猛暑と「クジラの尾型天気図」
令和元年(2019年)の猛暑日
令和元年(2019年)8月2日の日本列島は、高気圧に広くおおわれ、全国的に気温が上昇しました(図1)。
最高気温が30度以上の真夏日は、全国の気温観測を行っている926地点のうちの824地点(約89%)にのぼりました。
最高気温が35度以上の猛暑日を観測したのは、236地点(約25%)にのぼりました。
真夏日、猛暑日ともに令和元年最多です。
令和元年(2019年)で初めて猛暑日(最高気温が35度以上の日)を観測したのは、高気圧におおわれた5月25日の大分県竹田市で、最高気温は35.0度でした。
翌26日は、高気圧に覆われた上に大陸から真夏並みの暖気が流入し、北海道佐呂間町で5月の国内最高気温を2度以上更新する39.5度を観測するなど各地で厳しい暑さとなりました。
北海道で5月に猛暑日となったのは観測史上初めてというだけでなく、国内の5月の最高気温の記録(埼玉県秩父市の37.5度)を上回りました。
つまり、初めて、北海道が全国で一番高い気温のタイトルホルダーとなりました。
しかし、6月から7月中旬までは、全国的に気温があがらず、6月30日の段階では、猛暑日ののべ地点数は79で足踏みし、昨年、平成30年(2018年)の78とほぼ同じ値です。
そして、猛暑日を観測した地点数が積み重なっていった平成30年(2018年)と、猛暑日のほとんどなかった令和元年(2019年)との差がどんどん開きました(図2)。
体に堪える暑さ
令和元年(2019年)の暑さは、平成30年(2018年)の暑さに比べ、多少気温が低い、多少湿度が低いという傾向があるものの、体に堪える暑さといわれています。
例年では、梅雨末期に気温が上がりますので、体が暑さに少し慣れてから、梅雨明け後の猛暑がきます。
しかし、令和元年(2019年)は、7月中旬の梅雨末期まで気温の低い日が続いていたため、7月下旬の梅雨明け後の暑さは、体が暑さに慣れないうちの暑さです。
それだけ、体に堪える暑さでした。
クジラの尾型天気図
全国的に猛暑が続くときの地上天気図は、「クジラの尾型」と呼ばれる晴天が長続きする天気図です。
タイトル画像のように、太平洋高気圧の等圧線の形がクジラの胴体、東シナ海・朝鮮半島の小さな高気圧がクジラの尻尾に似ているからです。
高層天気図が作られる前から、このような地上天気図が出現すると猛暑になることが知られており、クジラの尻尾が予報のノウハウでした。
太平洋高気圧が日本列島上空をおおい、その上にチベット高気圧が張り出してきて日本列島が布団の二枚重ね状態となって暑い日が続くことがわかっています。
つまり、チベット高気圧が太平洋高気圧の上に張り出してくることの地上天気図への反映が「クジラの尻尾」です。
ただ、今回のクジラの尾は週末までで、長続きしない可能性があります。
各地の週間天気予報
各地の週間天気予報によると、ほぼ、全国的に晴れて真夏日が続く予報です(図3)。
8月6日前後に西日本を中心に傘マークがついていますが、これは、台風8号の接近による影響です。
台風8号が、西日本にどの程度の接近をするかによって予報は大きく変わりますが、それでも真夏日が続く予報です。
ただ、真夏日が続く予報といっても、猛暑日の予報は減っています。
8月に入ってからの記録的な暑さは、例年の暑さに変わりそうです。
東京の16日先の天気予報(ウェザーマップ発表)によれば、傘マークや黒雲(雨が降りそうな曇り)マークの日がありますが、最高気温で猛暑日は8月4日だけです(図4)。
また、予報が発表されている8月18日まで真夏日が続き、8月8日までは熱帯夜(最低気温が25度以上の日)が続く予報です。
ただ、8月8日の降水の有無の信頼度は、5段階で一番低いEであるなど、信頼度が低い予報です。
小笠原近海へ向かっている台風8号、あるいは、今後フィリピンの東海上で発生する予定の台風によって天気予報は大きく変わりますので、最新の気象情報に注意してください(図5)。
気象庁が発表する気温は、長年の気候変動を観測するために同じ条件で観測しています。このため、常に、風通しが良い場所で、日陰で、地表面などからの照り返しがない場所での観測であり、予報もこのようにして観測する気温の予報です。
気象庁が、34度から35度の予報のときは、体温以上の気温の中で生活している可能性が高いと考えてください。
体温以上の気温では、体温調節のための発汗作用が効きませんので、熱中症などの危険性が急に高まります。
水分を十分とり、涼しいところで休むなどの対策が必要です。
タイトル画像の出典:気象庁ホームページの図に著者加筆。
図1、図4の出典:気象庁ホームページ。
図2の出典:気象庁資料をもとに著者作成。
図3の出典:ウェザーマップ提供。