「いまKリーグで最も危険なFW」は元Jリーガー。北朝鮮代表FW安柄俊、3試合連続ゴールの衝撃
新型コロナウイルスの感染拡大の影響下の中、5月8日から開幕した韓国プロサッカーのKリーグ。
無観客での開催やスタジアム内での防疫対策、世界各国で中継が視聴されるなど関心を集めるなか、邦本宜裕(全北現代)や西翼(大邱FC)といった日本人選手の動向も注目されていた。
そんな中、日本とゆかりのある選手がいま、韓国サッカー界で話題になっている。
それが在日コリアンの元Jリーガー、北朝鮮代表でもプレーしたFW安柄俊(アン・ビョンジュン)である。
Kリーグ2(2部)の水原FC所属のFWで、韓国でのプレーは今年で2年目。
今季は開幕からスタメンで起用され、3試合連続ゴールの大爆発。ここまで4ゴール1アシストと絶好調を維持している。
特に5月24日の第3節、忠南牙山FC戦では2ゴール1アシストで、5-0の勝利に貢献。この試合の活躍で安は第3節の週間MVPにも選出された。
ちなみに、この試合では安と同じ水原FCに所属する元京都サンガの日本人FW石田雅俊もゴールを決めている。
“鄭大世2世”の呼び名も
韓国メディアは安の活躍を大々的に報じている。
サッカー専門誌「Best Eleven」は「Kリーグ2で最も危険なゴールゲッター、安柄俊」と見出しを打ち、こう評価している。
「ペナルティエリアの外と中は関係なく、ゴールを作り出している。何よりも相手の守備が少しでも距離を置けば、その隙を逃さず、爆発的なシュートで得点を作り出す。Kリーグ2での安柄俊は“もっとも危険なゴールゲッター”と言っても過言ではない」
また、テレビ局のKBSは「Kリーグ2に吹く“第2の鄭大世”の風」との見出しで、その活躍を映像で報じていた。
鄭大世(清水エスパルス)は、2013年から2015年の途中までKリーグの水原三星でプレー。当時は2010年南アフリカW杯でもプレーした北朝鮮代表FWという肩書きもあり、韓国でも注目の選手だった。
“第2の鄭大世”という表現は、両者ともに北朝鮮代表の経歴を持つ在日コリアンKリーガーという意味だが、それほど安の活躍は強烈なインパクトがあったということだろう。
それにしても、まさか安が今季、ここまで活躍を見せるとは誰が想像していただろうか。
東京朝鮮中高級学校サッカー部出身の彼は、中央大学に進学してサッカーを続け、2013年に川崎フロンターレに入団した。
川崎フロンターレでは、“人間ブルドーザー”と呼ばれた同じ在日コリアンの鄭大世のような活躍を望むファンも多かったに違いない。
安は学生時代にU-17、U-23北朝鮮代表に選出され、A代表としては東京で開催された2018年のEAFF E-1サッカー選手権(東アジア選手権)にも出場。日本のサッカーファンの前でその姿を見せたのが記憶に新しい。
ロアッソ熊本でゴール量産
ただ、Jリーグでは目立った実績を残せなかった。
川崎フロンターレに所属しながら、ジェフユナイテッド市原・千葉やツエーゲン金沢では期限付き移籍でプレー。しかし、膝のケガに悩まされ、プレーする機会は減った。
もっともゴールを量産したのは、2017年に完全移籍したJ2のロアッソ熊本での2シーズンだ。攻撃の要として17年は33試合で7ゴール、18年は36試合で10ゴールを決めている。
その流れで2019年から韓国の水原FCに移籍。Kリーグ1年目はケガに悩まされたが、それでも17試合で8ゴールを決める活躍を見せた。
そして今シーズン、ようやく本領発揮といったところだろうか。
第3節終了後、安はこう語っている。
「去年はケガでシーズンの後半はほとんどプレーできなかったのですが、今季はすべての試合に出場してチームの力になりたいです。北朝鮮代表で活躍した鄭大世選手もKリーグで多くの方から応援されていたのは知っていますが、私もKリーグのファンにいいプレーを見せられるように努力していきたいです」
Kリーグ2部という舞台ではあるが、今後の活躍次第では、1部でのプレーも夢ではないだろう。
安が生まれた地、日本のJリーグにも活躍のニュースは届くだろうか。