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アマゾン、物流大手から突如の契約解除 背景に何があったのか?

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
画像出典:米Amazon.com

 米物流大手のフェデックス(FedEx)は今年6月末で米アマゾン・ドット・コムとの契約を解除した

「アマゾン以外にも著しい需要と成長機会がある」

 その理由についてフェデックスは「より広範なeコマース市場に向けてサービスを提供することに重点を置く戦略的意思決定」と説明した。ただ、米国内の陸上輸送や国際貨物など、それ以外のサービス部門とアマゾンとの契約は今後も継続する。

 フェデックスによると、2018年にアマゾンからもたらされた収入は、全売上高のわずか1.3%程度で、アマゾンは同社にとって、とりわけ大口顧客ではないという。

 一方、米国eコマース市場の貨物取り扱い個数は現在の1日当たり5000万個から、2026年には2倍の1億個になると見込んでおり、この市場には著しい需要と成長機会がある、としている。

 米国ではアマゾンと物流大手の競争が激化しているが、今回のフェデックスの新たな方針はこうしたタイミングで決定されたと、米ウォール・ストリート・ジャーナル米CNBCなどの米メディアは報じている。

アマゾン、物流分野への進出拡大

 アマゾンは、米国に巨大な航空貨物ハブを建設する計画だ。ケンタッキー州ヘブロンのシンシナティ・ノーザンケンタッキー国際空港に建設するもので、2021年の開設を予定している。その面積は約28万平方メートル(東京ドーム6個分)。同社はこの施設に約15億ドル(約1600億円)を投じる。

 また、昨年12月には米オハイオ州ウィルミントンの航空貨物会社、エア・トランスポート・サービシズ・グループ(ATSG)との提携を拡大し、同社専用の貨物機を今後2年かけて50機に増やすと発表した。

 同社は2016年に航空機を使った輸送業務を始めた。当初はATSGと米アトラス・エア・ワールドワイド・ホールディングスから「ボーイング767-300」を合わせて約10機リースしていたが、今では約40機に増えた。

 今年5月にはアマゾンが荷主と輸送業者をネットでマッチングするサービス、つまり輸送サービスの仲介事業を始めたとも伝えられた。

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物流大手に生じる2つのリスク

 こうしたアマゾンの物流分野への進出により、米UPS(ユナイテッド・パーセル・サービス)や米USPS(郵政公社)、フェデックスなどの大手に2つのリスクが生じると言われている。

 1つはアマゾンという顧客を失うリスク。もう1つはアマゾンに顧客を奪われるというリスク。前者は大手が自社の施策だけで解決できる問題ではないと指摘されている。

 一方、後者については対抗できる余地がある。フェデックスは今回の戦略的意思決定の詳細を明らかにしていないが、おそらく後者を念頭に置いたものなのだろう。

 eコマースの普及によって物流量が飛躍的に増加してきた。自社物流キャパシティー(処理能力)の多くをアマゾン以外の顧客に振り分けることで、それら顧客との関係を維持する。フェデックスには、こうした狙いがあるのだろう。

  • (このコラムは「JBpress」2019年6月11日号に掲載された記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)
ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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