やりすぎた? 韓国で2人の「反日闘士」が窮地に あの議員&言い過ぎ会長が追放の危機
この月末、奇しくも韓国で「反日闘士」ふたりが仲間内からのキツい締め付けに遭っている。
まずは「慰安婦問題」そして「幾多の疑惑」により日本でも知られる尹美香議員。
日本軍慰安婦被害者の生活の安定などを目的とする人道支援団体「正義連」トップを辞職し、2020年4月に国会議員に当選。しかし議員生活2年めの終盤を迎える現在、与党「共に民主党」の主導により国会議員職から追放される危機に瀕している。
今月25日に「共に民主党」代表から発表された「国会倫理特別委員会」での「刷新案」により、国会議員からの「除名」の勧告がなされたのだ。
すでに一連の疑惑により昨年8月に党から除名され無所属となっていた。さらに今回はかつて所属した党側から、「与党としての国会改革案」により議員職からも追放される可能性があるのだ。
- 保守系の「東亜日報」は今回の件を「議員除名の可能性は?」と報じる
尹議員は2020年6月、国会議員初当選後2ヶ月にして元慰安婦のイ・ヨンスさんの告発から「不当な正義連関連施設の不動産売買」「経費の不正利用」「横領」「夫の北朝鮮スパイ説」などじつに11の疑惑をかけられた。
【慰安婦運動内紛】横領、スパイ疑惑、家を5度購入...11の疑惑に答えた尹美香5.29会見のすべて。
これらのうち、国会内で一番大きな問題と捉えられたのは「不動産問題」だった。大統領選でも「庶民が家を買えない」という点が大きな争点となっているだけに敏感にならざるを得ないところか。
尹議員は元慰安婦たちが週末にゆっくり時間を過ごす「ヒーリングセンター」として買ったソウル郊外の物件を、購入時の価格より不当に安く売った、とされた。不自然であり、何か背後に動きがあるのではという疑惑をかけられてきたのだ。
2021年6月7日、この件が捜査対象となることが決定するや、翌8日に「共に民主党」から除名され、無所属議員となった。
その後、本人は国会での活動として「慰安婦や慰安婦団体を冒涜した際に罪に問える法案」や「外国人が韓国で職に就く際、雇用主は韓国語の能力を問うこと」を規定する法を国会で提議するなど活動していたが…
同年11月5日、党側による復党決定が議員たちの反対によって覆される出来事に見舞われた。不動産疑惑は結局「送検せず」となったことから党が発表したものだったが、同僚たちの同意を得られなかった。
そうしていたころ、冒頭の「刷新案」発表があった。党側は「迅速に処理する」といい、厳しい姿勢を見せている。
これに対し、本人はSNS上で「議員としてやれることをやる」と意思表示。また支持者や夫もSNS上で「21世紀の魔女裁判。他の不正を働いた議員の処分とセットにされた」「がんばろう」と記した。
- 今回、韓国与党による「刷新案」の対象になった3議員
ただこれは、対立する保守野党陣営にとっては格好の餌食でもある。
大統領候補の尹錫悦氏は25日にSNS上で「大統領選への影響を見越してのこと? 今さら?」と与党側を痛烈に批判した。
「尹美香と正義連の事態は、崩れた公正さと常識を蘇らせた。民主党政権では多くの出来事があったが、一番衝撃を与えた事件のうちのひとつが慰安婦被害者イ・ヨンスさんが問題提起された正義連の後援金疑惑流用問題だった」
メディアも手厳しく、対立する(国内左派がもっとも目の敵にする)「朝鮮日報」は26日の社説で「尹美香、イ・サンジク(議員)除名、選挙が不利な時だけ反省する」と痛烈に批判した。
ただし、実際に除名まで持ち込むには国会での議決が必要。国会議員の除名は本議会での3分の2以上の賛成がなければならない。
与党側の「刷新案」では、除名のターゲットとされる議員は3人おり、そのうちの一人は保守系野党「国民の力」系の議員だ。与党側の協力を経て「除名」に持ち込むまではひとヤマありそうだが…
尹議員にとっては古巣からのさらなるプレッシャーは、厳しい冬風といったところか。無所属となってなお、大統領選に向け「襟を正す」という動きの標的にされたのだから。
「親日家狩り」の先鋒は「横領の疑い」
もうひとりは「反日言い過ぎおじさん」。
「光復会」会長の金元雄(キム・ウォヌン)氏だ。
- 2021年「光復節」でのスピーチ時に
この方、日本ではあまり報じられないが、この人近年の韓国での「反日」の象徴的人物のひとり。もっと多く紹介されてもいいのではと思うくらいだ。
会長を務める「光復会」とは、日本統治下での抗日独立運動烈士の遺族会。遺族の補償など、権利を護るために1965年に設立された一般社団法人だ。
元国会議員の金氏は、2019年に第17代会長に就任。その後再任を続け現在は第21代の代表となっている。
会長就任後は、公共の場にふさわしくない政治的発言で物議を醸してきた。その”ジャンル”は、韓国内に多種多様な種類の反日感情があるうちのひとつ「親日家狩り」。
2年連続で8月15日の日本統治からの解放記念日「光復節」の国家公式式典スピーチの時間を与えられ、そこでの発言が問題視されているのだ。韓国内で。
言い過ぎ。大統領も出席し、世界に発信される韓国政府公式式典での発言なのだ。
2021年の発言内容に関しては、対立する保守系のメディアから「大統領官邸側の原稿チェックがあったのか、なかったのか」という点が問題提起された。本人は「事前に大統領官邸側から見せろと言われたが拒否している」と得意げ。
この式典には伝統的に光復会会長が招待されるのが慣例なのだという。まあ2020年に一度「過激発言」が出たのなら、少々すり合わせがあってもよさそうだが。文政権側も「黙認」といった面があるか。
強情過ぎる姿勢は、周囲の反発を買ってきた。
特に、仲間内のはずの会員たちから突き上げられている。これまでも「母親の独立運動活動歴が虚偽では?」といった疑いをかけられ、一時は反対派が事務所に乱入する事件も起き…。
- 反対派乱入事件を報じる「YTN」
今回、反対派から提起されたのは「会で運営するカフェの収益横領」。25日「朝鮮日報」系の「TV朝鮮」がスクープとして報じた。会は国会議事堂前の広場で屋外カフェを運営している。施設側は「良い事業だ」として賃貸料を受け取らずに運営されていたのだという。告発した光復会会員は同メディアにこう話した。
「本人が服を買ったり、髪を切ったり、あるいはマッサージを受けるために使われているのです」
総額は4500万ウォン(431万円)なのだという。
キム会長はメディアの厳しい突き上げに遭っている。国内最大の経済紙「毎日経済」が社説で「私有化、横領疑惑。非難の標的となったキム・ウォヌン光復会会長」と状況を批判。宿敵の保守系メディアではなく、”韓国の日経新聞”にまで言われてしまったとなると、危機感を感じたが、本人は光復会の支部会を招集。「経理が少しずさんになってしまっただけ」として団結を図ろうとしているが…
2人の活動は「既得権益層と戦う」というものでもあったが、結局は私腹を肥やした疑いにより、身内から窮地に追い込まれるという事態に。大統領選を約6週間後に控え、保守系からの格好のツッコミどころになっている。
「キム・ウォヌン、第2の尹美香…与党・政府も共犯」(28日の「朝鮮日報」)
-了-