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「俺は咬ませ犬じゃねえ!」37歳の日本7位が日本タイトルに挑戦

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
撮影:筆者

 日本スーパーライト級7位、関根翔馬(37歳)。来る12月12日に同級王者、藤田炎村(三迫)に挑む。11勝(9KO)1敗の日本チャンプにとっては2度目の防衛戦だ。

 関根は言う。

 「向こうは間違いなく僕を咬ませ犬だと思っているでしょうね。でも、思い知らせてやりますよ。勝つ自信はあります」

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 19歳でワタナベジムに入門してから苦節18年。今年の3月26日に37歳となった関根は、ボクサーとしての定年を迎える筈だった。が、2022年12月2日に元ドミニカ共和国王者のデスティノ・ジャパンに判定勝ちして日本ランカーとなる。

 「デスティノが所属するジムの興行で、僕はほぼ咬ませ犬みたいな扱いでした。でも結構、自分のボクシングが出来ましたね。ゴングが鳴ってから直ぐに頭を付けて、得意としているインファイトで打ち合いました。正直、『これが最後なんだ』っていう思いでしたよ。

 今年の6月にルールが改正となるまで、ノーランカーだと37歳で引退しなければならなかったんです。毎日ジムに行く度に『今日の練習が最後かな』という思いでやっていました」

 悔いの残らないように戦おう、と自らに言い聞かせてデスティノと対峙し、金星を挙げたのだ。

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 「2-1の判定でランキング入りを果たしたんですが、やっぱり強い相手でしたし、自分が一皮剥けたなという実感があります」

 目下の戦績は5勝(2KO)7敗2分。

 「僕は22歳の時にプロテストに合格したんですが、仕事との両立が上手くいかなかったりで、デビューまでに時間を要しました。24歳の12月14日にようやく初めてプロのリングに上がったんです。引き分けでした。

 コツコツやって来たからこそ、タイトル挑戦に結び付いたのでしょう。ランキングに入って、次の試合が日本タイトルになるなんて予想もしていませんでした。もう1~2試合勝たないと届かないって考えていましたから」

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 渡辺均・ワタナベジム会長も語る。

 「翔馬は叩き上げの選手です。ウチのジムからは、こういう選手が下馬評を覆してチャンピオンになったケースが幾つもあります。今、彼は燃えているし、ベルトを獲らせてやりたいです。今日のワタナベジムで最も古株です。私自身、世界タイトルマッチとは別の、強い思い入れを持っています」

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 2019年から関根を担当する町田主計トレーナーも話した。

 「我がジムで最年長の現役選手ですが、先輩風を吹かせることもなく、むしろ腰を低く後輩たちと接していますね。彼の持ち味である接近戦を制して、勝たせてやりたいです」

撮影:筆者
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 関根も言葉を繋げた。

 「チャンスを作ってくれた会長の思いに応えたいです。藤田選手が日本チャンピオンになった試合は後楽園ホールで見ました。気持ちもパンチも強いですよね。華もあります。攻撃的な選手だなという印象です。

 早稲田大学に頭で合格して、一流企業に勤めていると聞いています。本人はどう感じているか分かりませんが、僕とは対照的ですよね。自分のボクシングに持ち込んで、崩したいです」

撮影:筆者
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 関根は結んだ。

 「藤田選手も三迫ジムも、僕を咬ませ犬と感じているでしょう。でも、思い出を作るだけのタイトルマッチにするつもりは毛頭ありません。37歳でもできるんだ!っていうところを見せたいです。ボクシング人生の集大成として、結果を出したいですね。そして、自分が育ったジムにも恩返しがしたいです。

 おそらく当日の後楽園ホールは、チャンピオンのファンばかりでしょう。でも、『こんな選手がいたんだな』と感じさせる戦いをしてみせます。もちろん勝ちますよ!」

 12月12日、関根翔馬はボクシング人生を懸けてリングに上がる。どんなファイトを披露するか。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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