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算数・数学が勉強になる前に!子供が楽しく数に親しむ絵本 数学の芽を育てる安野光雅の世界

高木美紀絵本の蔵書1000冊

 実は子供の頃、算数が苦手だった、子供も苦手にならないか心配・・・そんなお子様の算数の心配をするママの声を聞くことがよくあります。お子様が柔らかい頭のうちに数学の芽を育ててあげたい、そんなご家庭も多いのではないかと思います。

 我が家もそんな気持ちで集めたのが安野光雅さんの絵本でした。最初は子供のために「この本いいな!」と思ったことがきっかけでしたが、気が付けば自分がはまってしまうほど安野光雅さんの描く世界が奥深くて、数学の芽を育てるということを超えて、読みものとして文学としても惹きこまれてしまうほどの魅力がありました。やっぱり絵本は侮れません。様々なジャンルの絵本を独自の世界観で描いている安野光雅さんの絵本は、大人も魅了されてしまいますが、子供にしか見えない世界もきっとあるのではないか思います。

 今回は、そんな独自の世界観で魅了する安野光雅さんの絵本の中から、算数の芽を育てる絵本をご紹介いたします。算数や数学と言った枠に捕らわれずに、絵本として丸ごとぜひ楽しんで頂けたらと思います。

『ふしぎなたね』

作・絵:安野 光雅 出版社:童話屋

『ふしぎなたね』作・絵:安野 光雅  出版社:童話屋
『ふしぎなたね』作・絵:安野 光雅 出版社:童話屋

「タネを1つまくと、次の年には2つ実る」という倍々の数の世界を描く!そして予想外の結末が! 

 昔、あるところになまけものの男が住んでいました。冬のある日、仙人が現れて不思議なタネを2つくれました。1つを焼いて食べると、1年間何も食べなくてもおなかが空かないという不思議なタネ。もう1つを地面に埋めると、翌年の秋には2つの実がなります。これを繰り返していけば、ずっとお腹が空かないと言われ、男は毎年1つを食べ、もう1つを地面に植えることを続けていました。ここからが算数の世界。ある年に男は、2つとも植えればもっと収穫することができると気が付きます。そこからは、収穫したタネを食べたり、蓄えたり、配ったり。そのたびにたし算やひき算、かけ算の計算を繰り返し、次第に数が安定したところで、まさかの結末が訪れます。

 「タネを1つまくと、次の年には2つ実る」という倍々の算数の世界が描かれた絵本ではありますが、数の概念以上に、経済や社会のしくみ、自然の摂理、時として訪れる不条理など生きるということが凝縮されているような奥深さがある絵本です。ただ倍々の計算を学ぶ絵本だと思ったら、良い意味で裏切られます。しかし、人生には「まさか」も「予想外」も意外とあるものです。数の概念だけでなく、子供たちにとって読む度に気付きがあればと思っています。

『10人のゆかいなひっこし』

作・絵: 安野 光雅 出版社: 童話屋

『10人のゆかいなひっこし』作・絵: 安野 光雅 出版社: 童話屋
『10人のゆかいなひっこし』作・絵: 安野 光雅 出版社: 童話屋

絵だけで伝える1~10の美しい数の世界 親子で作る数の世界の物語

 この絵本は、文字がありません。絵だけで1~10までのたし算とひき算の数の世界を学ぶ絵本です。と言っても、難しいことも堅苦しいこともなく、実際はページをめくるのがとても楽しい絵本です。10人の子供たちが、左のページの三角屋根の家から右のページの四角屋根の家に引っ越しをしていきます。その結果、左の家の子供たちの数は減り、右の家の子供たちの数は増えていくという内容です。左のページから右のページへ移動する子どもを数えていき、隠れている部分を予想して、自然にたし算やひき算を学んでいくこができます。「あっちの家には、何人いるかな?」「窓からのぞいている子がいるよ。他の子どもは何人いるかな?」など考えてみたり、組み合わせ次第で様々な楽しみ方があります。前からもでも、後ろからでも楽しむことができるという点も、さすが安野光雅さんの絵本です。また、よく見ると家具も少しずつ新居に移動しているので、それを見つけるのも面白いです。まだ算数の概念に触れるのが難しいお子様も、足し算引き算を意識しないで、穴あき窓の仕掛けを楽しんだり、移動した家具を見つけたり、まずは絵本そのもの是非楽しんでみて下さい。親子でたくさんの物語を作ってみてくださいね。

『はじめてであうすうがくの絵本1』

作: 安野 光雅 出版社: 福音館書店

『はじめてであうすうがくの絵本1』作: 安野 光雅 出版社: 福音館書店
『はじめてであうすうがくの絵本1』作: 安野 光雅 出版社: 福音館書店

発見する喜び、そしてたまに迷路に入り込んで悔しがる!そんな数学の本質を味わえる絵本

「すうがくの絵本」というタイトルに敷居が高いような印象を受けてしまいますが、そんなことはありません。いくつか並んだ物や生き物の中から仲間はずれを探す章から始まります。仲間はずれ探しは、子供も楽しく取り組めますが、これが、一体どうして数学の世界に結びつくのか不思議でしたが、後半の解説のページを是非読んでみて下さい。なるほど、安野光雅の絵本の世界がなぜこれほど魅力的かが理解できると思います。次の章では、「ふしぎなのり」「じゅんばん」「せいくらべ」などでは、数学的な考え方やアプローチがテーマとして描かれています。わかりにくい数学の概念を絵にすることで視覚化し、イメージ力を育てながら説明することができます。抽象的なことを具体的にイメージする力って、実は大事です。数学の概念を言葉で説明しようとすると難しく感じてしまうお子様もいると思います。抽象的なことを絵にしたりイメージしたりする力は頭の柔らかい時期に、ぜひ育ててあげたい力です。とは言え「数学を学ぶ」とか「数の世界の入り口」とか、かしこまる必要は全くなくて、まずは絵本として丸ごとただ楽しんでみてくださいね。安野光雅の世界をぜひ親子でご堪能下さい。

発見する喜び、新しいことを知っていく喜び!本の楽しさを子供に伝えたい

 算数や数学といった枠に捕らわれずに、ぜひ安野光雅さんの世界を楽しんでみて下さいね!子供は可能性いっぱいの存在です。まだ知らない未知の世界を知っていくことの喜び、そんな気持ちを育ててあげられたらいいなと思います。お子様の宝物になるような素敵な絵本と出会えることを願っています。

高木美紀

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絵本の蔵書1000冊

元塾講師の2児の母。絵本、児童書の記事を執筆しております。絵本と児童書が大好きで、気が付けば蔵書量1000冊「日本一、本が好きな子供を育てる」を目標に子育てしてきました。そんな我が家の1000冊の絵本の中から、おすすめの絵本をご紹介します。

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