第7波の流行後にコロナ後遺症の相談事例が急増 コロナ後遺症について現時点で分かっていること
新型コロナ第7波の流行はピークを過ぎましたが、少し遅れてコロナ後遺症の相談が増えてきています。
コロナ後遺症について現時点で分かっていることについてまとめました。
コロナ後遺症の相談件数が急増している
新型コロナ第7波の流行は過去最大の感染者数となり、およそ1000万人が新型コロナウイルスに感染しました。
新規感染者数はピークを過ぎましたが、少し遅れてコロナ後遺症に関する相談が増えてきています。
図は大阪府の後遺症相談件数の推移ですが、8月だけで3000件以上という過去にない規模の相談件数となっています。
新規感染者数のピークは8月中旬でしたので、コロナ後遺症に悩む方はこれからもしばらく増加する可能性があります。
コロナ後遺症とは?
コロナ後遺症で頻度が高いのは、図に示したように「倦怠感」「息苦しさ」「嗅覚異常」「脱毛」「集中力低下」などです。
報道などでは「コロナ後遺症」という言葉がよく使われますが、厚生労働省は「罹患後症状」と呼び、診療の手引きを作成しています(筆者も編集委員です)。海外では「LONG COVID」「Post COVID-19 condition」などと呼ばれています。
定義は様々ですが「発症から少なくとも4週以上経過してからも続いている症状」を指すことが多く、この中には咳など発症時からある症状もあれば、脱毛など回復してから新たに出るものもあります。
コロナ後遺症がなぜ起こるのかについては、まだ十分分かっていませんが、
・ウイルスの持続感染
・ウイルスによる組織障害
・自己免疫反応
・常在細菌叢の多様性の低下
・集中治療後症候群(PICS)
などが複合的に起こっていると考えられています。
コロナ後遺症が起こる頻度や起こりやすい人は?
コロナ後遺症は、海外の報告では5人から8人に1人くらいの頻度で生じると考えられています。
また、男性よりも女性に、若い人よりも高齢者に、そして新型コロナに感染したときに重症だった人に多いことが分かっています。
これらの症状は時間とともに改善していくことが知られていますが、日本人を対象としたコロナ後遺症の調査では1年後でも約11人に1人が何らかの症状が残っていることが分かりましたので、人によっては症状が長く続くことがあります。
オミクロン株になってコロナ後遺症はどう変わったか?
感染力の極めて高いオミクロン株では、世界中で過去にないほどの感染者が報告されましたが、オミクロン株ではどれくらいの頻度でコロナ後遺症が起こるのかに注目が集まっていました。
イギリスの携帯アプリを用いた研究によると、デルタ株が流行していた時期に新型コロナに感染した人がコロナ後遺症を起こす割合(10.8%)と比較して、オミクロン株が流行していた時期に新型コロナに感染した人がコロナ後遺症を起こす割合(4.5%)は半分以下であったとのことです。
しかし、オミクロン株ではコロナ後遺症が起こる割合が低くなったとしても、日本国内で新型コロナに感染した2100万人のうち1900万人はオミクロン株になってから感染した人であり、コロナ後遺症に悩む人の数そのものはデルタ株の流行期よりも増えることが懸念されます。
実際に、大阪府の8月の後遺症相談件数は過去最大となっています。
オミクロン株となって、後遺症の症状の頻度も変わってきています。
大阪府の後遺症相談件数の内訳を見ると、デルタ株までは、特に若い世代を中心にコロナ後遺症の症状として頻度が高かった「嗅覚異常」「味覚異常」が、オミクロン株流行語は頻度が減っています。
これはオミクロン株の急性期の症状として、嗅覚異常・味覚異常が減っていることが関連していると考えられます。
そして、オミクロン株の流行以降、全世代に渡って頻度が高いのが「倦怠感」「咳」となっています。
後遺症に有効な治療法はなく、ワクチンによる予防が重要
現時点でコロナ後遺症に有効な治療法は確立されていません。
コロナ後遺症のリスクを減らすためには、もちろん感染しないことが重要ですが、感染してしまった場合も新型コロナワクチン接種をしておくことでコロナ後遺症を経験するリスクが下がることが分かっています。
またコロナ後遺症に悩んでいる方も新型コロナワクチンの接種をすることで症状が改善することが分かってきました(これはウイルスの持続感染という仮説と関係しているのかもしれません)。
コロナ後遺症のためにも、新型コロナワクチンの接種をご検討ください。
※大阪大学大学院医学系研究科では、新型コロナに感染したことのある方の後遺症の症状について継続的に調査を行っています。研究の詳細はこちらからご覧ください。これまでに新型コロナと診断されたことのある方は、こちらからアプリをダウンロードいただきぜひ研究にご協力ください。