安倍元総理とトランプ前大統領の密なる関係の背後には旧統一教会が存在した
フーテン老人世直し録(657)
文月某日
16日の東京新聞に、自民党の片山さつき参議院議員が安倍元総理の暗殺事件を巡り、奈良県警の報道発表を警察庁がチェックするよう警察庁長官に要請したという記事が掲載された。
記事によると、13日の朝に経済評論家の渡辺哲也氏が片山氏宛てに「奈良県警からメディアなどへの不確実な捜査情報の漏洩が起きている」とツイートがあり、片山氏は「警察庁長官は後輩、かつ知人なので、聞いておきます」と返答した。
そして午後6時過ぎ、片山氏は「警察庁長官に『奈良県警の情報の出し方等万般、警察庁本庁でしっかりチェックを』と慎重に要請致しました。これ以上の詳細は申せない点ご理解を。霞が関を肌で理解する者同士の会話です。皆様の感じられた懸念は十分伝わっています。組織に完璧はありませんが、国益を損なうことはあってはなりません」とツイッターに書き込んだ。
これまでの奈良県警の報道発表の何が問題なのか、何が国益を損ねるのか、それを東京新聞は取材したが、片山氏は「特段お答えすることはございません」と言い、警察庁広報室は「相手方との関係もあるため、やりとりの有無も含め、お答えは差し控えます」とコメントしたという。
フーテンはかつて検察や警察を取材した経験から、捜査当局の報道発表をそのまま鵜呑みにしない癖がついている。当局は世間の受け止め方を考慮するので、全ての事実を明らかにすることはないからだ。
だから発表された内容により、当局が国民にどのように受け止めさせようとしているかをまず考える。次に発表内容に矛盾はないか、それだけで納得できるか、納得するにはどのような情報が不足しているかを整理してみる。
納得できればそれで済ますが、できなければそのままにしておく。当局の結論を信じることをせず宙ぶらりんの状態にして、その後に新情報が出てくれば、それを加えて真相を考える。
今回の暗殺事件で当日の映像からフーテンが感じたのは、山上容疑者が身を賭して安倍元総理を殺害しようとする強い意志である。銃器を持って要人に近づこうとすれば射殺される可能性がある。しかし山上容疑者はひるむことなく安倍元総理に近づき、1発目を撃った後さらに近づいて2発目を撃った。そして逃げることも抵抗することもなく警察に逮捕された。
その映像と複数の手製の銃と爆弾を作っていたという情報から、フーテンは安倍元総理暗殺を企てた本格的なテロリストの出現と思った。ところが「政治信条に対する恨みではない」と最初に発表された。
すると「モリカケ桜」など政治の私物化に対する憤りが動機かと思ったがそれも違った。動機は旧統一教会によって家庭生活が破壊された個人的恨みだという。その時点でフーテンは旧統一教会に対する恨みと安倍元総理殺害の強い意志とが結びつかず、警察が選挙に影響しないよう、政治テロではなく私的な怨恨を動機にしたのではないかと疑った。
しかしその後の発表で次第にそれが結びつくようになる。山上容疑者が最初にテロを決行しようとしたのは安倍政権下の2019年10月である。愛知県で行われた旧統一教会系のイベントに参加するため来日した韓鶴子総裁に火炎瓶を投げようとしたという。しかし会場に入れずに断念した。
その頃、山上容疑者はツイッターに「オレが憎むのは統一教会だけだ。結果として安倍政権に何があってもオレは知らない」と投稿していた。統一教会と安倍政権の関係性を認識したうえで統一教会が主たる敵という意味だ。愛知県で行われた集会では安倍派の前の会長であり現衆議院議長の細田博之氏が基調講演を行っていた。
安倍元総理の祖父岸信介氏と旧統一教会との関係はあまりにも有名だ。山上容疑者は岸氏が旧統一教会を日本に招き入れたことを知っている。そして父親の安倍晋太郎氏も旧統一教会と親密で、旧統一教会の会員を日本の国会議員秘書にするよう働きかけを行っていた。
政治家にとって宗教団体は固い組織票を持ち、手弁当で選挙応援をしてくれるありがたい存在だ。一方の宗教団体は政治家を組織拡大のための広告塔として利用する。旧統一教会は反共を主張する団体で、岸元総理の流れをくむ清和政策研究会(安倍派)と親和性がある。
従って安倍派には旧統一教会に支援されて当選した議員が複数いる。かつて安倍元総理の首席秘書官を務め、今回の選挙で比例で当選した井上義行参議院議員や、去年の補欠選挙で比例から選挙区に鞍替えした北村経夫参議院議員はいずれも安倍元総理と近く、旧統一教会が特に手厚く支援した議員である。
片山さつき議員は二階派から安倍派に派閥を変えた矢先にこの事件が起きた。しかもまだ正式に安倍派への入会を認められていない。警察庁長官に圧力をかけて安倍派に不利な情報を警察が出さないようにさせ、安倍派に自分の存在を誇示しようとしたのだろうが、どこが国益と結びつくのか、呆れてものが言えない。
山上容疑容疑者は最初のテロに失敗し、しかもコロナの流行で韓鶴子総裁来日の見通しがなくなった。そこでテロの対象が海外にいる主たる敵ではなく国内にいる次の敵に変わる。きっかけは昨年9月に安倍元総理が旧統一教会の関連団体「天宙平和連合(UPF)」のイベントに宛てたビデオメッセージを見たためだという。
「今日まで世界各地の紛争の解決、とりわけ朝鮮半島の平和的統一に向けて努力されてきた韓鶴子総裁をはじめ皆様に敬意を表します」と安倍元総理は動画メッセージで語ったが、このイベントには北朝鮮の金正恩と米朝交渉を行ったトランプ前米国大統領もメッセージを送っていた。
安倍元総理の功績の一つとして、トランプ大統領と親密な関係を築き、日米同盟を強化したことが挙げられるが、今回の暗殺事件によってその関係の裏側には旧統一教会という異様な宗教団体が存在していたことがはっきりした。
安倍元総理とトランプ前大統領の関係は、正式に大統領に就任する前の2016年11月に世界の誰よりも先に面会できたことから始まる。それには旧統一教会の力添えがあったという噂が当時からあった。この事件でそのことに再び注目が集まると思う。
この記事は有料です。
「田中良紹のフーテン老人世直し録」のバックナンバーをお申し込みください。
「田中良紹のフーテン老人世直し録」のバックナンバー 2022年7月
税込550円(記事5本)
2022年7月号の有料記事一覧
※すでに購入済みの方はログインしてください。