任天堂決算でゼルダ&マリオ好調の報道 「でも見覚えが…」
任天堂の2024年3月期第2四半期決算が発表されました。半年間(4~9月)の売上高は前年同期比の21.2%増の約7962億円、本業のもうけを示す営業利益は同27.0%増の約2799億円でした。家庭用ゲーム機「ニンテンドースイッチ」の売れ行きが鈍っていますが、営業利益率は高水準(30%弱)をキープ。そして、中間最終利益が過去最高であることから、各社の記事も業績好調としています。
一方、日ごろから決算記事を読む人は、今年5月に発売されたゲーム「ゼルダ」や同じく4月公開の映画「マリオ」がヒットしたという話に「どこかで見たことがあるような……」と思うかもしれません。実はその気付きは的を射ていて、3カ月前の第1四半期決算と似た見出し・記事になるからです。
なぜか?というと、「第2四半期決算」には「二つ」の考えがあるからです。4月~9月までの「半年間」と、7~9月の「3カ月間」ですね。決算発表のメインは前者の数字で書かれていますが、任天堂のホームページには、3カ月ごとに売上高と営業利益を見せるグラフもあります。
今回の場合、四半期で見ると、第2四半期(7~9月)の売上高と営業利益は前年同期比でいずれも減少する「減収減益」です。しかし第1四半期(4~6月)は絶好調で、比較すると第1四半期のすごさが際立つことになります。
映画マリオもゼルダも、本来は第1四半期の話ですから、第2四半期の決算で両コンテンツが好調!という記事を見ても、普段からよく見ている人は、「今さら……」となるわけです。もちろん記事の内容は正しいのですが、3カ月前に書いた見出しの使いまわし感はぬぐえません。
とはいえ、記事を書く側からするともう一つポイントがあって、第2四半期の落ち着いた数字よりも、通期予想の修正の方に目が行きます。何せ、売上高予想を1300億円、営業利益予想を500億円もアップしています。最大商戦期である第3四半期(10~12月)の業績に注目でしょうか。何せゲーム機(ニンテンドースイッチ)本体が普及している分、売れにくくなっているだけに、ソフトの力でどこまで売上高や営業利益を伸ばせるかです。そして、後継ゲーム機の投入時期にも影響してくるのではないでしょうか。
ただし難しいのは、ゲームビジネスは人気次第で振れ幅が他の商品以上に大きく、予測を大きく外すことが度々あるからです。例えばニンテンドースイッチの発売3年目(2018年度)ですが、年間2000万台の計画に対して、結果は1695万台に終わりました。ところが次年度(2019年度)は1800万台の期初計画に対して2103万台。さらに次(2020年度)は、期初計画1900万台に対して、実際は2883万台を出荷しました。
そして今回の通期予想の上方修正が示すところは、「ゼルダの伝説」の大ブレークは、任天堂の想定を大きく上回ったことではないでしょうか。今でこそ「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」(2017年発売)が世界累計出荷数3115万本、「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」(今年5月発売)が同1950万本になり、キラーソフトの一つになりました。しかし、以前のゲーム機では、「ゼルダの伝説」シリーズが、任天堂の主要タイトルの販売実績で、上位に来ることはほぼなかったためです。
そして「ゼルダの伝説」の出荷数が、さらにどこまで伸びるかも気になります。「ブレス オブ ザ ワイルド」と続編「ティアーズ オブ ザ キングダム」の差は1000万本以上あるので、まだまだ売れそう。そもそも「ブレス オブ ザ ワイルド」も、いまだにコンスタント(半年で世界出荷数100万本以上)に売れています。そして「ゼルダの伝説」が売れるほど、他のタイトルにも良い影響を及ぼすでしょう。ニンテンドースイッチの長寿化を考えると理想的ではあります。
後継ゲーム機の投入時期で、いろいろ話題になり続けるのでしょうが、ここまでくれば、家庭用ゲーム機の製品寿命をソフトの力でどこまで引っ張れるのかが気になるところですね。