なぜルカクはインテルに移籍したのか?ネイマール、エムバペ、ベイル...“140億円超”の移籍金と重圧
わずか1シーズンで、復帰が決定した。
ロメル・ルカクは今夏、チェルシーからインテルに移籍している。昨年夏、移籍金1億1300万ユーロ(約158億円)でチェルシーに加入したルカクだが、1年レンタルという形でインテル復帰が決まっている。
高額な移籍金は、リスクを伴うものだ。
少し時を遡る。2013年夏、レアル・マドリーがトッテナムからガレス・ベイルを獲得した。エースのクリスティアーノ・ロナウドへの配慮で公表は控えられたものの、移籍金は1億100万ユーロ(約141億円)で、当時史上最高額だった。
ベイル、カリム・ベンゼマ、C・ロナウドの「BBC」はマドリディスタの期待値を大いに高めた。ベイルが在籍した期間、マドリーはチャンピオンズリーグで5回優勝している。ベイル自身は、258試合に出場して106得点67アシストを記録した。負傷が多く、最後まで評価が難しい選手だった。
マドリーはこの夏にベイルを契約満了に伴い放出している。2013年から2022年までの間で、マドリーは5回のビッグイヤー獲得を含め、16個のタイトルを獲得した。
■ネイマールの移籍
ベイルの移籍で「1億ユーロ」の壁は壊された。以降、移籍金の高騰がはじまる。決定打になったのは、ネイマールのパリ・サンジェルマン移籍である。
パリSGは2017年夏に契約解除金2億2200万ユーロ(約308億円)を支払い、バルセロナからネイマールを獲得した。すでにカタールがバックにつく「国家クラブ」となっていたパリSGは同時期にキリアン・エムバペの獲得を決め、彼の保有権を有するために2018年夏に移籍金1億8000万ユーロ(約252億円)を支払った。
マーケットは、そこで完全に破壊されたと言えるだろう。
ウスマン・デンベレ(バルセロナ/移籍金1億4000万ユーロ)、フィリップ・コウチーニョ(バルセロナ/移籍金1億3500万ユーロ)、ジョアン・フェリックス(アトレティコ・マドリー/移籍金1億2700万ユーロ)、アントワーヌ・グリーズマン(バルセロナ/契約解除金1億2000万ユーロ)、ジャック・グリーリッシュ(マンチェスター・シティ/移籍金1億1750万ユーロ)、クリスティアーノ・ロナウド(ユヴェントス/1億1700万ユーロ)、エデン・アザール(マドリー/1億1500万ユーロ)…。ビッグディールが次々に実現した。
2016年夏のポール・ポグバ(マンチェスター・ユナイテッド/1億500万ユーロ)を除き、1億ユーロ超の移籍は2017年夏以降に起きている。
ただ、高額な移籍金には、ある種の危険性がある。「クラブ史上最高額の移籍で、彼の肩には重圧が乗っかっている」とコウチーニョのバルセロナ移籍の際に語ったのはリバウドだ。
「スペインのフットボールは、コウチーニョにとって、プレミアリーグよりプレーしやすいだろう。ハイテンポなゲームには慣れている。それは適応の助けになるはずだ。チームが勝っているときに移籍する方がベターで、そういう移籍は選手のプレッシャーを軽減してくれるとは思うけれどね」
ルカクは2021−22シーズン、チェルシーで44試合に出場して15得点をマークした。しかしながら「システムが合わない」とルカク本人が明かしていたように、トーマス・トゥヘル監督の戦術にフィットしていなかった。
ルカクはインテルで、20−21シーズン(30得点)、19−20シーズン(34得点)とゴールを量産した。ラウタロ・マルティネスとのコンビネーションは抜群で、万能型のストライカーとして爆発していた。
インテルはルカクのレンタル料として800万ユーロ(約11億円)を支払う。ルカクに与えられる背番号は90番だ。ベルギー代表として臨むカタール・ワールドカップを見据え、ルカクはイタリアで再起を図る。