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伝統の早慶戦のキーマン。早稲田大学・齋藤直人は「持ちすぎない」。【ラグビー旬な一問一答】

向風見也ラグビーライター
去年の早慶戦でも勝利。(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 日本ラグビー界有数となる伝統の一戦、早稲田大学と慶應義塾大学との早慶戦が、11月23日、東京・秩父宮ラグビー場でおこなわれる。

 関東大学対抗戦Aのいち公式戦でもある早慶戦は、両軍のOBなど普段のラグビーの試合には訪れない層のファンを集める人気カード。1922年から計93試合(大学選手権などでの対戦は除く)が組まれており、一部の例外を除けば11月23日の文化の日に開催されるのも毎年恒例となっている。

 異質な空間は今季も担保されそうだが、両軍とも将来の日本ラグビー界を支えうるタレントも先発させる。その1人が早稲田大学の2年生、齋藤直人だ。

 攻撃の起点となるスクラムハーフを務め、パス、キックは飛距離も精度も折り紙付き。接点から球を持ち出してのランも冴えるとあり、同じ桐蔭学園高校出身の山下大悟監督は昨季から齋藤を先発に固定。栄養士の食事指導にも真摯に取り組むストイックさでも知られ、君島良夫キッキングコーチの指導でプレースキックの精度も高めている。

 高校時代から20歳以下日本代表に加わってきた当の本人は、自身が高く評価される傾向には首を傾げがち。もっともスキルや戦術について問われれば、内なる感性を具体的な言葉で表現する。

 11月14日、山下監督の古巣でもあるサントリーへチームで出稽古に出かけた折、その感想などを明かしている。

 

 以下、練習後の単独取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。

――サントリーでは実戦形式のセッションをおこないました。

「ブレイクダウン(ボール争奪局面)でのプレッシャーも強く、勉強になりました。先週も(一部選手のみで)ここへ来ていて、色々な練習方法など、学びの機会をいただいています」

――全体練習後は、サントリーの小野晃征選手(2015年のワールドカップイングランド大会で日本代表のスタンドオフを務めた)による個別メニューにも取り組みました。

「(内容は)スタンドオフのボールのもらい方について。投げ手(スクラムハーフ)も重要だということで」

 指導にあたった小野や見学した山下監督の談話などを総合すると、このセッションの狙いは司令塔団の各種プレーごとの位置関係の確認。早慶戦当日に向け、齋藤とスタンドオフの岸岡智樹とのコンビネーションはより高質化するか。

――地面の球を拾ってから投げるまでが速い印象です。そして、その小さなモーションにあってボールの飛距離が出ています。

「(球を極端に)持ち上げないことを、意識しています。スタンドオフに(パスをもらって次の動作に移るまでの)余裕を持たせたいので。自分のところで(長く)持っちゃうと、その分、(パスをもらうスタンドオフは)プレッシャーもかかると思う。その辺が、いま、課題です。サインが出たり、そこがゴール前だったりと、(球を持って)仕掛けることもあるとは思います。ただ、基本は持ち上げない」

――プレースキックについては。

「最近、調子いいです。1試合に1本くらいは外すというジンクスがあるので、そこは何とかしたいですが」

――いつでも一定の動作を貫くのが肝。

「はい、そこは意識しています」

――いろいろな方から、真面目だと伺います。例えば、栄養管理。

「身体づくりは、中野くん(将伍、同学年の大型インサイドセンター)に刺激されてがんばっています。(体重は)去年よりだいぶ、絞れて、無駄な脂肪も減ったかなと。だいぶ、走りやすいです。去年のマックスの時より4キロぐらい(減った)。練習後のウェイトトレーニング前にエネルギーを入れたりと、少し気を遣ってやっています」

 現在の公式記録上は身長165センチ、体重75キロ。サイズ以上の存在感を、満員のグラウンドで。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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