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結婚式の加害性・他人の幸せ:私たちは傷つけあいながら許しあいながら生きている

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
写真はイメージ:幸せいっぱいの結婚式だけれど(写真:アフロ)

■結婚式の加害性ツイート

ツイッターのトレンドに上がった「結婚式の加害性」「他人の幸せ」。

元ツイートはこれです。

表現はツイッタースタイルで少し乱暴ですけれど、内容的には、おっしゃる通りだと思います。だから、結婚式に来て下さるか方々には、心から感謝しないといけないですね。

(「結婚式の加害性」は、6/28日12:00現在もツイッターのトレンドに上がり、79,134件のツイートと表示あれています。)

■私たちが人を傷つけるとき・他人の幸せを願うとき妬むとき

もちろん、招待されたことを喜び、新郎新婦を祝福して進んでお祝いをつつみ、感動体験をする人たちが多いことも、言うまでもありません。

それでも、全ての事がらには、誰かを傷つける可能性があります。どんなお祝い事でも同じです。いえ、お祝い事だからこそ傷つく人がいるでしょう。

同時に、結婚式をしないこと、招待されないことで傷つく人もいるでしょう。どんな時でも、傷つく人はいるのです。

ただ、人の悪口を言ったりケンカをするときには、人を傷つける自覚を持ちやすいのですが、自分が幸せで楽しいイベントをするときには、そこにさえ加害性があることには気づきにくいでしょう。

自分が持っているトゲに気づけないとき、人は他者をひどく傷つけてしまうことがあります。

「他人の不幸は蜜の味」という言葉があり、他人の幸せに傷つく人がいるのです。

他人の幸せは、妬みを生み、その感情で人生を台無しにする人もいるでしょう。

研究によれば、他人の幸せを願う人ほど幸せになれますし、その反対に、嫉妬しやすい人ほど健康を害すること実証されているのですが、それでも妬みやすいのが人間なのです。

■どんな人が人を傷つけるか

乱暴で攻撃的な人は、人を傷つけることがあるでしょう。

明るくて元気な人も、その明るさ元気さで人を傷つけることがあるでしょう。善意の人も、善意の押し付けで人を傷つけることがあるでしょう。明るい善人は、そんなことを考えたこともない人もいるのですが。

傷つきやすいタイプの人も、「私は傷ついた」とアピールすることで、周囲をひどく傷つけることがあります。本人が傷ついていることは事実ですけれども、自覚なくみんなを傷つけているのも事実です。

そんな態度をとれば周囲は離れていきますので、本人はますます傷つくでしょう。

研究によれば、幸せな人は、基本的には周囲も幸せにするのですが、ときには人を傷つけることがあります。合格した、宝くじが当たった、そして結婚した。ハッピーなニュースですけれども、自分との差を感じて心を痛める人もいます。

自分の親の話や子供の話も、グチっているときでさえ、幸福感がにじみ出ることがあります。たいていは楽し話題なのですが、家族に恵まれていないと感じている人にとっては、辛い話になることもあるでしょう。

冷静で賢明な人も、その冷静さ賢さのゆえに、人を傷つけることがあります。

つまり、どんな人でも、誰かを傷つける可能性があるのです。

■結婚式とコロナ

コロナ禍で、多くの結婚式が中止延期になりました。自分の結婚式で、田舎から出てきた祖父母が感染して亡くなることを想像したら、とてもできないと語っている方もいました。

ただ実は、人は毎年インフルエンザで亡くなってきました。全国から人が集まり、高齢者も子供もいて飲食をする、歌も歌う。これは、感染しやすい状況でしょう。

コロナの前から、リスクはあったのです。それでも、私たちは集まり、新郎新婦を祝福してきました。

■私たちは許されながら生きている

私は人前で話したり、こうして記事を書いたりしています。そんな活動をしていれば、誰かを毎日のように傷つけていることでしょう。

私は、その傷ついた人たちに許されながら生きています。

私たちは、大なり小なり、みんなそうなのでしょう。誰かに傷つけられ、誰かを傷つけ、誰かに迷惑をかけられ、誰かに迷惑をかけて、そうして毎日を生きています。

研究によれば、人を憎むよりも許す方が幸せになれます。ただ、とても傷ついている人に、許しましょうなどと気軽には言えません。

ただ言えることは、許すことは幸福のために効果的であり、私もまた誰かに許されていると知ることが大切だということなでしょう。

人間関係の中で、私たちはストレスにさらされながら生きています。誰が悪いと責めるよりも、考え方を変えた方が心は楽になるのではないでしょうか(人生のストレスに負けない12の方法(前編):他人にやられない、自分自身を責めないために:ヤフーニュース有料)

そうして、みんなで生きていきましょう。

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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