「ファーはファッションではない」動物虐待である毛皮産業の廃止を、ノルウェーでデモ行進
21日、ノルウェーでは今年で14回目となる毛皮産業の廃止を求めるデモが各地でおこなわれた。
政府からの支援金で毛皮産業が続くノルウェーでは、毛皮ビジネスの廃止を求める声が強まっている。ノルウェーのデモは、欧州では最大規模ではないかとされている。
今年は首都オスロだけで4200人が参加。そのほかに30か所の自治体でも開催され、全国で8900人が足を運び、これまでで最高の参加人数となった。
中心部にある大通りを行進した後は、国会前で産業廃止を求めるスピーチがされた。
現地のファッション業界からは「Kjell Nordstrom」のデザイナーであるシェル・ノールストゥルム氏本人が登場。
「ファーはファッションではなく、動物虐待。この行進に参加する政治家に言いたいことは、何も変わらない現状に私たちはうんざりしているということ。みんなで国会議員にメールをして、『政治家としての仕事ができていないよ』と伝えましょう」と話した。
同氏と共に壇上に登場したのは、モデルであるレア・メイヤー氏。最近はドラマ『スカム』の登場人物を演じたヘンリック・ホルム氏の彼女としても注目を浴びている。
「ファッション業界や若い人たちの間では、もうファーは使われなくなってきています。政治家は、ばかばかしい毛皮産業とはお別れをするべき」とメイヤー氏は訴えた。
作家であるウンニ・リンデル氏は、「毛皮産業は、言葉を話すことができない動物にとってのアウシュヴィッツ強制収容所。この産業の存在をサポートする人々は恥じるべきです」と非難。
毎年、毛皮産業廃止を求める政党はこのイベントに参加するが、今年のサプライズとなったのは、与党である進歩党のレイルスタイン国会議員の登場だった。
同党からは青年部は過去に参加していたが、母党の国会議員が出たのは初。進歩党といえば毛皮産業を支持する党として知られているが、党内では意見がわかれつつあり、同氏は産業廃止派だ。
「キツネなどにも、犬と同じように檻の外で自由に走り回る権利があるべき。私の党に、政策を変えるように働きかけていきます。毛皮産業は、動物に無意味な苦痛を強いている」とレイルスタイン国会議員は話す。
オランダからは国会に5議席をもつ「動物党」のマリアンネ・ティム議員が参加。「私たちが議席をとるなんて、以前は誰も信じてはいませんでした。不可能は可能です。私たちを夢見るドリーマーだという人がいますが、ドリーマーは数多くいます」。
主催者である現地の動物愛護団体NOAHや他の動物愛護団体は、来年度の国家予算では政府からの支援金がカットされる見込み。一方、右派政権は毛皮産業に200万ノルウェークローネと支援を続ける方針だ。閣外協力する小政党は、首相らが意見を変えるようにこれからの交渉のテーブルで説得する構え。
右派側が毛皮産業の全廃に踏み切れない理由には、産業の消滅により失業者などがでるため。産業側は、痛みやストレスをそれほど伴わない、動物思いの優しい殺し方をしているとするが、全廃派を説得できていない。
Photo&Text: Asaki Abumi