カイクルを手に入れられなかったら、菊池雄星を。あの球団にはそうしてほしい。同じ左腕だからではなくて
シンシナティ・レッズは、先発投手を欲している。なかでも、ヒューストン・アストロズからFAになった、ダラス・カイクルを手に入れようとしているらしい。ファンクレッドのジョン・ヘイマンは、レッズは「首ったけ」と言われていると書き、MLB.comのマーク・フェインサンドは、カイクルはレッズと契約すると予想している。
ただ、目をつけているのは、レッズだけではない。カイクルを逃したら、レッズには菊池雄星との契約をめざしてほしい。同じ左腕だから、ではない。菊池がレッズに入団してメジャーデビューすれば、日本人選手がプレーしたことのない球団は一つもなくなる。30球団コンプリートだ。
マッシー村上(村上雅則)のデビューから半世紀以上が過ぎ、野茂英雄から数えても20年以上が経っている。2015年にイチローがマイアミ・マーリンズでプレーし、日本人選手の「未踏の地」はレッズだけとなった。
マーリンズと違い、レッズの球史は長い。球団のメディアガイドは「レッズの歴史上、重要な日」の冒頭に、プロの選手だけで構成された初の球団、シンシナティ・レッドストッキングスが最初の試合を行った、1869年5月4日を挙げている。レッドストッキングスは、シンシナティのグレイト・ウエスタンズを45対9で下したのを皮切りに、この年を57勝0敗で終えたという。
1980~90年代のオーナー、マージ・ショットは人種差別発言を繰り返したが、レッズはその流れを受け継いでいるわけではない。2014年のオフに青木宣親(現・東京ヤクルトスワローズ)がFAになった時は、レッズも興味を示していた(青木はサンフランシスコ・ジャイアンツと契約)。
また、レッズでプレーした韓国人選手は3人いる。2004年にジュングン・ポン(奉重根)、2006年にソンウ・キム(金善宇)が投げ、現在はテキサス・レンジャーズにいるシンス・チュー(秋信守)も、2013年に1シーズンだけ、レッズでセンターのレギュラーを務めた。チューとジョーイ・ボトー(レッズ)の友情は、この時に育まれたものだ(それについては「チューの「50試合連続出塁」はどれくらい珍しい記録なのか」で書いた)。
もっとも、レッズが本拠地とするグレイトアメリカン・ボールパークは、菊池に限らず、投手には不利な球場だ。本塁打が出やすく、ホームラン・パーク・ファクターは14年続けてトップ10に入っている。2018年は1位だった。
レッズがカイクルを欲しがっているのも、これが理由だ。ファングラフスのデータによると、カイクルが2018年に記録したゴロ率53.7%は、規定投球回をクリアした投手の1位。ここ3年の58.0%も、450イニング以上ではマーカス・ストローマン(トロント・ブルージェイズ)の61.3%に次いで高い。ゴロを打たせるという点では、菊池もレッズのニーズに合致する。