Yahoo!ニュース

那須川天心が「倒せる」ようになった理由─。世界前哨戦で何を見せる? 『10・14有明アリーナ』

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
プロボクシング転向後、初のタイトル戦に挑む那須川天心(写真:藤村ノゾミ)

7大世界戦&那須川天心

今秋、豪華なボクシングフェスティバルが開催される。

10月13&14日、東京・有明アリーナ『Prime Video Boxing10』。日本ボクシング界史上初の単独プロモートでの世界戦"2DAYS"開催だ。発表されたカードは次の通り。

〈10月13日〉

▷WBA世界バンタム級タイトルマッチ

井上拓真(王者/大橋)vs.堤 聖也(3位/角海老宝石)

▷WBC世界フライ級王座決定戦

寺地拳四朗(1位/BMB)vs.クリストファー・ロサレス(2位/ニカラグア)

▷WBA世界フライ級タイトルマッチ

ユーリ阿久井政悟(王者/倉敷守安)vs.タナンチャイ・チャルンパック(15位/タイ)

▷WBA世界ライトフライ級王座決定戦

岩田翔吉(1位/帝拳)vs.ハイロ・ノリエガ(2位/スペイン)

〈10月14日〉

▷WBC世界バンタム級タイトルマッチ

中谷潤人(王者/MT)vs.ペッチ・ソー・チットパッタナ(1位/タイ)

▷WBO世界スーパーフライ級タイトルマッチ

田中恒成(王者/畑中)vs.プメレレ・カフ(5位/南アフリカ)

▷WBO世界フライ級タイトルマッチ

アンソニー・オラスクアガ(王者/米国)vs.ジョナサン・ゴンサレス(1位/プエルトリコ)

▷WBOアジアパシフィック・バンタム級王座決定戦

那須川天心(1位/帝拳)vs.ジェルウィン・アシロ(2位/フィリピン)

記者会見に出席した8選手。左から岩田翔吉、寺地拳四朗、中谷潤人、井上拓真、田中恒成、ユーリ阿久井政悟、堤聖也、那須川天心。試合の模様は「Prime Video」で生配信される(写真:SLAM JAM)
記者会見に出席した8選手。左から岩田翔吉、寺地拳四朗、中谷潤人、井上拓真、田中恒成、ユーリ阿久井政悟、堤聖也、那須川天心。試合の模様は「Prime Video」で生配信される(写真:SLAM JAM)

7大世界戦に加え、那須川の地域タイトル挑戦試合がラインナップされた。このビッグイベントの開催は、プロボクシング軽量級において日本が世界の中心地であることを示している。

「前回と同じマインドで」

好カードが揃ったが、注目度がもっとも高いのは那須川天心のボクシングデビュー5戦目か。初のベルトをかけた闘いとなるが、それ以上に”世界前哨戦”の意味合いが強い。

8月22日、東京ドームホテルでの記者会見で那須川は言った。

「5戦目でタイトル挑戦ができ非常に嬉しく思います。世界に挑むためには、日本、東洋太平洋、WBOアジア・パシフィックのベルトが必要らしいので(今回の試合は)そこへの過程にすぎない。魅せる闘いをして、しっかりと勝ちたい」

表情には、自信が満ち溢れていた。

前戦で那須川は一皮むけた。

7月20日、東京・両国国技館でのジョナサン・ロドリゲス(米国)戦で彼は果敢に攻めた。それまでのデフェンス重視、持ち前のスピードを活かす闘い方から進化。踏み込んでの左強打を多用する「倒す」スタイルを確立した。

7月20日、東京・両国国技館で世界4位のジョナサン・ロドリゲスを一方的に攻め、3ラウンドTKO勝ちを収めた那須川天心(写真:山口フィニート裕朗/アフロ)
7月20日、東京・両国国技館で世界4位のジョナサン・ロドリゲスを一方的に攻め、3ラウンドTKO勝ちを収めた那須川天心(写真:山口フィニート裕朗/アフロ)

振り返って那須川は言う。

「さまざまな距離から打つ練習を繰り返したが、なかなか上手くいかず壁にぶち当たった時期もあった。でも諦めずに挑んで試合の2週間前にバシッとはまり(倒せる)スタイルが完成した。それが前回の結果につながったと思う。今回も同じマインドで挑みたい」

相手のジェルウィン・アシロは23歳で9戦全勝(4KO)の戦績を誇るが、世界ランキング10位以内には入っていない。技術的には荒削りも、思い切りよくパンチを打ち込む積極タイプ。那須川にとって組み易い相手と見てよいだろう。

「もう(世界チャンピオンたちが)無視できない状況になってきていると思う。次もしっかり勝ってステップアップしたい」

そう話して那須川は続けた。

「世界チャンプになることが目標なわけじゃない。強い奴と闘って勝っていく。その先で(世界の)ベルトを4つ集めたいと思っている」

「倒す」スタイルを確立した那須川の表情は明るい。目標を高く掲げ、自信も漂わせる。

おそらく来年早々になるであろう次戦で、世界王座に挑むための大切な闘い。準備は整っている。鮮やかなKO完勝が期待できそうだ。

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストに。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターも務める。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。仕事のご依頼、お問い合わせは、takao2869@gmail.comまで。

近藤隆夫の最近の記事