前日までの予約必須「吉はし」さんの金沢愛と造詣の深さを映した職人技で、甘く贅沢なひと時を
日本で最もお菓子への支出額が多いといわれている石川県金沢市。和洋菓子問わず、度々メディアで目にするランキングでは常に上位にランクインしているイメージが強く、それは古より浸透している茶の湯文化が今もなお様々な形息づいているからではないでしょうか。
そんな金沢市の観光地の喧騒から一歩離れたエリアにて暖で簾を掲げる、創業昭和22年の和菓子屋「吉はし」さん。実はこちらのお店、羊羹やお干菓子は当日でも購入できるのですが、練り切りなどの上生菓子は前日までに予約必須のお店。なんでも、ご家族で全て運営なさっているため、良質なお菓子を提供するには限度があるとのこと。志の高さをうかがい知ることができます。
今回はご縁があり、普段都内では購入することができない吉はしさんの和菓子を、銀座のアンテナショップ「いしかわ百万石物語」にて購入することができましたのでご紹介。
ぱっと目を引く鮮やかな紅の「起上」。一見達磨のようにも見えますが、こちらは郷土玩具でもある加賀八幡起上りという人形より。白塗りの化粧を施したお顔を白い練り切りで、松や梅など和の模様が描かれた着物を召しているようなふっくらとした体は三色の金団を並べて表すというところが愛らしいですね。
練り切り餡の中にはしゃきっと皮の食感が大胆な京都丹波の大納言小豆を使用した粒餡が包まれているのですが、一度白い練り切り餡で粒餡を覆ってから赤い練り切り餡で形を整えるという色味にも配慮がなされた仕様があっぱれ。
淡い梅色に染まった「梅衣」は、本物の衣のように、木型で梅の模様を刻まれた練り切りでこし餡を包み込んだ、まさに衣を纏ったこし餡。キラリと煌めく金箔は、着物に織り込まれた金糸でしょうか。細やかな描写の草花が印象的な加賀友禅の着物が頭をよぎりました。
なめらかなこし餡は滋味深い味わい。すーっと舌から甘味や旨味が優しく染み込んでいくような柔和なこし餡。決して飲んでいるわけではないのに、喉を流れていくような感覚です。
さて、青々とした緑が広がるような「白山ことじ灯篭」が私の一番のお気に入り。兼六園を代表する景観のひとつとも言われる徽軫灯籠は、二股に分かれた土台が琴の糸が通る琴柱のようなので、(ことじ)と言われているという説があります。
霞ヶ池と徽軫灯籠、それらを縁取る空の青さと木々の緑が見事に表現された作品です。
中餡は、練り切り餡の甘味そっと舌から支えるような備中白小豆の粒餡。ねっとりとした練り切り餡の甘味を、白小豆特有のふんわりとした上品な風味がまろやかに仕立て上げてくれるよそ行き感にうっとり。
いずれも物腰柔らかな甘味の餡が、それぞれの魅力を優雅にアピールしてくるような味わいに感動。現地で購入したいと思うと同時に、兼六園の木々の息吹に癒されたいと思いを馳せてしまいました。
吉はしさんの上生菓子は前日までの予約制ですが、数量限定にて近隣の特定の飲食店や施設にてお召し上がりいただくことも可能となっております。
<吉はし>
石川県金沢市東山2-2-2
076-252-2634
平日・土曜 9時~17時
日曜 9時~11時
※こちらは限定の意匠となっております。
※上生菓子は前日までの予約制となっており、本店でのみ受け取り可能です。