朝ドラでヒロインの幼少期を演じた子役から、大人になってブレイクしたのは?
NHK朝ドラ『舞いあがれ!』のスタートから、福原遥が演じることになるヒロインの幼少期役の浅田芭路が話題を呼んだ。現在9歳にして、愛らしさだけでなく子どもながらの繊細な演技が目を引いて。過去の朝ドラでも序盤の1~2週を彩った子役が注目されることはあった。その後、大人になってブレイクした例は? 平成以降の作品から振り返る。
双子人気のマナカナは12年後にヒロインで再登場
平成以降の朝ドラの子役で最も話題になったのは、『ふたりっ子』(1996年)の三倉茉奈・佳奈だ。この作品でデビューした当時10歳の双子姉妹。優等生の野田麗子(菊池麻衣子)と落ちこぼれだが将棋に才がある香子(岩崎ひろみ)という双子のヒロインの幼少期を、それぞれ茉奈と佳奈が演じた。
出演は序盤の8回。互いを羨ましく思って周りに内緒で入れ替わって騒動を起こしたりと、リアル双子ならではのストーリーもあり、インパクトは大。出番がなくなっても話題が続く人気ぶりを受けて、終盤に麗子の双子の娘役で予定外の再登場。ManaKanaとして挿入歌『二千一夜のミュウ』でCDデビューも果たした。
『ふたりっ子』以後も『双子探偵』に主演など2人揃っての出演作が続き、12年後の2008年には朝ドラ『だんだん』でWヒロインを務めた。2度目のヒロインは朝ドラ史上初。離れ離れに育った双子の姉妹役で、茉奈が島根のしじみ漁師の娘・田島めぐみ役、佳奈が京都の芸妓の娘・一条のぞみ役。出雲大社で運命的に出会って、やがて双子デュオとして歌手活動をする。現実の2人も前年に“茉奈 佳奈”名義でCDデビューしていて、劇中歌の『いのちの歌』が4枚目のシングルとして発売された。
以降は個々でのドラマ出演が増えて、共に結婚を経て36歳になった現在も女優を続けている。近年では、茉奈が『アライブ がん専門医のカルテ』での母親ががんを患う役などゲスト出演で印象を残し、佳奈は『あなたの番です』で殺人が続くマンションで情緒不安定に陥る専業主婦を演じた。
『千と千尋の神隠し』で主人公の声を
北海道の炭鉱町を舞台にした『すずらん』(1999年)では、小さな駅に置き去りにされていて駅長に育てられたヒロイン・常盤萌を遠野凪子が演じた。その少女期を担ったのは当時11歳の柊瑠美。翌年公開の劇場版『すずらん~少女萌の物語~』では主演している。
その後の柊はスタジオジブリの金字塔的アニメ映画『千と千尋の神隠し』で主人公の千尋の声優を務めて名を残した。高校生になって出演したドラマ『野ブタ。をプロデュース』では、堀北真希が演じたヒロインと友だちになりながら、裏で嫌がらせを繰り返していた役でまた注目される。
女優活動の一方、NHK Eテレの教育番組『ニャンちゅうワールド放送局』の3代目おねえさんを2009年から4年にわたって務め、子どもたちに知られた存在でもあった。
声優に進出して『プリキュア』の主役も
『純情きらり』(2006年)で、宮﨑あおいが演じたピアニストを目指すヒロイン・有森桜子の幼少期は、美山加恋が担当した。当時9歳。2年前に草彅剛主演の『僕と彼女と彼女の生きる道』で娘役を演じて、素直に「はい!」と返事する“凛ちゃん”として人気を呼んでいた。『純情きらり』でも亡き母のオルガンをせがむなど健気さを見せつつ、ガキ大将に決闘を挑んだりも。
以後も成長する中で、『高校入試』や『ラーメン大好き小泉さん』など様々な作品に出演。声優業にも進出して、2017年のアニメ『キラキラ☆プリキュアアラモード』では主人公の宇佐美いちか=キュアホイップ役をオーディションで射止めた。なお、仲間の有栖川ひまり=キュアカスタード役が『舞いあがれ!』のヒロイン・福原遥だった。現在、アニメ情報番組『あにレコTV』のMCもNON STYLEの井上裕介と共に務めている。
小さな演技派が高校生になって連ドラ出演中
2010年代からの朝ドラの子役は多くがまだ10代だ。“食べること”がテーマの『ごちそうさん』(2013年)で、杏が演じたヒロイン・卯野め以子の幼少期役の豊嶋花は現在15歳。今月スタートのドラマ『祈りのカルテ』に、12歳から腎炎で入院と通院を繰り返す役で出演している。
『ごちそうさん』当時は7歳ながら、それ以前の芸歴もすでに豊富で、朝ドラでは『あまちゃん』で小泉今日子が演じた天野春子の幼少期を演じたり、映画『真夏の方程式』でも杏が演じた環境活動家の幼少期の役だった。子役として抜群だった演技力にさらに磨きがかかり、昨年は『大豆田とわ子と三人の元夫』で、松たか子が演じる主人公の大人びた娘役で目を引いた。
『あさが来た』(2015年)で波瑠が演じた実業家の今井あさの幼少期は、当時10歳の鈴木梨央が務めた。現在は17歳。吉田羊と共演している『ポカリスエット』のCMでもお馴染みだ。
彼女も朝ドラ以前から大河ドラマ『八重の桜』で綾瀬はるか、『Woman』で満島ひかりと主人公の娘役を重ね、憧れだったという芦田愛菜主演の『明日、ママがいない』では準主役で共演した。
その後も出演作が相次ぎ、藤原竜也主演の『青のSP』ではメイン格の生徒役。昨年はドキュメンタリードラマ『命のバトン』で、予期せぬ妊娠に戸惑う高校生役で主演している。
『妻、小学生になる。』の天才ぶりの原点
杉咲花が戦後の大阪で女優を目指すヒロイン・竹井千代を演じた『おちょやん』(2020年)で、幼少期の役だった毎田暖乃は今も11歳で子役。だが、今年『妻、小学生になる。』で、50歳を過ぎた主人公の亡き妻の魂が宿った小学生という難役を、絶妙な大人演技で魅せて大評判に。
『おちょやん』でも、貧しい境遇の中でグータラな父親とやり合ったり、弟のために自ら奉公に出たりと、豊かな表現力で涙も誘う天才子役ぶりを発揮していた。最近も『あなたのブツが、ここに』で、キャバ嬢から転身した宅配ドライバーでシングルマザーという主人公の娘を演じている。学校でいじめを受けていることを母親に言えなかったりした中で、親子愛が染みた。
トップ女優に至った例はまだないが…
こう振り返ると、登竜門と言われる朝ドラで子役として評判を呼んでも、トップ女優にまで至った例は出ていない。朝ドラ出演者に限らず、子役から数年を経て大人の女優に近づいていくと、外見も含めてリセットされる部分がある。ヒロインでさえ全員がブレイクしているわけではなく、幼少期の評価は別ものとなるのはやむを得ない。
とはいえ、毎田暖乃や浅田芭路も含め、近年の子役たちの可能性はまだまだこれから。福原遥も朝ドラには出演していなかったが子役出身。幼少期の役を糧に成長を続け、誰かがいつかヒロインとして朝ドラに戻ってくることに期待したい。