熊本城天守閣が3年半ぶりによみがえる 公開当日は国内外から多数の観光客
復旧が進む熊本城で5日、天守閣の大天守外観復旧を記念した特別公開が始まった。熊本地震からおよそ3年半ぶりの公開であることに加え、翌日にラグビーW杯の試合が熊本で控えていることもあって、この日は国内外からの多くの観光客で賑わった。
「復興の歩み着実に」
熊本城の天守閣は2016年4月の熊本地震によって、建物全体や石垣に被害を受けた。全体で20年ともされる熊本城の完全復旧。17年に始まった復旧工事では、大天守を19年度までに復旧させる計画で進めてきた。特別公開にあたっては、専用の通路を設置。工事に支障を来さず、かつ安全に見学できるルートを確保した。
特別公開を記念した式典では、大西一史熊本市長が「復興の歩みが着実に進んでいることを実感していただけたら幸い。引き続き復興に全力を注ぐ」と挨拶。蒲島郁夫熊本県知事は「熊本の『誇り』回復と『宝』継承に向け、県としても熊本城の完全復旧に市と取り組んでいく」と力強く語った。
式典にはサプライズゲストとして、俳優の佐藤健さんも登場。佐藤さんは、映画「るろうに剣心」のロケで訪れたり、市の新CMのナレーションを担当したりと、熊本と深い関わりがある。今回、式典のためだけに熊本に来たという佐藤さんは「熊本城の復旧は僕自身も待ち望んでいたこと。ここにいられて嬉しい」とコメント。会場は歓声と拍手に包まれた。
大天守の外観はほぼ元に
特別公開の入園口には、開門の30分以上前から行列ができていた。筆者は式典終了後、開門の数分前に列に並んだが、数百メートルはあろうかという長さに達していた。それでも、行きと帰りで見学ルートが分けられていたため、開門後はスムーズに入園することができた。
地震後はずっと遠くから眺めるだけだった熊本城。間近に迫った天守閣を見て、こみ上げてくるものがあった。わずか3年半で見事に復旧して見せた関係者の努力に頭がさがる思いだ。案内役の男性も「私たちも驚くスピードでしたよ」と笑顔で話していた。
大天守の隣の小天守は、まだ復旧作業中で外観は回復していない。また、大天守にも足場が残り、正面には工事機材などが置かれたスペースがある。それでも、大天守の外観が復活したことが一県民として何より嬉しい。
地震後に復旧の様子を確認するため、毎月のように熊本城を訪れていたという熊本県八代市の男性は、「当初は本当に復旧できるのだろうかというほど城の外観は悲惨なものだった。それがここまで立派に復旧できて、安心するとともに勇気と元気をもらえた」と天守閣から視線を外さずに語った。
「なんて素晴らしいシルエット」
それにしてもこの日は外国人観光客の姿が目立った。翌日にラグビーW杯のフランスートンガ戦が熊本で控えていることもあり、ユニフォーム姿や国旗を手にした人の姿もあった。フランスから訪れたという男性(26)は、特別公開のことは知らなかった様子。筆者が天守閣のすぐ近くまで行けることを伝えると「なんて素晴らしいシルエットのお城なんだと感動していたところだ。ぜひ行ってみるよ」と話していた。
また、英国バーミンガムからラグビー観戦のため熊本を訪れたという、レイス・チャハールさん(21)とロシャーン・ロビンソンさん(21)は、「英国にも城はあるが、熊本城は全く異なる文化と外観がとても興味深い。敷地内に緑が多い環境も素晴らしいね」と満足げだった。
2021年春には天守閣内部の展示公開を予定
今回の特別公開は、第一弾だ。熊本城HPによると、2020年春には平日・日祝とも通年の一般公開に移行。2021年春には天守閣が完全復旧し、外観公開と天守閣内部の展示公開を予定しているという。これから復旧の過程を見ることができるともいえる。
熊本城の特別公開は、原則日曜・祝日限定。入園券は大人500円。天守閣の近くまでは行けるが、現時点で天守閣の中には入れない。通路は日陰がほぼないため、天気のいい日は帽子や日傘、飲み物などを持参した方が無難。
熊本城は近隣に美術館があり、中心市街地からも徒歩圏内だ。次の休み、ぜひ観光に訪れてみてはいかがだろうか。県民一同お待ちしております。(写真はすべて2019年10月5日に筆者撮影)
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