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注目の次世代技術「VR」の市場に大きな変化、ついに第2ステージへ

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

 米国の市場調査会社IDCによると、今年4〜6月期におけるVR(Virtual Reality、仮想現実)用ヘッドセットの世界出荷台数は、1年前から33.7%減少した。

 こうして出荷台数は大きく落ち込んだが、これは市場が急成長していく過程の一時的な停滞だとIDCは分析している。

 というのも4〜6月期は、これまでにない顕著な傾向が表れたからだ。

スマホ利用のビューワー型が激減

 VRヘッドセットには、「スクリーンレス・ビューワー」と呼ばれる簡易型がある。これは、スマートフォンを組み込んで、その画面をディスプレーとして使うもので、比較的安価な製品。

 この市場では、これまでスクリーンレス・ビューワーが大半を占めていた。しかし、4〜6月はこれらの製品が、1年前から6割減少した。

 

 VRヘッドセットには、パソコンやゲーム機などと接続して使う「テザード型」もある。こちらの出荷台数も同37.3減と、大きく落ち込んだ。

接続機器要らずの単体型が急伸中

 これに対し、パソコンなどの接続機器が不要となる「スタンドアロン(単体)型」が、同417.7%増と大きく伸びた。

 スタンドアロン型には、米フェイスブック傘下オキュラスVRの「Oculus Go」や、オキュラスVRが中国スマートフォン大手シャオミ(小米科技)と提携して同国で販売する「Mi VR」があるが、これらが出荷台数の増加に寄与したという。

 VRヘッドセットの用途で最も多いのは、ゲームなどのエンターテインメント分野だ。しかし4〜6月期は、商業分野の製品が増加し、全出荷台数の約20%を占めた。

 この比率は1年前、14%だった。VRは企業における試験導入も増えている。この市場は、いよいよ第2段階を迎えたのかもしれない。

VR/AR市場は71.6%の成長率で推移へ

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 なお、商業分野で普及が期待されている技術には、AR(augmented reality、拡張現実)もある。VRは、目の前の現実の場面から完全に離れ、デジタル世界に没入する技術。これに対しARは、現実の風景にデジタル情報を重ね合わせて表示する技術。

 先ごろはドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)傘下の高級スポーツ車メーカー、ポルシェが、自動車整備用のメガネ型AR機器を開発したと報じられた。また、米アップルがAR用メガネのレンズ(ディスプレー)を開発する米企業を買収したとも伝えられた。

 IDCによると、VRとARの製品やサービスへの全世界支出額は今年、270億ドルとなり、昨年から92%増加する見通しだ。支出額の2022年までの年平均成長率は71.6%と、高い水準で推移すると同社は見ている

 また、ヘッドセットの2022年までの年平均成長率(出荷台数)は、VRが48%、ARが同140%になると同社は予測している(図1)。

  • (このコラムは「JBpress」2018年9月12日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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