに転職。担当した1600名の受講生のVERSANTのスコアの平均伸長点は5.3を超え、3か月の最高伸長点は21を記録する。この時期に英文法をネタにした小説「英語の国の兵衛門」も上梓。その後Vice-presidentに就任し、受講生の英会話力向上に尽力し、業績を伸ばす。現在は独立し、英語・英会話研修スクール「英語・直観力」を経営している。

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