滋賀に「超新星」現る! 名将に導かれ、近い将来甲子園へ!
近江のセンバツ準優勝で活気づく滋賀に、「超新星」が出現した。実質1、2年生だけの彦根総合(タイトル写真)だ。春の滋賀大会準々決勝で甲子園経験のある水口に4-3で逆転勝ちし、夏の滋賀大会のシード権を手にした。久しく近江の独走状態が続く中、かつて近江としのぎを削った名将が率いるだけに、今後、勢力図が一変する可能性もある。
甲子園6回出場の宮崎監督が率いる
彦根総合は元女子校の私学で、野球部は平成20(2008)年に誕生した。これまで目立った成績を収めたことはなかったが、一昨年、公立の雄・北大津を率い、春夏計6度の甲子園出場を果たした宮崎裕也監督(60)が就任すると、有望な新入生が29人も加わった。
昨夏は3年生(当時)の前主将の奮闘もあったが、栗東に初戦敗退。秋は近江と初戦で当たる不運もあって2-8で完敗した。しかしこの春は一気に開花。守山、膳所と甲子園経験校を連破して3回戦に進出すると、宮崎監督の母校でもある比叡山戦は、9回に2点差を追いつく粘りを発揮し、延長10回サヨナラで死闘にピリオドを打った。
継投機、代走起用など采配ズバリ
この春も27人の1年生が加わり、水口戦にも2選手がスタメン出場していた。ベンチの3年生はまとめ役の主将・高橋想成ただ一人。試合は左腕・野下陽祐(2年)が4回に勝ち越しを許し、5回にもスクイズで突き放される苦しい展開も、名将の継投策が見事に決まった。
救援した右腕速球派の武元駿希(2年)が四番打者を三振に抑えるなど、相手に傾きかけた流れを断ち切った。2点差を小刻みに挽回する彦根総合は、8回に代走の森亮太(2年)が盗塁を決め、犠打と犠飛で勝ち越す鮮やかな攻撃。武元は4四死球を与えただけで無安打に水口を抑え、接戦をモノにした。投手交代機、決勝点の代走起用ともベテラン監督ならではの見事な采配だった。
グラウンドの完成遅れ打撃は低調
初めて彦根総合の試合を見たが、かつての北大津のような強打よりも、投手を中心にした守りのチームという印象が強い。しかし宮崎監督は「打ち勝つ野球」をめざしていると言う。冬の大雪の影響で、甲子園仕様の専用グラウンドの完成が遅れ、夏の大会に間に合うかどうかのタイミングだそうで、「打ち込みが全然足りていない」とのこと。北大津時代は徹底したスイング練習で鍛え上げ、甲子園でも長打を連発したことを思えば、いくら下級生チームと言っても宮崎監督の理想からはほど遠い。それでも「2年生は足が使える。1年生は長打力のある選手が多い」(宮崎監督)チーム構成からすれば、持ち味は十分に発揮されていた。
近江の独走を止め、勢力図を一変させられるか
現在、滋賀は近江の「1強」状態で、かつてライバル関係にあった北大津は宮崎監督の異動後、低迷している。その宮崎監督が「高校野球の最後を」と新天地に乗り込んできた。それも近江のお膝元である彦根に。最近では北大津に代わり、滋賀学園や綾羽などが近江に迫るが、甲子園が懸かった試合ではことごとくはね返されている。それほどまでに近江の壁は高く分厚い。しかしこれだけ短期間(1年余)で強くなったチームは、少なくとも滋賀では記憶にない。さらにベテラン監督は、「練習量が足りていないことを考えればまだまだ伸びしろがある」と、十分な手ごたえを感じているから末恐ろしい。近江の壁を破り、湖国の勢力図が一変する日は、意外に近いかもしれない。