通信障害時に「副回線」 KDDIがデュアルSIMサービスを開始
3月27日、KDDIが通信障害や災害時などを想定した「副回線サービス」を発表しました。3月29日から提供開始します。
このサービスを申し込んでおくと、KDDIで障害が発生してもソフトバンクの回線でスマホを使えるようになります。どのような仕組みなのかKDDIに聞いてみたので、注意点とあわせて解説します。
副回線サービスとは?
2022年7月にKDDIで発生した大規模通信障害を受け、緊急時でも通信手段を確保する動きが進んでいます。
それ以前にも大きな通信障害は何度も起きていますが、スマホの社会的役割が高まっていることを背景に、事業者間の協調が求められるようなってきたといえます。
その中でKDDIが発表した副回線サービスは、同じ電話番号のまま他社に乗り入れる「ローミング」ではなく、ソフトバンクで使えるeSIMやSIMカードと電話番号を追加で発行する仕組みを採用しています。
追記:
KDDIの発表後、ソフトバンクも同様のサービスを発表。KDDIよりやや遅れて4月12日に提供開始となるほか、細かな仕様が異なるようです。
個人向けプランの月額基本使用料は税込429円、国内の音声通話料金は30秒22円(税込)、データ容量は月間500MBで、通信速度は送受信最大300kbpsとなっています。ほかに法人向けプランもあります。
通信速度を制限している理由としては、ソフトバンクの通信設備への負荷を考慮しているとのことです。限定的な速度ではありますが、KDDIは用途としては家族や勤務先、病院などとの連絡、買い物や決済、行政などのアプリ利用を挙げています。
実際の使い方として、主回線から副回線への切り替えは「手動」です。デュアルSIMに対応したスマホの場合、設定画面には2枚のSIMカードのどちらを音声に、どちらをデータ通信に使うか選ぶ機能があります。
大きな注意点としては、副回線を使った後、主回線に手動で戻す必要があります。これを忘れると、音声通話は従量制料金のまま、データ通信は低速のままとなる可能性があります。
通信障害の復旧後などに、副回線に戻すことを促すメッセージなどは送られてくるのでしょうか。KDDIによれば、「お客さまへはサービスページなどで注意喚起を行ってまいります。通信障害からの復旧後など個別のケースでのお知らせ方法については、個別に検討予定です」(広報部)とのことです。
副回線サービスの申し込みはオンラインまたは電話窓口(お客さまセンター)となっており、店頭ではこれらの申し込み方法の案内のみをする予定としています。
ただ、設定や使い方の案内はauショップで全部やってほしいというニーズもありそうです。この点についてKDDIは、「対応時期は未定ですが、ショップでの対応も準備を進めています」(広報部)としています。
実際の利用シーンを想像してみると、主回線と同じ電話番号で使えないというのはやはり不便がありそうです。こちらから電話をかけることはできても、電話を受けるには相手に副回線の番号を伝えておく必要があるからです。
KDDIによれば、「1つの番号で副回線サービスを提供することが現時点で技術的に困難なため、まずは2つの番号によるサービスとして提供開始いたしました」(広報部)とのこと。
総務省や各キャリア間で議論が進んでいる事業者間ローミングについては、「通信障害時などの対応として検討を続けてまいります」(広報部)としています。
ただ、ローミングの場合、通信障害時などに多数のユーザーが一斉に他のキャリアになだれ込む形になり、そのキャリアにも障害が発生するのではないかと懸念されています。
そういう意味では、副回線サービスは申し込んだ人だけが利用するオプションサービスなので、発生する負荷は限定的といえそうです。
MVNOも選択肢になるか
月額基本料0円で維持できる通信サービスとしては「povo2.0」があるものの、これはKDDIと同じ回線を利用しています。auやUQ mobileなど主回線がKDDIの人にとっては、通信障害の対策にはならないでしょう。
他のキャリア回線を持つには、現状では何らかの方法で他のキャリアと契約する必要があります。そのためには、MVNOも選択肢の1つになるでしょう。
たとえばmineoの場合、3キャリアのうち1社の回線を月額税込250円から利用できる「マイそくスーパーライト」を提供しており、通信障害などに備えたバックアップ回線を安価に持てるようになっています。
一方、KDDIの副回線サービスは、他の事業者と新たに契約を結ぶことなく、KDDIのオプションとしてワンストップで申し込めることがメリットといえそうです。