なぜバルサはシャビを呼べないのか?ファティ、ガビ、ニコと台頭するカンテラーノと必要な「救済策」
バルセロナが、混沌の中に身を置いている。
リーガエスパニョーラ第11節でラージョ・バジェカーノに敗れ、ロナルド・クーマン監督が解任された。Bチームを率いていたセルジ・バルフアンが暫定監督を務める運びとなったが、ジョアン・ラポルタ会長は後任探しに奔走している。
バルセロナのトップターゲットはシャビ・エルナンデス監督だと目されている。元バルセロナの選手で、現在、カタールのアル・サッドで指揮を執っている人物だ。
「我々のテクニカル部門はベストの解決策を模索している。いくつかの選択肢がある。シャビは、その一つだ。だが、就任の時期を決めるのは、プレッシャーになりかねない。それでは交渉がうまくいかない可能性がある」とはスポーツ部門の副会長ラファ・ジュステのコメントだ。
「バルフアンはバルセロナ出身の監督だ。選手たちや4−3−3のシステムをよく理解している。チームを立て直すために、彼なりに処方箋を施してくれるはずだ」
■遅れた解任の決断
そもそも、クーマン前監督とラポルタ会長の信頼関係は非常に希薄だった。
「この夏、クーマンを解任する可能性があった。しかし、その時の状況は現在より難しいものだった」
これはラポルタ会長の言葉である。バルセロナの会長に再就任して迎えた初めての夏、彼はユリアン・ナーゲルスマン監督やジョゼップ・グアルディオラ監督の招聘に向けて動いていた。
だが、交渉は難航した。
またクラブの財政が圧迫されているという事情があった。13億5000万ユーロ(約1750億円)という巨額の負債。それに加え、70%以下に抑えなければならないサラリーキャップは今年5月の段階で110%に達していた。
その問題を解決するために、リオネル・メッシやアントワーヌ・グリーズマンを放出せざるを得なかった。1200万ユーロ(約14億円)というクーマン監督の違約金さえ、支払うのが難しかったのだ。
■カンテラーノと若手選手の台頭
今季、メッシがいなくなり、バルセロナは苦しんだ。
メンフィス・デパイ(フリートランスファー)、セルヒオ・アグエロ(フリートランスファー)、エリック・ガルシア(フリートランスファー)、ルーク・デ・ヨング(レンタル)…。この夏、獲得したのは移籍金ゼロの選手たちばかり。大型補強が敢行できなかったのは確かだ。
ただ、一方で、才能あるカンテラーノが出てきている。ガビ、ニコ・ゴンサレス、アレハンドロ・バルデ、オスカル・ミンゲサ、ロナウド・アラウホ、アンス・ファティ…。ここに、昨季ブレイクしたペドリ・ゴンサレスやセルジーニョ・デストといったヤングプレーヤーが加わる。タレントは、十分に揃っている。
2008年から2012年にかけて、バルセロナは黄金時代を謳歌した。
グアルディオラ監督の指揮下で、中枢を担ったのがシャビ、メッシ、アンドレス・イニエスタというカンテラーノだった。彼らだけではない。セルヒオ・ブスケッツ、ペドロ・ロドリゲス、ジェラール・ピケ、ビクトール・バルデス、カルレス・プジョールらがチームを支えていた。
2010年には、メッシ、シャビ、イニエスタがバロンドール(当時FIFAバロンドール)の最終候補に選ばれた。カンテラ上がりの3選手が、その授賞式で一枚の写真に収まるというのは、バルセロニスタの大きな誇りだった。
いま、その系譜を継ぐ流れで、シャビが監督として多くのカンテラーノで構成されたチームを率いようとしている。
「シャビはバルセロナで指揮を執る準備ができていると思う。クラブをよく知っており、それは重要な点だ。フットボールを理解していて、情熱がある。私がバルセロナのトップチームを率いるようになったときより、現在の彼の方が経験はある」とはグアルディオラ監督の弁だ。
ガビやペドリがシャビやイニエスタのように、ファティがメッシのように、プレーする。そして、バルセロナがタイトルを奪取するーー。それがバルセロニスタの願いだろう。無論、道は険しい。それでも、混沌の中で差し込んだ光を見失ってはならない。