【四條畷市】夫婦愛を今に伝える「鴈塔」 消防署北の川沿いにひっそりたたずむ
四條畷消防署の北にある清滝街道沿いに、夫婦愛にまつわるエピソードを持つ「鴈塔」という石造物があります。地元の方はよくご存知かと思いますが、一度見てみようと思い、現地に行ってみました。
清滝街道沿い、と書きましたが、多くの車が行き来しているので街道から落ち着いて見ることは困難です。一旦、四條畷消防署側の道に入って「鴈塔」の裏側へ回ると階段があるので、そこをのぼればゆっくりと見ることができます。
書籍「歴史とみどりのまち ふるさと四條畷」によると、1400年代後半のある日、一人の猟師が雌の雁をしとめたところ、その雌雁には首がありませんでした。それから1年後、この猟師が今度は雄の雁をしとめると、その雁は羽の下に雌の雁の首を抱いていました。この雄の雁が前にしとめた雌の雁と夫婦だったことを知り、後悔した猟師は塚を作って供養した──という言い伝えが残されています。
その後、雁の夫婦愛に感銘した人が石塔を建立。さらに時を経て、その石塔が老朽化したことから、新しい石塔が建てられました。今、向かって右側にある背の低い石塔は新しい方、真ん中の背の高い石塔は古い方です。1953(昭和28)年、国道163号線の工事の際、新しい塔の下から、2つに割れた古い塔が掘り出されたため、修復後に並べて建てられました。1974(昭和48)年には、国道163号線の改修工事で現地に移され、今にいたっています。
元となったエピソードが作られた時期や、その後の石塔の変遷から、この地の歴史の古さを改めて思い知りました。江戸時代のガイドブックには新しい方の鴈塔が描かれており、観光資源としての歴史自体も長いんですね。
また「鴈塔」の横には、1877(明治10)年の西南の役で犠牲となった人々のための「西征戦死招魂碑」が建立されています。こちらもまた、地域の歴史を感じさせてくれる石造物です。