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B1ファイナル:ペイント内でのディフェンスと3Pショットで違いを作った琉球が2連覇に王手

青木崇Basketball Writer
足首の痛みを抱えながらも今村は5本の3Pを決める大活躍 (C)B.LEAGUE

 ファイナルの舞台に立つのが3年連続ということもあり、琉球ゴールデンキングスのメンバーたちは試合前から落ち着いていた。横浜アリーナもファイナルの舞台も初という広島ドラゴンフライズに対し、今村佳太と岸本隆一が3Pショット、ジャック・クーリーもレイアップを決めるなど、試合開始早々から琉球が強みを発揮。いきなりの8連続得点で主導権を握っただけでなく、広島に対して回復までに時間がかかるダメージの大きいパンチを当てることに成功したのである。

 3Q途中でリードを24点まで広げた後から4Qにかけて広島の追撃に直面したものの、琉球は試合の大半で2ケタのリードを維持してゲーム1を制した。桶谷大コーチは試合をこう振り返る。

「スタートのメンバーと今日最後のクロージングで松脇を含めたメンバーが、すごく落ち着いていると僕には見えました。スタートもそうですし、ゲームエンドでも本当に選手たちがすごくこの舞台に慣れているというか、慌てずにプレーしているというのはすごく感じていました」

 広島は1Qで中村拓人、ニック・メイヨ、山崎稜、ケリー・ブラックシアー・ジュニアが3Pショットを決めたものの、2Qになると自分たちのリズムでオフェンスを遂行できない時間帯に突入。5分33秒にブラックシアー・ジュニアがオフェンシブ・リバウンドから1本決めるまで無得点だった広島に対し、琉球は松脇圭志と牧隼利が3Pを決めるなど、ベンチから出てくる選手たちもいい仕事をしていた。

 広島にとって大きな誤算は、試合を通じてペイント内にアタックしていたものの、フィニッシュで精度を欠いたこと。ペイント内のFGは34本中13本の成功に終わり、38.2%の成功率がレギュラーシーズンもチャンピオンシップを含めた今季最低の数字だった。

「彼らを称賛するしかない。すごくディフェンスのいいチームだし、ペイント内をしっかり固めていた」とは、試合後のブラックシアー・ジュニア。広島のフリースロー試投数が8本(4本成功)と少なかったことと、ドウェイン・エバンスを7点に限定させたことは、琉球のディフェンスが素晴らしかったことの証。桶谷コーチは選手たちの奮を称えた。

「本当にビッグマンたちが体を張っていたなと思います。スリービッグになったときのミスマッチのシチュエーションでも、うちは松脇があそこをマッチアップしていたんですけど、本当に体を張って簡単にベイントでイージーなレイアップを決めさせなかったという印象があります」

ブラックシアー・ジュニアが積極的に攻めて15点を奪うも、チームとしてペイント内でのFG成功率は38.2%と低調に終わった広島 (C)B.LEAGUE
ブラックシアー・ジュニアが積極的に攻めて15点を奪うも、チームとしてペイント内でのFG成功率は38.2%と低調に終わった広島 (C)B.LEAGUE

 ファイナルのゲーム1で決定的な違いとなったのは、3Pショットだった。琉球はアルバルク東京と千葉ジェッツのディフェンスにオフェンスが苦しみ、3試合連続で70点未満の試合を経験。オープンでショットを打てる形をクリエイトすることでも、苦労するシーンが多かった。

 しかし、ファイナルのゲーム1は開始早々に今村と岸本がそれぞれ最初の試投で3Pを決め、リズムをつかめるきっかけを作ることができた。広島が4Qで追撃態勢に入り、点差がさらに詰まりそうな事態に直面しても、琉球は松脇、今村、岸本の3Pショットで悪い流れを断ち切ることに成功。2分28秒の今村は8点差に詰め寄られた後、1分52秒の岸本はターンオーバーになりそうなルースボール争いで勝った後のビッグショットだった。5本を決めて勝利に大きく貢献した今村は、3Pショットについて次のように話す。

「僕たちには“ゴリ”と呼べるジャック・クーリーがいる。(リバウンドの強い)彼がいることで僕たちシューター陣はすごく気持よくシュートが打てます。クリエイトやアタックが自分の魅力だと思っていますけど、足首(の状態)のこともそうですし、コンディショニングのことを考えたうえで、今の自分が一番自信を持ってできるというのはシュート。そこで迷いなくクリアにできているというのが、すごく確率よく決まっている理由だと思います」

 琉球の3Pショット15本成功は、昨年千葉とのゲーム2で記録した13本を更新するもの。広島のFG成功率を38.5%に抑えた強固なディフェンスと3Pショットの大量生産で勝利を手にした琉球は、B1史上2チーム目となる2連覇に王手をかけた。

Basketball Writer

群馬県前橋市出身。月刊バスケットボール、HOOPの編集者を務めた後、98年10月からライターとしてアメリカ・ミシガン州を拠点に12年間、NBA、WNBA、NCAA、FIBAワールドカップといった国際大会など様々なバスケットボール・イベントを取材。2011年から地元に戻り、高校生やトップリーグといった国内、NIKE ALL ASIA CAMPといったアジアでの取材機会を増やすなど、幅広く活動している。

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