富士通を率いるB.T.テーブスコーチが語る町田瑠唯とバスケットボール人生
出会いから8年。富士通レッドウェーブのBTテーブスは、町田瑠唯の成長や生き様を間近で見てきたカナダ出身のコーチ。このインタビューでは、WNBA挑戦のプロセスで重要な役割を果たした指揮官からワシントン・ミスティックスで奮闘し続ける町田や、バスケットボール選手として努力している息子たち、そして自身のキャリアについて、いろいろと話を聞くことができた。
Q 町田瑠唯選手がWNBAのワシントン・ミスティックスで奮闘中です。話せる範囲でWNBAへの挑戦が実現するまでのプロセスを話していただけますか?
「まあ、私が思うプロセスはよく文書化されていますし、だれもが本当にプロセスを知っています。記者会見の時に瑠唯も私もジェネラル・マネジャー(GM)も、それが何なのかを説明したので、それと大差ないです。基本的にはオリンピックの後、私はGMに瑠唯の人生がすぐに変わるだろうと言いました。すぐに有名なるということです。しかし、私は彼女がもう少し早くいくつかのオファーを得るだろうと思っていました。
しかし、私に少し偏見があることはわかっています。とても期待していたのですが、なかなかそういう情報が来なかったのです。だから、オリンピック以前には瑠唯を見る人が少なかったのかな、と思っています。
しかし、ワシントンは以前から彼女を見ていたことがわかりました。そして、ヘッドコーチがメールで連絡をくれたのです。それからたくさん話をするようになりました。瑠唯へのオファーがトレーニングキャンプだけではないことを確かめたかったのです。なぜなら、彼女は英語が話せません。それに、彼女は(選手として)年齢を重ねています。彼女はトライアウトのためだけに行くつもりはありませんでした。たとえケガや悪いプレーがあったとしても、基本的にシーズンが終わるまでは契約が保証されていると、ワシントンは我々に言ってきたのです。 それでこのようになったのです。長いプロセスでした。
正直に言いますと、僕にとっては難しいプロセスでした。彼女にはエージェントがいません。しかし、瑠唯のためです。私たちは8年間一緒に仕事をしてきました。そして、バスケットボールのことならば、彼女のために何でもするという思いでした」
Q 町田選手の決断について、テーブスコーチは何か感じたことはありましたか?
「いや、特に。もし彼女が興味を持っていたら、とにかくやってみるように勧めました。そして彼女は、少し不安もありましたが、やってみることにしたのです。たとえうまくいかなかったとしても、そこから人生の教訓を得ることができます。
そして、ミスティックスも彼女が快適に過ごせるように配慮してくれましたし、私たちは通訳の候補となる方々と面接をしました。つまり、彼女は完璧な環境を手にしたのです。正直なところ、彼女がいかにいいプレーをするかにかかっています。しかし、全部が全部彼女のせいというわけではありません。チームにはそのチームのシステムがあり、今の彼女には合っていない部分もあります」
アグレッシブに攻める姿勢が大事
Q 初めて出会った時のこと、プレーを見た時の第一印象を詳しく話してもらえますか?
「8年前に初めて瑠唯に会った時のことですか? 私の第一印象は(長男の)海と同じようなタレントだと感じました。素晴らしいパスを出す選手で、とてもユニークな能力を持ちながらも、オフェンスに参加しないのです。
私が富士通に来て最初にやったことは、試合で捨てられていたところを分析しました。そしてそれを瑠唯に全部見せました。パスの後に逆サイドへ行って捨てられるから、オフェンスが4対5になってしまうので“どうする?”と問いかけたのです。そこから上手にフェイスアップ(ゴールに正対すること)やゴールに向かって攻撃的なオフェンスを意識しながら、彼女は少しバランスよくプレーできるようになったのです。それが私の第一印象でした。このアドバイスによってより攻撃的な選手になり、今のようなプレーに繋がっているのです」
Q 町田選手の存在がチームの成功に欠かせない要素と思えるところとは?
「シンプルな話です。私たちのシステムはシーズンごとに変化します。ルールがある中での純粋なモーションによるコンビネーションで、たくさんのセットがあるのです。宮澤夕貴が入ってくる以前や(オコエ)桃仁花がレベルアップするまで、我々にはスーパースターの選手がいませんでした。
理想的なのは全員がアタックし、全員が自分のマークマンを守るチームバスケットです。スカウティングに関係なく、一人に頼りすぎたら絶対にダメです、町田でも。彼女はそういったシステムでパスを優先するガードなので、ちょうどいいのです。周りがもう少しオフェンスのスキルをあげられれば、町田は逆にもっと見えるようになります。
うちはディフェンス・ファーストのチームであり、去年も今年もスタッツ的にはリーグNo.1のレーティングでした。ディフェンスからのトランジションを全員が意識して、ハーフコート・オフェンスでボールや脚が止まってしまう、シュートが入らないといったダメなところもあります。しかし、基本的にディフェンスのチームですし、町田の性格は富士通のバスケットにピッタリです。ハードワーク、ディフェンス・ファースト、チームプレー。代表とあまり役割は変わらないと思います」
Q 町田選手の出場時間が減少傾向にあります。スカウティングされたことで持ち味を発揮できないまま、試合が終わることもあるようです。ここから彼女が再び出場時間を増やすために欠かせない要素は何でしょうか?
「お互いに責任があると思います。ミスティックスはトランジションからの得点、トランジションのポゼッション数の両方でWNBAの最下位です。しかし、とてもいいチームです。瑠唯は、他の選手と同じように広い視野やパスセンス等の特別なスキルを持っているものの、オフェンス面で少し劣るかもしれません。だから、彼女に合ったシステムを用意するか、彼女が試合に出るのであれば、フォーカスを変えなければならないのです。
そして一番大きいのは、彼女が試合に出ても彼女の良さが出ていない気がしています。ミスティックスはベテランが多く、ハーフコートのオフェンスのチームです。エレーナ・デレ・ダン、アリシャ・クラークは本当にいい選手ですが、彼女たちはハーフコートゲームの選手であり、コーナーに走っていくことはないのです。ミスティックスはだれもコーナーに走りません。
だから、瑠唯がボールを持ってプッシュしても、彼女の前にチームメイトがだれもいないのです。私たちがやるようなドラッグ・スクリーンを使うシステムはありませんし、たとえあまりよくないドラッグ・スクリーンであっても瑠唯はズレを作ることができます。そういった例からしても、あまりフィットしていないと思うのです。その一方で、彼女はゴールを見ていないし、ショットも打っていません。
2週間おきくらいに(瑠唯と)話をするのですが、私のチームでも同じことなのです。本当に重要な場面になると、私は彼女がアグレッシブになるようによりプッシュしなければならないのです。彼女はステップアップします。平均得点やショットの成功率は毎年上がっていますし、キャリア通算の3P成功率は35%。多くの人がそれに驚くと私は思っています。私のチームのシステムは瑠唯に合っていますし、シュートを決めることができると彼女もわかっています。自分で責任感を持たなければならないと、彼女には伝えています」
国際試合での町田は相手にとって非常にタフなマッチアップ
Q 東京五輪前の町田選手は、ポイントガードとして代表に残れるかどうかというかなり厳しいポジションにいましたが、そこから飛躍しました。テーブスコーチから見て、彼女が素晴らしいパフォーマンスを発揮できた理由はどんなことだと思いますか?
「2つ理由があります。まず、国際試合での瑠唯はタフなマッチアップになります。彼女のスピードについていけるガードはほとんどいません。スピードは命取りになるのです。正直なところ、瑠偉に何ができるかを理解しているアメリカが対策するまで、他国のスカウティングはよくなかったと思います。アメリカは(グループ戦における)最初の試合を見て、スクリーンに対してアンダーを使い、ハイボール・スクリーンは効果を発揮しませんでした。
2つ目は、オリンピックでも見せた彼女の経験値です。最も安定したポイントガードであり、弱点があるにしても精神的にとても強いと感じました。また、トム(ホーバスコーチ)には彼が望むバスケットボールがあり、それを実現できるタイプのガードだとわかっていましたし、実際に瑠唯もそれをやってのけたのです」
Q 英語を話せる選手が増えれば、世界レベルで活躍できる日本代表選手はWNBAで活躍できる可能性が増すという印象をお持ちですか?
「言葉の壁は大きな問題になると思います。瑠唯はまったく英語が喋れません。正直なところ、それは大きな問題です。瑠唯は29歳、旭川出身で英語が好きではありません。もし若い選手、トヨタの山本麻衣が少し英語を話せて興味を持っていたら、より積極的になるのではないでしょうか。
彼女は攻撃的な選手です。攻撃的というのは、得点できる、距離の長い3Pショットを決められるという意味です。私は安間志織(イタリアのUmana Reyer Venezia)よりも山本を気に入っています。安間のほうがスキルを持っていますが、山本はWNBAにフィットするスキルセットがあると思います。素速いし、ボールをプッシュできるし、長い距離の3Pが打てますが、安間はドリブルやアイソレーションを使い、プルアップのジャンプショットが上手です。もし名前をあげるなら山本になりますが、それでもちょっと難しいかもしれません。
数年前だったら、コーナーにステイして、サイズもあるうちの宮澤がピッタリだと思います。(オコエ)桃仁花はWNBAを目指していると思いますが、今は足りないところが多いです。能力は高いですが、安定感のあるプレーをしていません。去年はリーグ戦で一番頼りにした選手でしたが、プレーオフに入って相手がどんどんタフになるといつものことができなくなるなど、まだ課題があります。
Q WNBAのシーズン終了後に再び富士通でプレーすることになる町田選手に対し、どんなことをチームにもたらしてほしいと思っていますか?
「瑠唯はチャンピオンシップを勝ち取ることに強い意欲を持っていると思いますし、去年もその話をしました。シーズン途中まで全部勝っていましたが、内容的にはよくなかったです。チームの中でミーティングをして、何が足りないか? 勝つためにはここからどう進めばいいか? そういう話をしてからチームが徐々に変わり、中村(優花)と宮澤がうちのシステムにも役割にも慣れてきて、トヨタとのファイナルまで進みました。
倒したことがある相手だから、うちの選手たちはとても自信がありました。ゲーム1は4Qまで完全にレッドウェーブの試合だったと思いますが、選手たちが勝てそうだと思ってから急に焦り出してしまいました。トヨタは大事な時間帯で良いプレーをし、タフなショットも決めていましたが、逆にうちは(心身両面で)ブレてしまい、勝利を掴むことができませんでした。試合後、みんなが本当に勿体ないことをしたと思っていて、次の試合はあまり自信がない状態でプレーしていました。
さっき聞かれた質問は、瑠唯が来年に向けてどんなアプローチをするかということですが、去年のことがありましたし、WNBAの活躍も今まで微妙な感じですので、どうしても今シーズン優勝を取りに行きたいです。多分オフェンスもいつも通り私から何も言わず、彼女がガンガンアタックするということですね」
自身のキャリアと2人の息子たちに対する期待
Q 黒田電気でプレーしたことで日本との縁ができるきっかけになり、奥様との結婚後に生活拠点が日本になり、すでに25年以上の時間が経過しました。テーブスコーチにとって日本という国はどんな意味を持っていますか?
「実際には32年なんですけどね。まあ、人生の半分以上といったところでしょうか。ここは私の住処であり、本当にホームなのです。ちょっと特殊な状況ですね。私は日本で最高のコーチというわけではありませんが、ユニークな経験をたくさん積んできました。トム(ホーバス:日本男子代表コーチ)と同じように、コミュニケーションは本当に重要だと思っています。私はバスケットボール一家の一員であり、海と流河という息子がいます。うちはバスケットボールが命なのです。私が高校の男子、大学、女子のコーチをやってきたことは、とてもユニークな経験です。
私は(2012-13シーズンの)JBL2で優勝経験がありますし、指揮したチームの80%近くは勝っていると思います。しかし、ファイナルで負けたことが3回もあります。だから、どうしても勝ちたいんです。瑠唯のような人のために、そして富士通という会社のためにです。富士通は7〜8年前から本当に私をバックアップしてくれているのです。
うちのチームは人気が出てきていると思います。プレーのレベルも上がりましたし、選手も集めやすくなりました。正直なところ、男子バスケットボールが恋しくなったりもするのですが、人々は最近、私のことを女子のコーチだと思っているようです。少し複雑な心境ですが、今の状況にはとても満足しています」
Q 長男のテーブス海が宇都宮ブレックスのB1制覇に貢献し、このオフに滋賀レイクスへ移籍しました。ノースカロライナ大ウィルミントン校(UNCW)を2年生のシーズン途中で辞め、Bリーグでプレーすることを決めた海のパフォーマンス、成長についてどのように感じていますか?
「当時、最大の問題は海がUNCWを去らなければならなかったことだと思います。チームは滅茶苦茶な状態でした。妻と私はどうしても彼に他の大学に行ってほしかったのです。BYU(ブリガムヤング大)とか、トップレベルのチームからいい勧誘がありました。
しかし、NCAAの規則で彼は1年間プレーできなくなります。有名なチームであろうとなかろうとね。本人はどうしてもそれをやりたくなかったのです。その時、海と私は、もしあなたがアメリカに残っても成長しないのならば、どうやって成長するのだろうか? プロとしてどうやって成長していくのか? もしどこかのレベルの低いチームに行って30分プレーできたとしても、成長は望めないかもしれない。だから、ブレックスが興味を持っていると伝えると、海も興味を持ちました。
私は彼に“このチームはルールがたくさんあって大変だよ”と伝えました。その時は、海も持ち味をもっと出せると思いましたが、ブレックスはハーフコートゲームのチームです。速攻でコーナーにしっかり走る選手はだれもいません。しかし、鵤(誠司)は素晴らしいポイントガードです。もともとバスケットボールIQの高くなかった海が、ブレックスのおかげで多くを学びました。勝つためには何が必要かを本人が学んで、これから次のチーム(滋賀)で生かせると思います。
海はブレックスに残る選択肢もあったと思います。しかし、彼はまだ若いし、だれもが彼のスタイルとは違うと知っています。だから、持ち味を生かすために移籍しました。やってみようかというような感じです」
Q 先日のワールドカップ予選で海は日本代表デビューを果たしました。アジアカップでもメンバーに選ばれましたが、今後の彼に期待することは?
「彼がチームに入ったのは、トムと僕のバスケの考え方が似ているという理由もあると思うのです。私たちは何年も前から友人です。彼が(ENEOSの)アシスタントで私が(前に富士通の)ヘッドコーチだったころ、いつもバスケットボールの話をしていました。彼が女子日本代表チームにしたことは、私にとって驚くべきことではありません。
ただ、彼が男子チームでやろうとしていることは、もっとずっと難しいことなのです。同じようなプランではできません。彼はそれを理解し始めていますが、海の場合はトムのバスケットボールに合っていると思います。トムは私のような白黒はっきりしているコーチです。トムは私よりもはっきりしていて、私のほうが少しグレーゾーンがあります。トムは海にトランジションでボールをプッシュし、ピックを使い、リスクリーンでアタックし、大学時代のようにボールをキックアウトすることを望んでいるのです。彼はそれをやってのけたのです。
しかし、海にとって次のステップは、一貫して得点できるようになることです。少なくともブレックスは一つ一つのポゼッションを大事にし、失敗したりターンオーバーをしたりするのはダメなチームなので、海にとっては困難なことでした。海はそういった選手でないのです。
例えば、30分試合に出てボールをどんどんプッシュし、ペイントにアタックしてディフェンスを崩し、アシスト8本、ターンオーバー2本だったらいいと思います。富樫(勇樹:千葉ジェッツ)や安藤(誓哉:島根スサノオマジック)と一緒。でも、ブレックスのバスケットのシステムでそれを行うのはちょっと難しいのです。一方で、トムの場合は似たようなことができると思います。試合の時間帯によっては、アタックしてターンオーバーになっても大きな問題にしないけど、結果をしっかり出さなければなりません。海は今、とても快適に感じていると思います」
Q 次男の流河(ルカ)も兄の海と同様に高校の途中で渡米しました。流河の成長プロセスに関してどんな手応えを感じていますか?
「第一に、2人はまったく違う選手です。流河は本当に安定したショットを持っていますし、IQがとても高く、非常に優れたスキルの持ち主です。ハンドリングと判断の部分がいいということです。流河がミニバスを早い段階からやっていたのに対し、海は始めたのが遅かったので、ファンダメンタルの部分が全然違います。
流河は幸運だと思います。海がこの道に進むパイオニアとなり、流河も同じ道をたどって同じ学校に行ったから、楽だったと思います。今のところ流河は、(NCAAの)ディビジョン1のハイメジャーと呼ばれるチームから多く声をかけられています。今年はデイビッドソン大(NBAゴールデンステイト・ウォリアーズ所属のステフィン・カリーの母校)からオファーされると思っています。デイビッドソン大は流河の試合を4回連続で見に来てくれましたし、ビッグテンやアトランティック10の大学も興味を持っています。この前はカリフォルニア州でトーナメントがありましたが、ロヨラ大シカゴやシアトル大など、海より高いレベルのチームから声をかけられているようです。流河は(大学入学まで)あと2年あるので、すぐに決めなければいけないというプレッシャーが何もありません。
ただし、海とはフィジカルが全然違います。流河はスピードとテクニックがありますけど、身長が185cmしかありません。今年は体重が3〜4kg増えましたが、まだ身体のほうは成熟していません」
Q 同じ時期だと海のほうがよりフィジカルだったということですか?
「間違いないですが、海はスキルではかなり劣っています。選手としてのメンタリティも全然違います。私が海に対してしつこすぎたことなど、多くのミスをしました。流河の場合はおじいさんのように、なんでもOK、がんばれがんばれという感じでしたので、学びましたね」
町田とともに目指すのは富士通のWリーグ制覇
Q テーブスコーチとしては昨季が富士通で3度目となるWリーグ準優勝でした。昨季のよかった部分はどんなところですか?
「ポジティブな面としては、ディフェンスがとても堅実でした。3Pショットが決まらないときでも、多くの試合に勝つことができました。我々は3P成功数がリーグ最多で、恐らく1試合平均10〜11本だと思います。ディフェンスでしっかり止めたら走ろうということもあって、トランジションゲームのスタッツもよかったのです。
だから、自分たちのスキルを最大限に生かすことはできたのですが、ただ、インサイドに良い選手がいなかったんですね。渡嘉敷(来夢)も、高田(真希)もいません。だから、スペーシングに頼らざるを得ないのです。勝つために何をすべきかがわかっていたことが、去年はよかったと思います。
そして、それをやり遂げることでファイナルに進みましたが、惜しくも敗れてしまいました。トヨタはタレントが揃ったチームですから、もし僕らがファイナルで勝てば、史上最高級の波乱になっていたでしょう。僕たちは勝てると思っていました。だから、選手たちはいいシーズンだったと思いながらも、悔しい思いが残っています。チャンスはありましたが掴めなかったのです。ほとんどの選手は残っていますが、篠崎(澪)が引退してここにいないことは、とても大きなことです。しかし、選手たちは今シーズンに自信を持っているような気がしています」
Q 皇后杯やWリーグで優勝するために必要なことは?
「今のロスターを見てみると、去年のレベルにはないと思っています。去年は3Pショットのパフォーマンスが最低レベルで、恐らく32%くらいでした。普通なら36〜37%です。若手選手の誰かが何らかのステップアップをするという驚きをもたらすかもしれませんが、だれも篠崎の代わりにはなれないのです。選手たちにとって最も大事なのはディフェンスであり、次に私とコーチ陣が若手を成長させることです」
Q コーチとしてワクワクする瞬間、今後の楽しみはどんなことですか?
「私は常に篠崎や町田のような選手をリクルートすることを心がけています。彼女たちは毎日の行動が完璧なのです。あまり人に“こうして”とか喋ったりするリーダーシップではなく、背中を見せながら引っ張るタイプ。毎日のルーティンもありますし、2人とも伝統に忠実な選手ですが、今の子たちはそうじゃないのです。そういった選手になる必要はないですけど、もう少しガッツを見せることと、シュート力がないときついです。バスケットボールのスキルでシュートが一番大切で、その次がガッツ。それがあればディフェンスは教えられます。次世代の町田や篠崎といった選手たちを私は探しています。
我々は毎年、少しずつシステムを変更します。シーズンの途中であっても、常に何かを変えています。私がやりたいことは、対戦相手がスカウティングしにくくするということです。ここ2年で成功を手にしたので、リクルートはしやすくなりましたし、将来的にいい選手が来ると思っています」
Q 最後に、テーブスコーチにとってバスケットボールはどんな意味がありますか?
「バスケットボールは、人生を写す鏡のようなものです。本当にいろいろな部分があると感じています。例えば、仕事の仕方、選手の情熱、選手が見せる姿、コーチが見せる姿、チームがファンに見せる姿、もしかしたら富士通のファンでなくても、情熱がどのように見えるか、などです。人々に“富士通のファンになりました”と言われることが私はうれしいです。私がなぜ? と尋ねると、“あのようなバスケットは見たことがない。全員がボールを触って、ボールを動かしているので、すごくワクワクする”と返ってきます。
もちろん、バスケットボールで最も重要なことは、先ほど言ったように人生を写す鏡のようなものです。人生の次のステージに進むうえでも、いろいろなことをレッスンとして学ぶことになります。人生の次のステージが、あなたの人生にとって最も大事なのです。コーチ以外はバスケットボールに関わる人生は短いです。選手はうまく行けば10年ですが、その間に学ぶことがたくさんあります。なので、バスケットボールには次の人生に進むためのレッスンが多いと思っています」