アマゾンがリアル書店をニューヨークにオープン【初日レポート】
シアトルで2015年スタートした、アマゾンのリアル書店「Amazon Books(アマゾンブックス)」が、5月25日(木)ニューヨークにもオープンした。同社はこれまで、数々の個人経営店を閉店に追い込んできた存在だとも言われているが、今度は自社の実店舗をオープンさせた形だ。
実店舗が満を持してNYにもオープンとあり、初日は多くの人で賑わった。私が訪れたのは夕方前だったが、まだ人々で溢れ返っていた。
決して広いとは言えない店内では、4スター以上の評価がついた新刊書3000タイトルが販売されている。リアル店ならではのユニークな仕掛けがされており、ここでいくつか紹介する。
陳列の仕掛けその1: わかりやすいジャンル分け
まずユニークだと思ったのは、店に入ってすぐ目の前にある「どんな人でも一番最初に視界に入る場所」に、陳列棚が置かれていること。そしてそこに置かれているのは、4.8スター以上の高評価の本のみ。要は入店早々、今の売れ筋が一目でわかるのだ。
本のカテゴライズとして、通常の書店のように「旅行」「美術」「料理」などといったジャンルに分けられているが、それに加え「アマゾンが選んだ、生涯で読むべき100冊」や「キンドルで3日以内に読めてしまう本」、「ギフトにぴったり」などというセクションもある。私のような、本屋に行くとめまいがし、購入する本をできるだけ早く決めたい人にはもってこいだ。
陳列の仕掛けその2: 表紙が必ず見える
次に気づくのは、本の置き方。基本的に通常の本屋では、一部のコーナーを除き、背表紙が見えるように置かれている。しかし同店では、表紙が必ず表になるように(客側に見えるように)置かれている。こうすることで、特にジャケ買い派の人にとって、手に取る最初の動機になるだろう。わかりやすくてありがたい陳列法だ。
話は少し飛ぶが、以前スーパーの視察で日本のクライアントを健康系スーパー「ホールフーズ」に連れて行ったことがあるが、そこでも食品のパッケージ(表)が客側に向けられて並べられ、それを見たクライアントが「日本ではあまり見ない陳列の仕方だ」と言っていたのを思い出した。
この親切かつアピール力がある陳列方式は、アメリカの小売店での流行りなのかも?
陳列の仕掛けその3: チョイスしやすい
本の下には必ずカスタマーレビューがついており、なぜこの本がおすすめなのかがわかりやすい。
また本によっては、「書店スタッフ〜〜のおすすめ」や、アマゾンのウェブサイトと同様に「この本が好きなら、これもおすすめ」という提案もある。
価格はスキャンかスマホのアプリで
アマゾン・プライム会員価格を含めて、書籍の価格は(1)店内にあるバーコードリーダーでスキャン、もしくは(2)アマゾンのアプリを使って、スマホで表紙を撮影、のどちらかで確認できる。
会計時は通常通りレジに行く。支払いはクレジットカードもしくはアマゾンのアプリで行えるが、現金は使えない。
スタッフはフレンドリーで親切
アメリカでは、ドラッグストアでも通常の本屋でも、スタッフに話しかけられることはほぼない。しかしアマゾンブックスではスタッフに「ようこそ」「何か質問ありませんか?」と笑顔でよく話しかけられ、質問にも快く答えてくれた。スタッフが積極的に顧客に話しかけ歓迎する販売スタイルは、アップルストアを思わせる。MacやiPhoneを購入する以外でも気軽に立ち寄りたいと思わせる店舗作りをしているアップル同様、アマゾンもおそらく、顧客が立ち寄ってアマゾンブランドに気軽に触れられる場所を目指しているのだろう。
このニューヨーク1号店に続き、夏ごろには2号店が同じマンハッタンの34丁目にオープンすることも決まっている。今後全米では、300〜400の実店舗をオープンする計画があるそうだ。
(All photos and text by Kasumi Abe) 無断転載禁止