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南北会談は明日10時に開始…議題めぐり韓国は慎重な姿勢を崩さず

徐台教ソウル在住ジャーナリスト。『コリア・フォーカス』編集長
9日午前10時、758日ぶりに南北会談が行われる板門店。17年12月李真煕撮影。

約2年ぶりとなる南北会談を明日に控え、会談を主管する統一部が会見を開いた。具体的な議題について言及を避けるなど慎重な様子を見せた。会談前の雰囲気を伝える。

南北会談は明日10時にスタート

8日午前、統一部は会談前最後となる定例会見を開き、準備の現状を説明した。

この場でまず、白泰鉉(ペク・テヒョン)報道官は今回の会談準備が統一部中心で進められている点を強調した。

8日午前、定例会見を行う統一部の白泰鉉(ペク・テヒョン)報道官。筆者撮影。
8日午前、定例会見を行う統一部の白泰鉉(ペク・テヒョン)報道官。筆者撮影。

これは、昨年12月28日に統一部の政策革新委員会により発表された意見書にのっとったものだ。

意見書では朴槿恵(パク・クネ)前政権時代に、それ以前と異なり、北朝鮮との対話を青瓦台(韓国大統領府)中心で行ったことで、南北関係改善のチャンスを逃したとの意見を示している。

この度、韓国政府は南北会談のコントロールタワーを再び、南北関係を専門に扱う統一部に戻した。

南北会談を今後、過去の金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代のように、統一部を中心に連続性を持ったものにしていきたい政府の思惑が透けて見える。

また、白報道官は「会談は9日の午前10時(北朝鮮時間同9時半)に全体会議をもって始まる」と明かした。昨日8日の午後に、北側と板門店連絡チャネルを通じ決定したという。

なお、会談の終了時間を含め、具体的なタイムテーブルは会談の場で話し合われることになるため、現在では未定だ。

会談準備は最終段階も、内容に対しては慎重

白報道官は会談の運営については、「平昌オリンピック、パラリンピックに北朝鮮が参加することを中心としながら、それ以外にも南北関係改善のための相互関心事項、7月17日の提案と関連したものになるよう、準備をしている」と明かした。

「7月17日の提案」とは、昨年7月に、韓国国防部と赤十字社が北朝鮮側に提案したものを指す。

南北軍事境界線部分での南北相互誹謗を中止し、2015年10月以降中断したままの離散家族再会事業を再開するというものだ。

1月4日、米国のトランプ大統領と電話会談を行う韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領。この場で平昌五輪期間中に米韓合同軍事訓練を行わないことに双方が合意した。また「米国は100%韓国を支持する」とも。
1月4日、米国のトランプ大統領と電話会談を行う韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領。この場で平昌五輪期間中に米韓合同軍事訓練を行わないことに双方が合意した。また「米国は100%韓国を支持する」とも。

白報道官はしかし、「五輪」と「南北の相互関心事項について」という原則以外の具体的な議題については言及を避け、慎重な態度に終始した。

例えば「北朝鮮の高官を五輪に招待する内容」や、「核問題が議題に入るのか」といった質問に対しては、上記の原則を繰り返すことでやり過ごした。

さらに「北側代表の李善権(リ・ソングォン)祖国平和統一委員会委員長が過去、天安艦撃沈(2010年)と関連がある人物だが、天安艦について会談で触れるのか」といった敏感な質問には「首席代表(統一部長官)が権限と責任をもって会議を運営する」とかわした。

だが「五輪に集中する」と繰り返しながらも、「会談は予断を許さない」と本音ものぞかせた。

韓国側の首席代表は「離散家族問題も」と

8日午前、韓国側の首席代表の趙明均(チョ・ミョンギュン)統一部長官は「南北関係の改善を議論する過程で、離散家族再会問題や、軍事的緊張の緩和する問題を共に議論できるように準備する」(聯合ニュース)と明かした。

韓国側の首席代表の趙明均(チョ・ミョンギュン)統一部長官。南北対話に長いキャリアを持つベテランだ。
韓国側の首席代表の趙明均(チョ・ミョンギュン)統一部長官。南北対話に長いキャリアを持つベテランだ。

先の白報道官の発言とも相まって、今回の南北会談では「平昌五輪」、「離散家族再会」、「軍事境界線上での緊張緩和」が議論されることが決定的となった。

「非核化」という最大の問題を脇に置いたまま進める会談がどのような結末を迎えるのか。

韓国での大まかな空気感である「次につなげれば成功」という見方に、筆者も共感するところだ。先は長い。

ソウル在住ジャーナリスト。『コリア・フォーカス』編集長

群馬県生まれの在日コリアン3世。1999年からソウルに住み人権NGO代表や日本メディアの記者として朝鮮半島問題に関わる。2015年韓国に「永住帰国」すると同時に独立。16年10月から半年以上「ろうそくデモ」と朴槿恵大統領弾劾に伴う大統領選挙を密着取材。17年5月に韓国政治、南北関係など朝鮮半島情勢を扱う『コリアン・ポリティクス』を創刊。20年2月に朝鮮半島と日本の社会問題を解決するメディア『ニュースタンス』への転換を経て、23年9月から再び朝鮮半島情勢に焦点を当てる『コリア・フォーカス』にリニューアル。ソウル外国人特派員協会(SFCC)正会員。22年「第7回鶴峰賞言論部門優秀賞」受賞。

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