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「もっと部下と会話しろ」と言われても、話してつまらない部下とはどうすればいいですか?

横山信弘経営コラムニスト
部下との会話が弾まない……(写真:アフロ)

■ 部下との会話は大事だが……

「上司なんだから、もっと部下と会話しろと言われますが、話してつまらない部下とはどうすればいいですか?」

あるとき、こんな相談メールが届いた。

読んだ瞬間、驚いたが、たしかに一理あるなとも思った。

上司とのコミュニケーション量が離職率と反比例する、とはよく言われることだ。部下のやる気や、パフォーマンスを考えると、上司は日ごろから会話をしたほうがいいに決まっている。

もちろん、仕事に必要な「用談」のみならず、他愛もない「雑談」が大事だ。ちょっとした雑談を含めないと、部下とのコミュニケーション量が増えることなどない。無理やり「用談」を増やそうとすると過干渉になり、部下の成長を妨げる要因になるからだ。

したがって、仕事に関する指示や命令、注意喚起といった「用談」は最小限に、仕事に直接関係のない「雑談」は意識的に多く、が正しくコミュニケーション量を増やすやり方だ。

■ 部下との話がつまらない?

ところが冒頭の相談メールを送ってきた上司のように、「話してつまらない部下」とはどうすればいいのか、と悩む人もいるだろう。

私がメールを返信し、具体的な事情を知りたいと書くと、

「3人部下がいますが、1人とは話がはずむのでいいですが、あとの2人とは話をしていてもつまらない。自分のやりたい仕事をできなくしてまで、会話しなくちゃいけないのでしょうか」

と返ってきた。

なるほど。興味深い視点だ、と思った。

世間一般は「部下」の味方だ。企業の幹部もそう。部下の出来が悪いと、その上司が責められる。

部下より上司のほうが努力を求められるが、それなりに上司が努力しているのに、「努力しなさすぎる部下」の尻拭いまでさせられたら、たまったものじゃないだろう。

それに、自分のやりたいことがあるなら、それをしっかりやれるようにする環境を整えることが、現在企業に求められる姿勢だ。それは部下だけでなく、上司に対してもそうであるはずだ。

ほとんどの上司はプレイングマネジャーであり、単にマネジメントだけやっている上司は少ない。だから上司にも、やりたい仕事に精を出してもらうことは本来とても大事なことである。

それにしても、なぜ部下と話をしていてもつまらないのだろうか?

■ 部下との雑談4パターン

ここで、上司と部下との会話(雑談)に、どんな種類があるのかを考えてみた。おおよそ以下の4種類に分けられるのではないか。

※雑談であるため、仕事の話は除く。

(1)お互いのバリューが高まる話題

(2)他愛もない世間話、趣味の話題

(3)お互いのバリューが低くなる話題

(4)その他

私はコンサルタントなので、部下と話をしていても(1)の「お互いのバリューが高まる話題」が比較的多い。

経済ニュースや、話題のビジネス書、週末に参加したセミナーで学んだことなど、ランチなどで意見交換する。仕事に役立つから「マスト」の感覚でやっているかというとそうではない。興味があり、楽しいから「ウォンツ」の感覚なのだ。

「乃木坂46の白石麻衣が、ついに卒業するんだって」

と話す感覚で、

「日本経済がマイナス成長に入ったようだけど、これは新型肺炎というより、消費税増税の影響が出ていると考えていいのかな」

と話す。芸能界やスポーツの話題と同じように、お互い好奇心があるからだ。

このように、現在の業務にかかわることではなく、

「最近、すごい営業トークを編み出した」

「エクセルの関数を使ってみたら、めちゃくちゃ効率的になっちゃった」

などと、お互いのマーケットバリューが高まるような話題が(1)だ。

■ ネガティブな会話はつまらないし疲れる

(2)の「他愛もない世間話、趣味の話題」は説明不要だろう。

(3)の「お互いのバリューが低くなる話題」とは、会社への愚痴や不満、人を陥れるような噂話の類だ。

上司:「最近どう? 体調はいいかな」

部下:「私の体調よりも、隣の課のAさんを心配したほうがいいんじゃないですか」

上司:「どういうこと?」

部下:「え、知らないんですか? 奥さんが家出して帰ってこないそうです。それで最近、ノイローゼ気味らしいですよ」

上司:「そ、そうなんだ」

部下:「でもAさんならしょうがないですよね。私が奥さんだったら、絶対あんな人と結婚しないけど」

上司:「やめなよ、そういう話……」

こういう話題しかできない部下との会話なら、たしかに「つまらない」だろう。ちょっとした世間話をしたくても、会社の愚痴、家庭の不満など、ネガティブな話題ばかりだと会話をしていても疲れる。

■「雑談嫌い」の部下

(4)の「その他」は、文字通り「その他」だ。雑談しようにも、雑談にならないケースを含んでいる。たとえば以下のようなケースだ。

上司:「最近どう? 体調はいいかな」

部下:「はい。まあ」

上司:「週末は何してるんだっけ」

部下:「とくに、何も」

上司:「新型肺炎、どうなるんだろうな。予測がつかないよ」

部下:「さあ」

上司:「……」

上司と関係が悪いのなら対策をとれるが、誰とでもこのような会話しかできない部下となら難しい。仕事に関係がある話ならするし、最低限の挨拶をするような部下なら、特段問題はない。無理やりコミュニケーションをとろうとしなくても、お互い困ることがないのではないか。

■ 部下も努力が必要?

働き方改革の時代になり、上司も部下も可処分労働時間は激減している。

「もっと部下と会話を」

と言われても、そもそもそんな時間をとれなかったり、雑談嫌いの部下や、精神衛生上よくない話しかしない部下がいたりするなら、上司本人のためにもよくない。

解決策は一つだけだ。上司自身が努力しているのなら、部下も同様に努力する、ということ。

自分からも主体性をもって上司に話しかけること。社会人なのだから、上司との他愛もない話にも付き合うこと。心理的安全性が高まるような内容のコミュニケーションをすることだ。

繰り返すが、上司自身が努力しているのなら――であるが。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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