放射冷却で冷え込む朝と寒暖差
冬日と夏日
令和元年(2019年)5月8日の朝は、東京都心の最低気温が7.9度と、5月としては28年ぶりに7度台となるなど、全国的に寒い朝となりました。
平成の最終月(4月)の初めには、全国で気温観測を行っている926地点のうち、半数以上が冬日(最低気温が0度未満)でした。
令和に改元となった5月になると、冬日より夏日(最高気温が25℃以上)が多くなり、5月5日のこどもの日は、気温観測所の約半数が夏日でした(図1)。
それが、5月8日は、夏日が46地点に対し、冬日は96地点もありました。
これは、放射冷却によるものです。
放射冷却
曇っている場合の夜間は、気温は急激には下がりませんが、よく晴れていて、空気中の水蒸気が少ない場合は、地表面からの放射によって、地表面の気温が大きく下がることもあります。このような状態で気温が下がることを放射冷却と呼びます(図2)。
水は比熱容量が大きいため、水蒸気が多いと放射冷却が起こりにくく、風が強い場合には、たとえ放射冷却が起こっても上空の暖かい空気との混合が起きて放射冷却が弱くなります。
移動性高気圧に覆われた早朝は、放射冷却が起きやすい条件がそろいますので、朝の最低気温が低くなります。
5月8日の朝も、大きな移動性高気圧におおわれていました(図3)。
日本上空には今春最後と思える寒気が流入していたことに加え、放射冷却がおきて全国的に寒い朝となったのです。
そして急激な地表付近の冷え込みによって放射霧と呼ばれる霧が発生したところもありました。
一日の気温差
太陽が昇ると、日射によって地表面が温められますので、放射冷却による厳しい冷え込みは早朝だけの現象です。
東京都心でも、5月8日の最低気温が7.9度でしたが、日中の最高気温は22.7度まで上昇しています。
一日の温度差が14.8度もありました。
内陸部の都市は、海岸部の都市より寒暖差が大きく、長野市の20.5度(最低気温1.7度、最高気温22.2度)のように、20度を超えた観測点もありました。
寒暖差に注意
春先は1日の気温差が大きく、体調管理に注意が必要な季節です。
特に、移動性高気圧におおわれたときは、放射冷却によって早朝の気温が大きく下がります。
一日の寒暖差が大きくなりますので、特に注意が必要です。
日本付近は、しばらく移動性高気圧におおわれます(図4)。
ただ、大きな高気圧ではなく、小さな高気圧の集まりですので、高気圧と高気圧の間など、意外と雲が多い天気が続きます。
曇ったら放射冷却が弱まりますので、寒暖差が大きくならないですが、晴れたら放射冷却で寒暖差が大きくなります。
いずれにしても、外出時の洋服選びに苦労する季節ですので、最新の気象情報をご利用ください。
図1の出典:ウェザーマップ資料より著者作成。
図2の出典:饒村曜(2014年)、天気と気象100、オーム社。
図3、図4の出典:気象庁ホームページ。