眞子さまと小室圭さんの結婚で皇族方が「小室家と親戚になりたくない」~「親族」による法的関係はこうなる
多くの国民が注目している眞子さまと小室圭さんの結婚の行方。そんな中、皇族方の間でもお二人が結婚することによる親戚関係について危惧する声があるという記事が掲載されました。
この記事によると、皇族方の中には、「小室さんとは親戚にはなりたくない」とお考えの方もいらっしゃるようです。このようなお考えは感情的なものと思われますが、では、実際にご結婚された場合、親族間において法的効果が発生するのでしょうか。今回は、結婚により発生する親族関係について見てみたいと思います。
結婚すると「姻族関係」が発生する
結婚をすると、一方の配偶者と他方の配偶者との血族との間に姻族関係が発生します。そして、三親等内の姻族は「親族」となります(民法725条3号)。
民法725条(親族の範囲)
次に掲げる者は、親族とする。
一 六親等内の血族
二 配偶者
三 三親等内の姻族
「三親等内の姻族」とはたとえば、次のような関係が該当します。
- 配偶者の父母や兄弟姉妹
- 配偶者の曽祖父母
- 配偶者の父母の兄弟
- 配偶者の兄弟の子
姻族になることによる法的効果
姻族になることによる法的効果はほとんどないと考えられていますが、民法上では次のような効果があると言われています。
1.「扶養義務」が課せられる
民法は、877条で「扶養義務者」を規定しています。
民法877条(扶養義務者)
1 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。
このように民法は、まず「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。」と定めています。
次に、「家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。」と定めています。したがって、「特別の事情があるとき」には、家庭裁判所の判断によって、姻族にも扶養義務が課せられることもありえます。
ただし、「直系血族及び兄弟姉妹」が扶養するのが原則なので、姻族が扶助義務を負うことはよほどのやむを得ない特別の事情がない限り認めるべきではないとされています。
2.「助け合い」の義務が発生する
民法は、「直系血族及び同居の親族は、互に扶(たす)け合わなければならない。」と定めています。
民法730条(親族間の扶け合い)
直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない。
上記のとおり、三親等内の姻族も親族ですので、三親等内の姻族が同居している場合には、「同居の親族」に該当することになります。
本条は、戦後の改正民法に際して設けられました。日本国憲法の施行に伴う家制度の廃止という急激な変化に対抗して、家制度的考え方の存続を望む勢力との妥協の産物として規定されたものと考えられています。また、法的な意義を持つものではなく、道徳的・倫理的な規定、いわゆる「訓示規定」にすぎないというのが通説であり、しかも、実際に適用された事例もほとんどないとされています。そのため、学説では早くから無用論、削除論が主張されています。
3.「婚姻障害」が発生する
民法735条は、「直系姻族の間では、婚姻をすることができない。」と定めています。そして、離婚等によって姻族関係が終了した場合も、同様とされています。たとえば、前妻の母親と再婚するなどということは認められません。
姻族関係はどのように終了するのか
姻族関係は、離婚によって終了します(民法728条1項)。
また、夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、姻族関係は終了します(民法728条2項)。
生存配偶者の意思表示とは、いわゆる「死後離婚」といわれているものです。具体的には、「姻族関係終了届」を役所の戸籍係に届けることにより行われます(「死後離婚」について詳しくは、「急増する「死後離婚」 5年で220%増!」をご覧ください)。
そして、姻族関係が終了した場合には、上述した扶養義務などは消滅することになります。
ただし、婚姻障害に関しては、上述のとおり、姻族関係が終了した場合にも、存続します。
以上ご覧いただいたように、婚姻障害を除き、姻族関係による民法の規定は、実際のところ適用されることはほとんどないと言っていいでしょう。
冒頭でご紹介した記事は前述のとおり、感情的な問題から出たものといえます。結婚すると親戚付合いで頭を悩ます方も大勢いらっしゃると思います。皇族の方々も同様のようですね。
以上参考『新注釈民法(17)』(二宮周平編集・有斐閣)