Yahoo!ニュース

ポストシーズンに進出した球団が、主砲やエースをトレードで放出!? その狙いはどこにあるのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
コリー・クルーバー(クリーブランド・インディアンズ)Jun 10, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 このオフ、シカゴ・カブスはクリス・ブライアントを放出し、クリーブランド・インディアンズはコリー・クルーバーカルロス・カラスコを手放すかもしれない。どちらについても、他球団からのトレードの申し込みに耳を傾ける用意があると、ESPNのバスター・オルニーが報じ、他の記者たちもそれを肯定している。

 カブスとインディアンズは、2年前のワールドシリーズで対戦した。以降も、両球団はポストシーズンに進出している。カブスは今シーズンで4年連続、インディアンズは3年連続だ。

 ブライアントは、2015年に新人王、2016年にMVPを受賞した。今シーズンは故障に泣かされたものの、過去3年はアンソニー・リゾーと屈指のスラッガー・デュオを形成。来年1月で27歳とまだ若く、FAになるのは3年後、2021年のオフだ。

 クルーバーは、2014年と2017年にサイ・ヤング賞を手にし、今年も3位以内が確定している。その陰に隠れているものの、カラスコも好投手だ。2017年はサイ・ヤング賞の投票で4位に入った。2人は来シーズンの開幕前後に33歳と32歳になるが、まだ全盛期を謳歌している。今シーズンはトレバー・バウアーマイク・クレベンジャーとともに、メジャーリーグ史上初の200奪三振カルテットを結成した。いずれも球団オプションを行使すれば、クルーバーはあと3年保有でき、カラスコも2年経つまでFAにならない。

 両球団は、来シーズンもポストシーズンをめざす。それなのに、主力を放出する――少なくともその可能性がある――というのは、理屈に合わない気もする。

 ただ、ブライアントが前年からホームランを16本減らし(29→13本)、OPSは112ポイント下がった(.946→.834)にもかかわらず、カブスはポストシーズンにたどり着いた。また、10月初旬には、ESPN1000のデビッド・キャプランが「優に2億ドルを超える延長契約の申し出をブライアントが却下」と語った。直後にジ・アスレティックのサハデ・シャルマが「それは真実ではない」と報じたが、いずれにせよ、契約延長の交渉は進んでいないようだ。

 インディアンズの場合は、2人のうち一方が抜けても、かなりのローテーションが組める。バウアーとクレベンジャーは開花し、5月末にデビューしたシェーン・ビーバーも、114.2イニングを投げて防御率は4.55ながら、K/BBは5.13を記録した。今シーズン、ア・リーグで規定投球回をクリアしてK/BB5.00以上は、クルーバーとカラスコの他には、ジャスティン・バーランダー(ヒューストン・アストロズ)しかいなかった。加えて、傘下のマイナーリーグでは、プロスペクトのトリストン・マッケンジーが順調に成長。来シーズンのローテーション入りも期待できる。

 ア・リーグ中地区に再建中の球団が多いことも、インディアンズには有利に働く。エースあるいは2番手クラスの投手を放出しても、地区優勝の筆頭候補であることに変わりはない。現在の隆盛を維持しつつ、将来に向けて才能ある若手を得るという算段だ。カブスもそうだが、考えているのは来シーズンのことだけではない。その先も見据えている。

 同じ成績を残していても、FAまでの期間が短くなるほど、トレード・バリューは下がり、交換に得られる選手の質あるいは量――もしくはその両方――は落ちる。しかも、来シーズン、30代のクルーバーとカラスコが不調に陥れば、衰えの兆候と見られるだろう。20代のブライアントにしても、2年続けて故障に見舞われたなら「インジャリー・プローン(故障しがち)」のレッテルを貼られかねない。そう考えると、その選手がいなくなってもポストシーズンをめざせるのであれば、トレード・バリューが高いうちに手放すのは、必ずしも奇策ではない。

 もっとも、3人ともFAまでの時間はまだあるので、カブスもインディアンズも安売りはしないはずだ。よほどの交換条件でない限り、首を縦には振らないだろう。今オフにトレードが実現する可能性は、50%前後だと思われる。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

宇根夏樹の最近の記事