サイ・ヤング賞の受賞回数ではなく「投票2位」の最多回数を塗り替える!?
現時点における、ア・リーグのサイ・ヤング賞の筆頭候補は、ジャスティン・バーランダー(ヒューストン・アストロズ)だろう。184.0イニング、防御率2.69、K/BB7.15は、いずれも1位。16勝(5敗)はトップと1勝差の2位タイで、奪三振243も9三振差の2位に位置する。
ただ、受賞は間違いなし、とまではいかない。チームメイトのゲリット・コールは、5位の170.1イニングを投げ、4位の15勝(5敗)、2位の防御率2.85とK/BB6.15、1位の奪三振252を記録している。
バーランダーがサイ・ヤング賞を受賞できず、投票2位に終われば、2012年、2016年、2018年に続く4度目だ。ウォーレン・スパーン、ランディ・ジョンソン、カート・シリングを追い抜き、単独で「サイ・ヤング賞の投票2位が最も多い投手」となる。2年連続2位は、スパーン(1960~61年)、ダン・クイゼンベリー(1983~84年)、シリング(2001~02年)、ブランドン・ウェッブ(2007~08年)の4人が経験している。
投票2位が3度の4人中、サイ・ヤング賞を一度も受賞していないのは、シリングだけだ。ランディは5度、スパーンとバーランダーも1度ずつ手にしている。けれども、他の3人と違い、バーランダーの2位は、3度とも僅差だった。2012年は4ポイント差(153-149)、2016年は5ポイント差(137-132)、2018年も15ポイント差(169-154)。3年前の開票後には、バーランダーの婚約者だったケイト・アップトン(現在は妻)が「ヘイ、MLB、ジャスティン・バーランダーにファックできるのは私だけと思ってたわ?! 2人の記者が彼に投票しなかったってどういうこと?」とツイートした。この時、バーランダーは14人の記者から1位に挙げられた。それに対し、受賞したリック・ポーセロ(ボストン・レッドソックス)を1位とした記者は8人だった。
その投票の詳細は「2人の記者がバーランダーに投票していれば、サイ・ヤング賞の行方は変わっていたのか」で書いた。また、昨年のアップトンの反応については、「日米で極端に違う、投手のMVP。日本プロ野球は受賞者の40%近くを占めるが、メジャーリーグでは」で触れている。
なお、シリングは3度のうち2度、チームメイトの後塵を拝した。ランディが受賞した、2001年と2002年がそうだ。今年のバーランダーとコールも、どちらが受賞するかはさておき、そうなる可能性がある。ア・リーグで防御率2点台は、彼らしかいない。
ランディとシリングを擁したアリゾナ・ダイヤモンドバックスは、2001年にワールドチャンピオンとなり――ニューヨーク・ヤンキースの4連覇を阻んだ――2人は、ワールドシリーズMVPをともに受賞した。
もっとも、その翌年、ダイヤモンドバックスはディビジョン・シリーズで敗退した。サイ・ヤング賞の投票で1位と2位がチームメイトは、他に2度。1956年にブルックリン・ドジャースのドン・ニューカムが初代のサイ・ヤング賞投手となった時、2位に入ったサル・マグリーは、5月にクリーブランド・インディアンズからドジャースへ移籍した。ニューカムとマグリーは、リーグMVPの投票でも1位と2位だった(当時、サイ・ヤング賞は両リーグで1名、MVPは各リーグ1名)。1974年は、ロサンゼルス・ドジャースのマイク・マーシャルとアンディ・メッサースミスが、サイ・ヤング賞の投票でトップ2を占めた。1956年も1974年も、ドジャースはワールドシリーズで敗れた。