レノファ山口:「維新劇場」再演、9試合ぶり勝利。望月嶺臣が逆転弾
明治安田生命J2リーグ第36節の11試合が16日、各地で行われた。リーグ戦は8試合にわたって白星を掴めないでいたレノファ山口FCは維新百年記念公園陸上競技場(山口市)で徳島ヴォルティスと対戦。先制点を許したが後半の2ゴールで逆転し、第27節FC町田ゼルビア戦以来、約2カ月ぶりの勝ち点3を掴んだ。
明治安田生命J2第36節◇山口2-1徳島【得点者】前半12分=広瀬陸斗(徳島)、後半31分=三幸秀稔(山口)、同49分=望月嶺臣(山口)【入場者数】4008人【会場】維新百年記念公園陸上競技場
岸田和人、12試合ぶりの先発
ゲームの流れを最初に引き寄せたのは徳島だった。前掛かりのディフェンスでレノファの推進力を弱めると同時に、ミスを誘って高い位置で奪うことにも成功。早い時間からカルリーニョス、大崎淳矢と立て続けにシュートを放つ。前半12分には相手陣内でボールを繋ぐと、広瀬陸斗が角度の浅いところから先制の一撃。レノファはDF星雄次が付いていたがシュートを限定できず、手痛い先制点を献上した。
レノファは12試合ぶりにFW岸田和人を先発出場させる。裏に抜け出る動きを得意とする岸田の特長を生かせれば複数得点も呼び込めたが、徳島も人数を割いて岸田の動きを制限。また、岸田のプレーを知り尽くすMF福満隆貴やMF島屋八徳が守備に引っ張られたことも災いし、岸田を生かした決定機をなかなか作れなかった。前半32分には徳島にビッグチャンス。長いボールに抜け出た佐藤晃大がGK村上昌謙のブロックを受けながらもループシュートを放ち、ゴールに肉薄。ボールは枠を捉えるものの、レノファも北谷史孝がギリギリのところで間に合ってクリアし、辛くもこのピンチを逃れた。
転機はハーフタイム。志の再注入
0-1で迎えたハーフタイム。上野展裕監督は「精一杯の姿を応援してくださる人たちやサポーターに見せよう。まだまだ前半はそういう姿を見せられていない」と話し、レノファ魂を再注入する。また、後半の早い時間からMF望月嶺臣とFW中山仁斗を投入。中山は岸田とはタイプが異なり前線で溜めが作れることから、レノファはMF庄司悦大という絶対的な攻撃の起点に加えて、前線にも中山という攻撃ベースを築き、いっそうボールを回すことに重点を置いた。
時間の経過とともに高い位置でパスを回す時間が長くなり、シュートも増加。後半22分に望月、同27分には福満がシュートを放ってゴールを脅かす。そして同31分。相手のクリアボールを三幸がカットして福満と繋ぐと、混戦の中から再び三幸が左足を振り抜き同点ゴール。三幸は13日の練習中に鼻を負傷し、この日の試合では前半に頭部を打って出血と満身創痍の状態だったが、チャンスあらばゴールを狙うという意欲は落ちていなかった。
維新公園の応援のボリュームも最高潮に達し、同点に終わらせない雰囲気を作り上げる。最後の交代カードとして安藤由翔を起用し、その安藤もまた得意とするドリブルや駆け引きでレノファに傾いた流れをさらに引き込んでいく。
決勝点が生まれたのはレノファ時間とも言えるアディショナルタイムだった。中山がペナルティエリア内でキープしたボールから、望月が値千金の逆転左足弾。「前に入っていこうと思っていた」という意識で臨んだ望月は、「マサトくん(中山)がキープしてくれていたのでイメージ通り」と迷わずシュート。相手DFに当たってゴールネットを揺らし、自身のJリーグ初ゴールと9試合ぶりの白星を呼び込んだ。
酔える維新劇場。可能性も無限
レノファは勝ち点を48とした。6位の京都サンガF.C.も勝ったためプレーオフ圏内との勝ち点差は11のままだが、未勝利の長いトンネルは抜け出せた。上野展裕監督は「(今季の)初めは上位にいたのがどんどん下がってきて、悔しい思いは選手たちも持っている。もう一度奮い立たせてやりきる。そういう気持ちが逆転に繋がった」と振り返り、ゲームキャプテンの島屋八徳は「今日の勝利をきっかけにチームの調子も上がっていけばいい。これをきっかけにプレーオフに入っていきたい」と話す。
勝ち点3という結果を優先して目指した試合ながら、内容面でも一定の収獲はあった。
リズム良くボールを繋ぐサッカーは健在であったし、試合途中からはシュートへの意識も強くなった。後半30分を過ぎてからのゴールは維新公園を「維新劇場」として大いに盛り上げ、それはサポーターの拡大にも結びつくことだろう。一方で先制点を許す試合が続いていることや、前半は岸田を生かせず攻撃の噛み合わない時間帯があるなど依然としてクリアすべき難題も残る。レノファが勝ち続けるには攻撃の多様性も不可欠で、軸とするスタイルを持ちつつ、出場する選手に合わせて多彩なサッカーを表現できるようになれば奥行きも広がる。
残り6試合にはなったが、上位進出を狙える位置にあることはもとより、選手個人の成長だったり、チームとしての戦術の成熟であったり――あらゆる可能性、まだ見ぬ余白を秘めて最終盤を迎えられるのは幸せなことだ。上を見て戦える喜びと楽しさを感じながら次のゲームに備えたい。