布袋寅泰、最強のレコード『Still Dreamin'』とライブ映像作品の世界に酔いしれたい
高らかに響き渡るビートとギター。芳醇なメロディーの煌めき。幕があがった瞬間、今までのすべてが報われた。世の中の不穏な空気に一筋の光を与えてくれたモダンなロックンロール。オープニングから最高だ。布袋寅泰は20枚目のアルバム作品『Still Dreamin'』、そして全国ツアー『HOTEI the LIVE 2022 “Still Dreamin’Tour』によって自らをアップデートした。光とサウンドが織りなす夢のステージ。圧巻のパフォーマンスとなった。そう、あの日の興奮が蘇る。
布袋寅泰が40周年をきっかけに取り組んだ2作品が、自身の61歳の誕生日である2023年2月1日に商品化される。この1年間の集大成だ。
まずは、2022年2月1日にリリースした20枚目のアルバム『Still Dreamin'』のアナログ・レコード(LP)化だ。思えば布袋は、1988年にリリースした1stアルバム『GUITARHYTHM』の頃からアナログ・レコードにもこだわり続けてきた。今回は、完全数量限定販売、2LP仕様としてリリースする。LP化で嬉しいのがジャケット・アートワークだ。本作のアートワークにおける写真は、フォトグラファー鋤田正義の手による作品だ。布袋が敬愛するデヴィッド・ボウイの傑作アルバム『Heroes』を撮影した世界的写真家であり、布袋がギターに興味を持ったきっかけとなったT.REX、マーク・ボランが恍惚な表情でギターを弾くポスターを撮影したレジェンドである。
アルバム『Still Dreamin'』とは、布袋寅泰の現在、過去、未来が交差する、現時点の布袋寅泰でしか成し得ないアルバム作品だ。歌心、ギタープレイ、サウンドプロダクトへのこだわり。大人のポップロックを感じられる1枚であり、いま存在するものを超えようとする意思を感じられた1枚だ。本作は、ライブメンバーから古田たかし(Drums)、井上富雄(Bass)、黒田晃年(Guitar)、岸利至(Programming)がレコーディングに参加し、現在進行形でありのままをさらけだしたフレッシュな作品となった。そんな意味では、ある種GUITARHYTHMシリーズを一旦終了させたアルバム『GUITARHYTHM IV』(1994年)を彷彿とさせる。時はめぐり、新たな物語の誕生の予感がしたのだ。
さらに、アルバムを引っ提げて開催した全国ツアー『HOTEI the LIVE 2022 “Still Dreamin’Tour』、2022年8月3日にLINE CUBE SHIBUYAで開催された内容を完全収録した映像作品『Still Dreamin’ Tour』も2023年2月1日にリリースする。布袋寅泰による40年間のロックヒストリーを総括し、さらに再構築したプレミアムなライブだ。
パンデミックの影響もあり、ひさしぶりのフル観客での全国ツアーとなった『HOTEI the LIVE 2022 “Still Dreamin’Tour』。オープニングは「Still Dreamin’」のイントロダクションである軽快なリズムとともに幕があがり、真っ赤なステージコスチュームの布袋が目にも鮮やかに飛び込んできた。世界のTAKEO KIKUCHIによるデザインだ。布袋のアクションはシルエットが映える。まさに、演奏スタイルに連動した美しい動きとシャープなシルエットを想定したフォルム。ロックかつエレガントな佇まいをダンディズムにまとい、布袋はオーディエンスの前に降り立った。
音楽とは不思議なもので、時代を予知したかのような瞬間に出会わせることがある。2曲目「RADIO! RADIO! RADIO!」で描かれた歌詞は、1991年当時、『GUITARHYTHM II』のレコーディングでロンドン滞在中に湾岸戦争が勃発したことに因んでいる。時を経て、ウクライナ情勢とシンクロするテーマと重なり、パンチラインとなるフレーズが耳に飛び込んできた。
“古びたラジオから流れるのは 笑えないニュース この空が何処かじゃ 赤く染まっているらしい 真夜中を抱きしめて 想い描くものは何? 少なくとも誰かのあげる悲鳴ではないはず”
そして、2017年にロンドンで生活する布袋が直面したテロ問題。「Pandemoniac Frustration」では、より明確に、いまの時代に通じる言葉を残している。
“泥沼化した内戦 断ち切れぬPain 眉顰めるUnited Nations 狂気の連鎖は 世界中に”
音楽を奏でるミュージシャンはシングルやアルバムでのレコーディングを通じて作品を完成させる。しかし、歳を重ね、経験を積むことで当時ではやれなかったことが解像度明瞭に表現できるようになる。そんな際、過去曲はライブにてさらなる進化を遂げることとなる。
バンドBOØWY、ユニットCOMPLEX、そして、これまでのツアーでやりきれなかったこと。そんな想いが、無観客で東京・日本武道館にて開催された『HOTEI 40th ANNIVERSARY Live “Message from Budokan” ~とどけ。Day 1 (Memories)~ / ~とどけ。Day 2 (Adventures)~』を経て、自ら生み出してきたロックヒストリーの名を刻んだ名曲たちを、最新曲も含め、いまのセンスで再構築、いや完成形を志したのが本公演の注目すべきポイントかもしれない。ゆえに、最新アルバム『Still Dreamin'』を軸としたツアーでありながらも、日本を代表する世界のロックスター布袋寅泰のすべてを体現するステージを完璧なまでに表現したライブとなった。
そう、パンデミックの影響で無観客公演となったあの日のリベンジであり、よりコンセプチュアルに布袋がやりたいロックンロール・エンタテインメントの“いま”を具現化した公演となったのが『Still Dreamin’ Tour』なのだ。
夢という言葉は不思議だ。夢を見つけられた人にとってそれは目標となる。しかし、夢はなかなか見つかるものではない。その言葉はときに呪いとなって人生の重荷となる人もいるかもしれない。
しかし、布袋寅泰は敢えて“夢”という言葉にこだわる。
叶うこと、それよりも夢を追いかけ続ける上で得られる成長、様々な気づきから違う夢への架け橋が生まれることもある。人は世界を変えることは出来ないかもしれない。他人を変えることも出来ないかもしれない。しかし、自分を変えることはできる。自らに課した、現状から一歩踏み出すための勇気。それを布袋は“夢”と呼んでいるのだろう。そんな願いにも近い想いを、ポップミュージックとして高らかに奏でていく。
こうして、稀代のロックスター布袋寅泰は40周年を経て、新たな表現へと立ち向かう。まずは、現時点での到達地点であるアナログ・レコード(LP)化されるアルバム『Still Dreamin'』と、ツアー映像作品『Still Dreamin’ Tour』を楽しんでほしい。あなたが必要としている気持ちに元気を与えてくれる作品だ。
布袋寅泰オフィシャルサイト