小室哲哉ビルボードライブ、時空を超えて表現する夢のセットリストを世界配信へ
●魔法めいたシンセサイザーを操るタイムマシン感覚で時空を支配したコンサート
夢のようなライブパフォーマンスだった。2022年の“いま”なお、進化を感じられたステージ。会場や配信(30日までアーカイヴあり)で目撃したオーディエンスは、そう感じたはずだ。
昨年より音楽活動を再開した小室哲哉が、2022年1月にBillboard Live OSAKAとTOKYOで単独公演『Tetsuya Komuro 「HIT FACTORY #1」』を計8公演行った。セットリストは日々少しずつ改変、アップデートされ、最終日、1月23日、2回目の公演は集大成といえる圧巻のライブとなった。
公演タイトルは、かつて自身が提供曲をセルフカバーしたアルバム『Hit Factory』(1992年リリース)に由来するネーミング。まさに小室哲哉の独壇場、魔法めいたシンセサイザーを操るタイムマシン感覚で時空を支配したコンサートだった。
ステージには、スタインウェイのグランドピアノに加え、自身のシグネチャーである要塞のごとくシンセサイザーに囲まれたキーボード・ブース(YAMAHA・MONTAGE、Roland・JD-08、moog ONE、Virus TI POLAR、Indigo Redbackが並ぶ)へ、白いシャツ姿でひとりで立ち、1980年代から2020年代まで、これまでの総作曲数1,600曲以上の中から選りすぐりのセットリストを披露していく。
オープニングはフリープレイから、デジタルオーケストラ「NOW1」(2013)へ。
複数のシンセサイザーを駆使する素晴らしき演奏に、鳴り響く拍手。そして語られる本日最初のMC。
「こんばんは、どうもありがとう。金,土,日曜日の3日間、六本木で6公演やりました。次の曲は、みなさんが使っているLINEがゲームを作りまして、音楽を僕が全部担当したんですけど、そのときのテーマ曲です。なかなかライブでやる場がなかったので、聴いてください。」
ゲーム主題歌として書き下ろした名作「Guardian」(2018年)を、荘厳かつクラシカルな雰囲気のなか、シンセサイザーをリアルタイムに使い分け、ピアノやシーケンスを駆使した“TKらしい”アプローチで構築していく。
「ありがとうございます。次の曲は、何年か前になにも知らないで映画を観ていたんです。“セカチュー”というやつです。映画『世界の中心で、愛をさけぶ』の、グッとくるシーンで、あれ、これ僕の作った曲じゃないかなって(笑)。
渡辺美里さんへ、何十年も前に提供した曲で。僕がセルフカバーでも歌った曲で。ほとんど僕って歌わないんですけど、今回、ちょっと何曲か歌ってみようかと。」
語り継ぐべきTK名曲と名高い「Kimi ni Aete(きみに会えて)」(1992年)は、小室自身の歌声で披露されたことに涙腺が潤んだファンは多かったのではないだろうか。渡辺美里に提供した原曲は1985年にリリースされている。さらに、セットリストは『マドモアゼル モーツァルト』へと続いていく。
「(昨年)11月、ビルボード東京でひさしぶりにライブをやらせていただきましたけど、その頃に(楽曲を手がけた)『マドモアゼル モーツァルト』のミュージカル(1991年に行われた演目の再演)を観たので、モーツァルトがいいなとやったんですけど。1月にビルボード大阪に行って、同じセットリストでやったんです。
その時は『永遠と名づけてデイドリーム』というミュージカルでやってたボーカル曲があって、僕はずいぶん前から時折この曲を歌っていたんです。東京でこの間、自信がなくて歌えなかったんで。大阪で練習させていただきまして(苦笑)。まあ、いいんじゃないかってことで東京でもやってみようと。歌は最後に出てきます。」
●記憶と記録に残る楽曲を、自身の歌声によって懸命に大切に魂を込めていく
「組曲マドモアゼル モーツァルト」(1991年)では、ピアノメドレーとして美しくも流麗なメロディーを奏で、そして「永遠と名づけてデイドリーム」(1991年)では、何度聴いても脚本家として名高い坂元裕二による歌詞フレーズ“いつか僕が 泳ぎ疲れて この海に沈む時は どうか僕の 刻んだ調べを 永遠と名づけて”の言葉が、小室自身の歌声とともに胸に響く。
しかしながら、小室哲哉は本来ボーカリストではない。
だが、音楽家としてたくさんの作品を世に生み出してきた。そんな記憶と記録に残る楽曲を、自身の歌声によって懸命に大切に魂を込めていく。音楽という形なき時間芸術がどのようにして生まれ、そしてリスナーの元へ旅立っていくのか。そんな様を目撃しているかのような感動的なワンシーンだ。
「TM NETWORKのライブに来たことがある人? 会場の皆さんは何回もあると思うんですけど。必ず、キーボードソロがあって。キーボードソロは、メンバーに休憩してもらう時間で(苦笑)。なんか『てっちゃん、やっといてよ!』って感じではじまったんですけど(苦笑)。
それがだんだん毎回普通になって、TK SOLOコーナーになって。いろいろな曲を取り入れながらやっていて。この間、TM NETWORKの配信でもTK SOLOをやっていて、今日はその感じを味わっていただこうかなと思っています。」
その選曲がすごかった。80年代初頭、世界へ誇るジャパニーズ・アニメーション文化の走りでもあった映画『吸血鬼ハンター"D"』から、TMN期の“20世紀最後のカウントダウンの緊張感”を表現した「TIME TO COUNTDOWN」(1990年)へ。さらに驚きの展開が続くなか、時代を超えて鍵盤で繰り広げていくメドレーとしてメロディーを紡いでいく。
そう、小室哲哉は音楽で文化を作った。
当日、楽曲を耳にしたリスナーは、奏でられたフレーズを耳にしたことでたくさんの記憶=映像が浮かんできたことだろう。イマジネーションは人それぞれに拡張していく。音楽が人生に寄り添ったアート表現であることの証明だ。
「ビルボード東京ならではの(1日2公演で3日間)6回目のライブなので。僕のアルバムで、『Magic』という曲があるんですけど、夏の曲なんですけど雰囲気があっているので歌ってみようかと。」
ここで、思いがけないレアなナンバーが登場した。アルバム『Hit Factory』に書き下ろした「Magic」(1992年)だ。井上陽水による“帰れない二人”のフレーズ・インスパイアもあり、ウェザー・リポート、チック・コリア、ボブ・ジェームスが得意とするクロスオーバーをポップに再構成したナンバーだ。
海岸通り沿いを闊歩するような、太陽の光を感じる明るい雰囲気を持つメロディアスなポップソング。外出や、旅をしづらいパンデミック下の“いま”であるからこそ、より胸に響いたナンバーだろう。ライブ終盤へ向けて、コロナ禍で“声を上げられない”オーディエンスの熱い想いは、没入感高い視線にあらわれていく。
「金曜日の第一部かな、“CAROL組曲”をやるか、自分の中で思いついたメロディーを弾くか、どっちがいいですか?って聞いたんです。結局、両方やったんですけど(笑)。
今日は、もう一度、TM NETWORKの“CAROL組曲”をやらせてもらって、その後は頭に浮かんだ曲を弾こうかなと思います。」
TM NETWORKを代表するコンセプトアルバム『CAROL 〜A DAY IN A GIRL'S LIFE 1991〜』(1988年リリース)から、「A Day In The Girl's Life (永遠の一瞬)〜Carol (Carol's Theme I)〜Just One Victory (たったひとつの勝利)」(1998年)。続いてglobeの「SHIFT(2005年)」、「Many Classic Moments(2002年)」、安室奈美恵の「CAN YOU CELEBRATE?」(1997年)、そしてH Jungle with t「WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント」(1995年)、globeデビュー曲「Feel Like dance」(1995年)という、まさにTM NETWORKから、小室ファミリーと呼ばれ、90年代を一世風靡した大ヒット曲が、2022年の“いま”、まったく古びる事なく、TKらしいダンサブルなポップナンバーがリアルタイムに鳴り響いていく。
●即興性高い、今日しか聴けないライブパフォーマンス
鳴り止まないアンコール、大きな拍手に迎えられ再登場した小室哲哉。
「1月からこんなにライブをひとりでやると思ってなかったんですけど、ありがとうございます。(今回の公演は自分で)、3曲ずつぐらい歌ったんで、もう1曲ぐらい歌ってみようかなと。ピアノで作った『女神』という曲を聴いてください。」
なんと、globeの「女神」(2002年)を自身による歌唱で披露。レア曲だが、コロナ禍である現在の状況にぴったりとハマる1曲だ。
本公演は、歌詞にあらわれる“記憶のアルバム”を表現した大切な時間となった。まさに40年に渡る、小室哲哉自身のディスコグラフィー&クロニクルを時空を超えて表現する、夢のセットリストを堪能できたスペシャルなライブであり、その余韻は長く長く心に響き続けた。
「どうもありがとう。ライブはいいですよね。配信で観られている方ももちろん、さっき観たけど結構きれいに撮れてましたけれども。ぜひ、配信でも観て欲しいですね。
そして、この『HIT FACTORY #1』の追加公演がさっき決まりました(苦笑)。
2月はTM NETWORKの配信ライブがあるので、3月の17,18日にBillboard Live YOKOHAMAでやらせていただきますので。また、その時に会いましょう。ありがとう!」
キーボードの要塞から去っていく小室哲哉。名残惜しく拍手を続けるオーディエンス。即興性高い、今日しか聴けないライブパフォーマンスを体感できた1日となった。なお、本公演の配信は1月23日 2ndステージ目の模様が、日本国内はStreaming+、海外はZAIKOで1月30日(日)23時59分までアーカイヴされる。
さらに、当日の勢いで、3月17日(木),18日(金)にはBillboard Live YOKOHAMAにて『Tetsuya Komuro 「HIT FACTORY #1」』追加公演が決定した。詳細は、追って伝えられるという。音楽という神様に見初められたミュージシャン小室哲哉。復活した“いま”こそ、彼の才能に改めて注目すべきだ。
※ライブ写真は1月22日のもの(撮影はFANKSにはお馴染み、ベーあんこと阿部薫さん)。
<セットリスト>
【Tetsuya Komuro 「HIT FACTORY #1」 ONLINE SHOW from Billboard Live】
2022年1月23日
Free Play
NOW1
-MC-
Guardian
-MC-
きみに会えて(Vo)
-MC-
組曲マドモアゼル モーツァルト
永遠と名づけてデイドリーム(Vo)
-MC-
TK SOLO(※配信アーカイヴで注目!)
-MC-
Magic(Vo)
-MC-
A Day In The Girl's Life (永遠の一瞬)〜Carol (Carol's Theme I)」〜Just One Victory (たったひとつの勝利)〜SHIFT〜Many Classic Moments〜CAN YOU CELEBRATE?〜WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント〜Feel Like dance
-アンコール-
女神(Vo)
<配信情報>
【Tetsuya Komuro 「HIT FACTORY #1」 ONLINE SHOW from Billboard Live】
2022年1月23日(日)19:30~
●オンライン視聴料:3,500円(tax in.)
販売期間:~1月30日(日)21:00
視聴可能期間:~1月30日(日)23:59まで
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