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1年で6回も隔離を強要された女性。中国コロナ対策、“とばっちり”で日本人も隔離

宮崎紀秀ジャーナリスト
都市封鎖中の石家荘出身の女性は北京で隔離が必要(写真は2021年1月9日)(写真:ロイター/アフロ)

 中国では、新型コロナウイルスの感染者が出た場合、濃厚接触者のみならず、周囲に住む人なども有無を言わさず隔離してしまう防疫対策を採っている。過去1年間で、なんと6回も隔離を強いられた女性がいるという。

“初体験”は1年前

「今日、この1年で6回目の隔離生活が終わりました」

 中国メディア「中国新聞網」は17日、こう話す女性の体験を詳細に報じた。

 発言の主は、首都北京で仕事をする、河北省石家荘の出身の女性。石家荘とは、今年に入り感染者が増え、現在、封鎖(ロックダウン)されている都市だ。

 女性の“隔離遍歴”は、去年2020年の1月に遡る。湖北省の武漢を中心に、新型コロナウイルスの爆発的な流行が明らかになった頃だ。女性は、1月22日に南部の雲南省に旅行に行った。そして石家荘に戻って来た後、2週間の自宅隔離を求められた。隔離“初体験”である。

5日隔離の後、さらに14日隔離の“不運”

 その上、彼女が参加した旅行のグループに湖北省出身者の旅行者がいたので、女性は2週間の自宅隔離の後、濃厚接触者として石家荘市内の病院で隔離された。2回目の隔離である。

 女性は、病院での隔離を終えた後、2月23日に北京の仕事に戻った。その頃、北京は他の都市から来た人に対し2週間の隔離を義務付けていた。女性もその例に漏れず3回目の隔離。隔離生活を5日間耐えた後、あろうことかルームメートが戻って来た。隔離が必要なルームメートと接した時から、起算して彼女自身も2週間の隔離が必要になる。すでに5日間耐えた努力が無駄になってしまった。

デリバリー配達員が感染の“不運”

 その後、中国では感染の勢いが抑えられつつあるように見えたが、6月に入り北京の大規模食品市場で新たな感染者が確認され、再流行が懸念された。その際、彼女の会社で取ったデリバリーの配達員の感染が確認された。そのため、女性はまたもや2週間の隔離を余儀なくされた。4回目の隔離生活である。

 そして今年。2021年元旦の休暇に合わせ女性は石家荘の実家に帰り、休暇を終えた後、北京に戻り出勤した。冒頭で触れた様に、石家荘では新年に入り都市封鎖される程、感染が拡がった。女性は、出勤初日に警察から電話を受け、行動に関する説明を求められた。出勤2日目には3日間の自宅隔離の上、PCR検査を要求された。5回目の隔離である。

 さらに、彼女が住む地区の住民管理組織から、石家荘への訪問歴があるとして、自宅隔離を継続するよう通知された。そして昨日1月17日、晴れて6回目の隔離生活から解放され、冒頭の発言になった、という訳だ。

“とばっちり”で日本人も隔離 

 さて、こうした中国の徹底した隔離作戦は、中国に住んでいる限り、外国人も免れない。実際に複数の日本人も“とばっちり隔離”を受け、「自宅で取れるデリバリーだけが楽しみ」という、散々な年末年始を過ごした。

 去年12月、北京の外国人向けマンションに住んでいた1人の韓国人が韓国に帰国したが、帰国後にPCR検査で陽性反応を示した。すると北京のマンションでは、12月24日のクリスマス・イブに住人全員が集められPCR検査を受けさせられた。中でも、当該の韓国人と同じ棟に住む住人は、PCR検査の結果が陰性だったにもかかわらず、2週間の隔離を義務付けられた。複数の日本人駐在員も含まれていた。

 マンション側や住人は、措置の緩和を求めたが、「中国当局は一度決めたことは梃子でも動かなかった」(関係者)という。

隔離6回でもくじけない?女性

 さて、隔離生活を6回経験した女性の発言について、「中国新聞網」は次の様に伝えた。

「北京での生活はテンポが速く、ストレスも多い。自宅隔離の間は、生活が規則正しくなり、本を読んだり、料理を勉強したり、普段見る時間がなくて見逃していたテレビドラマを見ることもできました」

 隔離生活を6回も強いられたら、文句の1つも言いたくなるところだが、中国では当局の対策を批判する声はまず報じられない。この女性の様な、普通なら少し「イタい」経験さえも、当局の政策を後押しする“前向きの話題”として報じられる。

 女性は、自分の経験から皆にこう伝えたいと話したという。

「新型コロナウイルスに対し、重要なのはしっかり向き合うことで、パニックになることではありません。今、石家荘等では封鎖式の管理をしていますが、ウイルスの感染経路を断つ為には最も有効な手段です」

ジャーナリスト

日本テレビ入社後、報道局社会部、調査報道班を経て中国総局長。毒入り冷凍餃子事件、北京五輪などを取材。2010年フリーになり、その後も中国社会の問題や共産党体制の歪みなどをルポ。中国での取材歴は10年以上、映像作品をNNN系列「真相報道バンキシャ!」他で発表。寄稿は「東洋経済オンライン」「月刊Hanada」他。2023年より台湾をベースに。著書に「習近平vs.中国人」(新潮新書)他。調査報道NPO「インファクト」編集委員。

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